鼻水を垂らしてしまうのは、子どもに限ったことではない。大人になっても当然、鼻水は出る。止まらないのはうっとうしくて仕方のないことだが、実はこの粘液は、私たちを助けるために働いてくれている。防御の最前線で、体内に侵入しようとする細菌や刺激物と戦ってくれているのだ。

米メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学の関連機関、ジョンズ・ホプキンス・サイナス・センターのアンドリュー・レーン教授(耳鼻咽喉科学)は、「鼻腔には粘液を出す分泌腺が備わっています。その粘液は、鼻腔の粘膜が潤った状態を維持し、感染や損傷から体を守るために必要なものです」と説明する。

微生物、あるいは埃などの粒子が鼻から体内に入ろうとしたとき、粘液(大半が水分、わずかに糖タンパクを含む)がそれらを捕らえ、鼻毛がそれらを喉、食道、胃に移動させて、消化してしまうのだという。

また、その“侵入者”がウイルス(風邪、インフルエンザなど)や細菌、アレルギー反応を引き起こす物質(アレルゲン)の場合には、免疫システムが稼働し、活発に粘液を分泌し始めるとのこと。

アメリカ家庭医学会(AAFP)の会長を務めるトチ・イロクマリス医師によると、粘液はこのとき、「粘度を高め、粘り気を増す」という。それは、「免疫システムが侵入者と戦うため、より多くのタンパク質を粘液に送り込んでいるため」。また、そのタンパク質によって、「粘液に色がつく」こともあるそう。

そのほかレーン教授によれば、(鼻づまりの状態とは逆に)鼻水が垂れてしまうような水っぽい鼻水は、鼻先のほうの分泌腺から出ているのだそう。しかし、風邪や副鼻腔炎で炎症が起きている場合には、「鼻づまりの状態で、同時に垂れるような鼻水が出る」場合もあるという。

止まらないのはなぜ?

イロクマリス医師によると、鼻水が止まらなくなる理由は、主に2つある。それは、「感染症(ウイルスまたは細菌が原因)」と「アレルギー」だという。しかし、「鼻腔が刺激を受けたこと(強いにおいをかいだ、煙を吸い込んだ、汚染された空気を吸った、辛いものを食べた、など)」でも鼻水が止まらなくなる場合があるという。

レーン教授はこれについて、次のように述べている。

「鼻腔には、周囲の環境を感知し、産生する粘液の量や動きの速度をコントロールしている神経末端が分布しています。例えば、(その場の空気が)乾燥していることを感知すれば、神経が鼻腺を刺激し、粘液の産生を促します」

つまり、冷たい空気(暖かい空気よりも乾燥している)を吸うと鼻水が出始めるのは、そのため。

鼻水 止める方法
Getty Images

また、コショウを吸ってしまったなど、吸い込んだものが神経を刺激したときには、より多くの粘液が急速に産生され、刺激を与えている物質を洗い流そうとする。この場合、鼻腔からその物質を吹き飛ばすための「くしゃみ反射」が誘発されることもある。

すぐに止める方法は?

イロクマリス医師は、市販薬には粘液の産生を抑制する効果がある薬や、ステロイド点鼻薬、抗ヒスタミン薬など、複数の種類があると説明する。

ただ、なかには頭がぼーっとしたり、眠くなるものもある。選ぶときには、医師など専門家に相談するのが賢明といえる。

自分でできる対策方法:

粘液が過剰に産生されてしまう主な原因のひとつには、鼻の中が乾燥しているため、体が必死に潤いを取り戻そうとしていることが挙げられる。その潤いを補うことで鼻水を止めることができる場合もあるようで、自分でできる方法もいくつかある。イロクマリス医師が教えてくれたのは、以下のような対処法。

  • 生理食塩水スプレー(市販品):鼻腔が乾燥しているときに使用すれば、鼻のとおりが良くなる。
  • ネティポットティーポットのような形をした鼻うがい専用のポットを使い、生理食塩水で鼻孔を洗浄する。イロクマリス医師はこれについて、「安全に行う限り、良い方法」だと話している。「蒸留水や煮沸済みの水を使用すれば、何かを鼻に入れてしまうということはありません」「水で希釈して使用する生理食塩水も市販されています。主治医に作り方を教えてもらうこともできるでしょう」
  • 加湿器:周囲の空気を加湿することで、鼻やのどを潤すことに役立つ。
  • 熱いシャワー:シャワーを浴びている間に、蒸気を吸い込むことが加湿になる。また、熱いシャワーを出してバスルームのなかに蒸気を充満させ、しばらく座っているという方法もある。
  • 熱い飲み物お茶やスープを飲むことで、蒸気によって鼻腔内を潤すことができる。また、ウイルスなどによる感染症にかかっているときには、飲み物による水分補給は特に重要だ。とはいえ、ホットワインなどのアルコールは脱水症状を起こすため、望ましくない。

症状はどのくらい続くもの?

症状の長さは人それぞれだが、例えば寒さによって鼻腔が刺激され鼻水が出ている場合などは、環境が元通りになれば症状も治まるはず。

また、イロクマリス医師によると、鼻水は風邪やその他のウイルス感染の場合でも、細菌感染の場合でも、大抵は7~10日程度で止まるもの(細菌感染であれば、医師が抗生物質を処方することもある)。ただ、アレルギー症状の場合には、アレルゲンに暴露している限り、鼻水は出続ける。

診察を受けるべき状態は?

doctor consults with his patient and writes notes
Rostislav_Sedlacek//Getty Images

一般的に鼻水は、両方の鼻から出る。レーン教授は、「片側の鼻だけからたくさん鼻水が出るなら、必ず受診して欲しい」と話している。

非常にまれではあるものの、片側の鼻からだけ「水っぽく、透明な」鼻水が出るのは、「脳脊髄液の漏出」の可能性があるという。これは、すぐに救急車を呼ぶ必要がある、緊急事態に陥ることもありうる状態とのこと。そのほか、鼻にできた腫瘍が原因となり、片側の鼻からだけ鼻水が出る場合もあるという。

ウイルスや細菌への感染によって鼻水が出ているなら、大抵の場合は7~10日で症状は落ち着く。イロクマリス医師は、それ以上経過しても止まらない場合は、受診すべきだと注意を呼びかけている。

一度は止まった鼻水が再び出始め、以前よりひどい状態になっているという場合にも、必ず医師の診察を受ける必要がある。一般的なウイルス感染だったものが、「混合型細菌感染」になった可能性があり、その場合には、抗生物質による治療が必要だという。

これといった理由もなく、何カ月も、あるいは何年も鼻水が出続けるという場合には、血管運動性(非アレルギー性)鼻炎の可能性があるそう。医師から鼻腔スプレーを処方してもらうか、神経の過剰反応を抑えるための処置を受ける必要がある。

鼻水はほとんどの場合、自然に止まるはずのもの。また、薬の服用で症状の改善が期待できる。そのほか大切なのは、鼻と喉の保湿を心がけることだという。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Translation: Ryoko Kiuchi From Good Housekeeping

Headshot of Stephanie Dolgoff
Stephanie Dolgoff
Health Newsroom Director

Stephanie (she/her) is the director of the Hearst Health Newsroom, where she writes, edits and oversees all health content for Good Housekeeping, Prevention and other Hearst titles. She has covered women's physical and emotional health, nutrition, sexuality and the multitudes of topics they contain for national publications for decades, and she is also a bestselling author, a mom of twins, a dog mom and an intuitive eater in progress.