昨今、セレブや芸能人・モデルなどがプロポーション維持のために取り入れていることでトレンドになっている 「ピラティス」。今回は『ボディメイク・ピラティス』著者で、ボディーワーカーの森拓郎さんに、ピラティスの効果やポイント、コツについて教えてもらった。

(「」内、『ボディメイク・ピラティス』よりご紹介)

目次

  • ピラティスとは
  • ピラティスとヨガの違い
  • ピラティスの効果とメリット
  • ピラティスのポイントト
  • まとめ

ピラティスとは

ピラティスとは、もともとリハビリを目的としてつくられた全身の筋肉をバランスよく使うボディ・ムーブメントである。1883年にドイツで生まれたJoseph Hubertus Pilates(ジョセフ・ハベルタス・ピラティス)氏によって考案されたエクササイズ。 
 

ピラティスとヨガの違い

ピラティスはインナーマッスルや体幹を鍛えて、身体を健康的に鍛えることが目的であるのに対して、ヨガは呼吸法や瞑想で心と身体を結び付け、心身を安定した状態にすることが目的と言われている。

ピラティスの効果

「私たちは日常の中で、立つ、歩く、座るなどさまざまな動きをしています。しかし、多くの人はスマホ操作やデスクワークで背中を丸めたり、ひざを曲げたまま歩いたりなど、日ごろの習慣やクセなどでバランスよく筋肉を使えていません。こうした長年の習慣やクセが蓄積されると、筋肉のつき方に偏りが出てしまい、ボディラインに影響します。加えて、運動不足や加齢により筋肉が弱るのも問題です。私たちの体は常に重力の影響を受けていますが、特に体の深層部にある筋肉が弱ってくるとピンとした姿勢を保てません。これにより肋骨の動きが悪くなって呼吸が浅くなったり、正しい姿勢や動作の要となる骨盤や股関節にねじれが生じたりすると体を機能的に動かせず、おなかがぽっこり出たり、太ももの前や外ばかりが発達して、理想のボディバランスとはかけ離れた状態になります」

「こうしたアンバランスな体を改善していくのが、ピラティスです。ピラティスのボディメイク力は突出しています。全身の筋肉をバランスよく使いながら関節などの骨格に総合的にアプローチするので、続けるうちに普段使っていない筋肉が目覚め、その逆に使いすぎていた筋肉への負担が軽減します。ウエイトトレーニングのような部分的に鍛える運動でつくムキムキの肥大化した筋肉ではなく、しなやかで柔軟な強い筋肉が育ち、自然とボディラインが整うようになります」

「さらに、ピラティスは衰えがちな体幹の筋肉へのアプローチも抜群です。流れるような動きに合わせて深い呼吸をしますが、それにより深層部の筋肉を強化。ピンとした姿勢が維持できるようになるので、それだけで見た目がスッキリします。また、骨盤や背骨などを意識して動かすため、骨格が正しい位置に導かれて体を機能的に使えるようになり、パフォーマンスが向上。日常の動作が楽になるばかりか、疲れにくくなります。 加えてピラティス中に繰り返し行う深い呼吸によって血液の流れがよくなり、コリや冷えも解消。自律神経のバランスが整いやすくなったり、代謝が上がりやすくなったり、太りにくくなるなど、ボディメイクにはうれしいことばかりです」

ピラティスのボディメリット
①姿勢がよくなる
②体が機能的に使えるようになる
③体幹が鍛えられる
④疲れにくくなる
⑤コリや痛みが軽減される
⑥しなやかな筋肉がつきボディラインが整う
⑦冷えなどの悩みが軽減される

ピラティスのポイント

「効率よくボディメイクを叶えるためには、いくつかのコツがあります。すでに取り組んでいる人でも、『おなかが出たまま』、『取り組むほど前ももが張る』、『首や肩が痛い』など思うような効果が得られない場合は、ピラティスが正しくできていない可能性が高いです。まずは『骨格』の仕組みや役割を知り、それらを正しく動かすためにピラティスの動きの基本となる『ポイント』を学びましょう」

ピラティスで意識したい4つの骨格

①股関節:動きが悪いと脚が太くなるなどの弊害が

flat illustration of the pelvis
ankomando//Getty Images

「股関節は、骨盤下にある左右のくぼみに大腿骨の頭がはまって多彩な動きをする関節です。骨盤や背骨と連動しており、日常のあらゆる動作で使われます。ただそれだけに、日ごろの悪習慣でねじれが出たり、動きが悪くなったりしやすい関節です。例えば、長時間のデスクワークや運動不足が重なると、股関節を動かすときに使われるお尻の筋肉が衰えます。その結果、ピラティスでなめらかな動きができなくなり、ピラティスをしてもなかなか体が引き締まらなかったり、その逆に動かしやすい筋肉ばかり使ってしまうことになり、前ももや外ももが張って脚が太くなったりするような弊害が起きるケースも。まずはピラティスを始める前に自分の股関節のクセを知るためにも可動域が十分か、屈曲・伸展という動作で柔軟性をチェックしましょう」

正しく機能していると……
股関節にねじれがなく、可動域が十分であれば、脚がまっすぐ下に伸びる形になるので、ひざがきちんと前を向き、筋肉が均等についてスラリとしたレッグラインになります。

機能が悪いと……
股関節にねじれがあると、ひざや足首も連動してねじれます。すると日常動作で脚の外側や前側ばかり使う形になり、不均衡な筋肉が付き、脚が太くなってしまいます。

動きが悪いとこんなデメリットが
・前ももと外ももが張り出し、腰回りが太く見える
・お尻の筋肉が退化。垂れ尻やしぼんだピーマン尻に
・股関節で血流を圧迫。血行不良で冷えてむくむ原因に
・O脚やX脚で見た目にも悪くなる

 

②背中上部:かたいと背骨のなめらかな動きの妨げに

「上半身で重要なのが、首の骨、そして背骨の胸椎という骨が積み重なっている背中上部です。この部分は、ゆるやかなS字カーブを描いている状態が理想的。ところが現代人の多くはスマホ操作やデスクワークなどで長時間前かがみになっているため、首はいわゆるストレートネックになり、胸は前側に閉じ、背骨が丸まった状態でかたまっています。ピラティスでは、背骨の1つ1つをなめらかに動かしたり、伸ばしたりする動きを大切にしますが、その際に背中上部の柔軟性がとても重要になるのです。また、ピラティスでは動きに合わせて深い呼吸を繰り返すのがルールです。けれども背中上部がかたいと肋骨の動きが悪くなるため、深い呼吸になりません。ピラティスの効果を実感するためにも、首の動きで背中上部のかたさをチェックしてみましょう」

かたいとこんなデメリットが
・猫背
・肩コリ
・二重あご

 

③背中下部:呼吸や姿勢をサポートする大事な部分

「背中下部とは、肩甲骨の下部からみぞおちのちょうど真裏にある肋骨の下部までを指します。背中上部と同様、現代人はここがかたく、長時間の不良姿勢で前に丸まっていたり、その逆で反り腰になったりしているのが特徴です。背中下部はピンとした姿勢を保つ脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)という筋肉と深く関わるところですから、丸まる、反るなどの悪い状態でかたまったままだと不良姿勢に直結。それにより腹筋が弱くなりやすいので、体幹に力が入らずぽっこりおなかになったり、腰回りがもたついたりします。さらに、背中下部は呼吸、そして骨盤の傾きと関連があります。背中上部と同様、かたくなると肋骨の動きが悪くなるため深い呼吸になりません。また、ピラティスの基本であるニュートラルポジションを保つためにも、背中下部の柔軟性が必要なのです」

かたいとこんなデメリットが
・反り腰
・わき肉
・振り袖肉

 

④骨盤:ピラティスで常に意識する、要となる骨格

「上半身と下半身の骨をつなぐ中継的な役割を持つのが骨盤です。骨盤は、正しい姿勢の維持に関わる要となる骨。骨盤が後ろに傾いている「後傾」になると背中や腰が丸まっておなかが出て、その逆に骨盤が前に傾いている「前傾」になると反り腰になり、前ももに負担がかかる姿勢になります。つまり骨盤の傾きはボディメイクにおいて重要なポイントなのです。ピラティスでは、最初のスタンバイのときはもちろん、体を動かしている最中も意識するのは骨盤の傾きです。骨盤をフラットにさせる「ニュートラル」、やや後傾させる「インプリント」という動きを繰り返して行うため、骨盤周りが柔軟に動かせることもピラティスの効果を高めるためには重要な要素になってきます。 骨盤を動かして傾きと同時に柔軟性もチェックしましょう」

ニュートラルでないとこんなデメリットが
・下腹
・ぽっこり垂れ尻
・浮き輪肉
・前もも張り

 

ピラティス特有の5つのコツ

①しっかりとした呼吸

woman practicing breathing exercise in flat design on white background

「ピラティスで重要なのは鼻から吸う深い呼吸です。深い呼吸は、ただ酸素を多く取り込むだけが目的ではありません。深い呼吸により横隔膜をはじめとする、腹横筋などのインナーマッスルのほか、肋骨周りの肋間筋、横隔膜と連動する骨盤底筋群などの筋肉に広くアプローチできます。普段無意識で行っている呼吸は、ほとんど横隔膜によるもののため浅くなりがちで、肋骨周りの筋肉はあまり使われていません。そうして肋骨周りの筋肉がかたくなってしまうとピラティスの動きが雑になり、しなやかな筋肉づくりができません。ピラティスは深層部の筋肉の柔軟性を高めながら、正しい姿勢で骨格を本来の位置に導き、機能的な体をつくるのが目的。呼吸が浅いままだとインナーマッスルが十分に働かず効果を得られません

鼻から5秒かけて息をゆっくり吸う→5秒息を止める→5秒かけてゆっくり息を吐く(5セット繰り返す)

「ピラティスは胸を膨らます、胸式呼吸が基本です。手を広げて肋骨に添え、鼻から大きく息を吸います。このとき呼吸が苦しい、あるいは肋骨の動きが手で感じられない場合は呼吸が浅い状態です。吐くときは口から、あるいは鼻からゆっくり息を吐き出します。今度は肋骨の間が閉じていくのを感じましょう。肋骨が閉じない、肩に力が入る人 は、基本の呼吸がうまくいってない可能性が高いです」

②正しい位置での軸キープ

「ピラティスは体のさまざまな筋肉を動かしていきますが、この際に意識してほしいのが安定した状態での軸キープです。軸というと背骨や骨盤といった骨格も関係しますが、軸とは、私たちのおなかの中にある『パワーハウス』のこと。これは主に、肋骨の下から2番目の骨あたりに広がる『横隔膜』、骨盤の底に広がる『骨盤底筋群』、そこに挟まれるようにして存在している、呼吸に合わせて風船のように膨らむ『腹腔』などにより構成されています。インナーマッスルである横隔膜と骨盤底筋群がどちらも床と平行に近い状態であり、かつ内側から外に働く腹腔内圧と腹筋や背筋などの外側の腹壁からなる外圧で安定している状態こそが、正しい位置での軸キープとなり、ピラティスで目指していく大切なポイントになります」

③基本姿勢「ニュートラルポジション」と骨盤の「インプリント」をマスターする

「ピラティスで最初に覚えたい基本姿勢は、ニュートラルポジションです。具体的には、床にあおむけになってひざを立て、腰と床の間が手のひら1枚空いた、骨盤が床に対して平行の状態です。なお、骨盤が平行の状態はおなかに手のひらをつけ確認します。 ピラティスには、うつぶせや横向きで行うものもありますが、どの体勢であっても最初に覚えたニュートラルポジションを意識することが大切です。さらにピラティス内では、骨盤が平行の状態から骨盤を後傾させる『インプリント』という感覚を大事にします」

④関節同士を広げて伸ばす感覚、エロンゲーションを意識する

『エロンゲーション』とは、ピラティス中に意識したい、軸を安定させながら関節同士を伸長する動きです。体の中心から下半身は股関節やひざ、上半身は肩や首など、あらゆる関節を中心から放射状に外に向かってエネルギーを放出するイメージで背骨を伸ばしていきます。私たちの体は常に重力の影響を受けていますが、これに逆らう伸びる動きにより骨格が整い、これが姿勢の安定やボディメイクに役立ちます」

⑤背骨をひとつずつ丁寧に動かすアーティキュレーションを意識する

ピラティスにおける骨をなめらかに動かすムーブメントの際に意識したいのが『アーティキュレーション』です。これは7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨の合 27~28個の集合体である背骨1個ずつの動き。ピラティスでは、こうした細かい部分までも意識して動かすことが、しなやかな筋肉を育てるためにも必要です。背骨本来の柔軟性を取り戻すことは、機能的に動ける体づくりにもつながります」

まとめ

ピラティスは姿勢、柔軟性、筋力、バランス力といった肉体面からストレス解消などの精神面まで様々なポジティブな効果があるエクササイズ。ピラティスを生活に取り入れて、心身共に健康的で質の高い生活を送ろう!

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森 拓郎
パーソナルトレーニングスタジオrinato 代表取締役

 トレーニング至上主義であるフィットネス業界に疑問を感じ、運動の枠だけにとらわれない独自の角度からのアプローチにこだわりを持つ。ファッションモデルや女優などの著名人の支持を集め、『運動指導者が断言!ダイエットは運動1割、食事9割』(インプレス)、『オトナ女子のための食べ方図鑑(ワニブックス)』、『30日でスキニーデニムの似合う私になる(ワニブックス)』など、著書も多数。 

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Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。