春は毎年、くしゃみをしながら歩いている。ほかの人がうれしそうに庭の手入れをしたり、お花見をしたりしている中で、今回の主人公、ライターのディナはティッシュの箱を抱えて、家の中を一瞬で覆いつくすブタクサやスギの花粉を呪っている。

なにも、ディナ自身だけが被害者だと言っているわけじゃない。世界保健機関(WHO)の調べによると、世界人口の10~30%はアレルギー性鼻炎(俗に言う花粉症)を抱えている。症状の程度は人によって違うけれど、ディナの場合は子どもの頃からかなりひどい。高校時代に行ったアレルギー専門クリニックでは、背中を針で50回くらい刺されてから、春に開花する植物の多くに対してアレルギーがあることを告げられた。

2017年のカリフォルニアは干ばつに襲われた。それが終わると今度は未曽有の大雨が続いた。干からびた大地にとっては恵みの雨でも、彼女にとっては花粉を飛ばす植物が一斉に育つことを意味する恐怖の雨。今年もまた、悲惨な数カ月がやってくる。

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VioletaStoimenova//Getty Images

ベナドリル、ジルテック、クラリチンから、点鼻薬、加湿器、フェイシャルスチーマー、アレルギー注射に至るまで、試せるものは全部試した。実際に効くものもあったけれど、値段は大抵効果に応じて高くなる。薬を飲むと眠くなったり神経過敏になったりするし、アレルギー注射は痛い(しかも、効果を持続させるためには何度も打たなければならない)。

ほかになにかよい方法はないものか。最近は、“鼻うがい(鼻洗浄)”という言葉を頻繁に耳にする。しかも、薬の代わりに鼻うがいをするアレルギー患者は、花粉症の症状が少なく、生活の質が高いという研究結果まであるという。

ネティポット(鼻洗浄器)を使ったことはあるけれど、ブタクサなどの花粉が鼻腔を荒らした段階で単発的に使ったことしかない。そこで今年は、薬を飲む代わりに、週に数回といわず毎日でも鼻うがいをすることにした。アレルゲンや刺激物を洗い流すだけで鼻の症状が和らぐのなら、願ったり叶ったり。

1週目

米国疾病管理センター(CDC)によると、この1年で花粉症と診断された成人は1920万人。そのうちの何人くらいがネティポットの生理食塩水で鼻を洗っているのだろう。近所の木々は、いまにも花を咲かせそう。花粉症の症状が現れる日は遠くない。

ディナは、液体を押し出せるタイプの柔らかいプラスチックボトルを用意した。粉末状の生理食塩水を水に溶かしてボトルに入れたら、軽く潰して溶液を出す(ステンレス製や陶器製のネティポットを使うのもあり。溶液は、ヨウ素が含まれていない塩小さじ2~3杯とベーキングソーダ小さじ1/4~1/2杯を約1リットルの水に溶かすだけで作れる)。まだ3回しか使っていないけれど、いまのところ、くしゃみは一度も出ていない。

2週目

いよいよ症状が出始めた。目が乾いて痒くなり、喉も痒くて仕方ない。これ彼女にとって花粉症が本格化することを示すサイン。もう4日連続で生理食塩水の粉末を買っている(面倒くさがり)。

鼻うがいには、粘液を洗い流すだけでなく炎症を抑える効果もあると言うけれど、本当だろうか。いずれにせよ、くしゃみは出ても、例年のごとく副鼻腔炎性頭痛や副鼻腔感染症に襲われていないだけで十分順調。

3週目

週末にパームスプリングス(砂漠のオアシス)へ出掛けたのはいいけれど、ボトルと生理食塩水を忘れてしまったので、新しいセットを買うためにドラッグストアへ。数ある商品を見比べているうちに、水道水を使うのはよくないことを知った彼女は、蒸留水も併せて買った。

キレイなボトルと水を手に、ディナは自信満々で歩き出した。でも、砂漠へ来て2日目、アレルギー症状が急激に悪化して、おぞましい副鼻腔感染症の到来を予感させた。その日は鼻うがいを2回して、夜は祈るような気持ちで寝たけれど、翌朝には気分が改善。100%ではないにせよ、前日ほど悪くはない。ジルテックかクラリチンを飲もうかとも思ったけれど、そこは耐えて鼻うがい一本にした。重度の痒みとくしゃみ、軽い頭痛があったのは2日目だけで、3日目は意外と平気で驚いた。昨年までの症状を考えれば、小さな奇跡。

4週目

実験の最終週は鼻うがいを4回した。もちろん、それで大気中の花粉やジャカランダに対する免疫がつくわけではなく、庭や草むらを歩いたあとは、くしゃみが出て目が真っ赤になる。でも、鼻うがいをしてシャワーを浴びれば、症状が1時間程度で落ち着く。生まれて初めて、花粉症の症状がコントロールできている感じ。

結論

鼻うがいは魔法の治療薬じゃない。でも、それまで毎年なっていた副鼻腔感染症にならなかったのはスゴイこと。今年は運がよかっただけ? その可能性もあるけれど、鼻うがいは間違いなく役に立った。かといって薬と完全に決別したわけではなく、ジルテックやベナドリルを飲むことは、この先もあると思う。でも、日常的な対策として、これからもボトルと粉末は絶対に持ち歩く。

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※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Dina Gachman Translation: Ai Igamoto