気候変動が地球に甚大な被害をもたらしている。温暖化の影響で氷河は溶け、珊瑚は白化し、異常気象(森林火災やハリケーン)による人道危機も後を絶たない。大気汚染は悪化する一方で、動物は住む場所を奪われている。

このような状況は当然、人間の健康も危険に晒す。米国環境保護庁によると、気温の上昇、海面の上昇、異常気象は、食糧や水の入手を困難にして、大気の質を悪化させる。暑さが原因の病気や死者が増え、メンタルヘルスに問題が生じることも。

そして気候変動は、春の悩みを一層深刻なものにする。「気候変動の影響で、花粉症の季節が長期化・激化しています」と話すのは、米国アレルギー&ぜん息ネットワークに所属するアレルギー専門医で免疫学者のパーヴィ・パリク医学博士。

米国ぜん息&アレルギー基金(AAFA)によると、これは気候変動による気温上昇で大気質が悪化するからだという。そのせいで、この先数カ月の私たちの気分や体調が大きく崩れる可能性もある。

米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のアレルギー専門医兼免疫学者のスーザン・シュヴァル医学博士も「花粉の季節は本当に年々ひどくなっているような気がします」と懸念を示す。

でも、地球温暖化が花粉症を悪化させる具体的な仕組みとは? 症状がひどくなったときの対処法は? 専門家が教えてくれた。

気候変動で花粉症が悪化する理由

米国アレルギー・ぜん息・免疫学会(AAAAI)によれば、気候変動で気温、降雨量、風が変わると、花粉と真菌胞子の生産やタンパク質組成だけでなく、花粉が放出、拡散、堆積される場所も変わる。これは、受粉する植物が増殖しやすい環境でもある。「植物のエサとなる大気中の二酸化炭素濃度の上昇により、植物が花粉を大量につけるようになっています」とパリク博士。

オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのアレルギー・免疫科長、プリンセス・オグボグ医学博士によると、気候変動は植物が受粉する方法にも直接影響を与えるため、大気中の花粉の量が増えるだけでなく、その飛散区域も広くなる。

米国環境保護庁のデータによると、1995年から2015年の気温上昇で、米国の花粉の季節は場所により6~21日長くなった。この傾向は今後も続くことが予想される。気温が上がると大気中の花粉が増えるばかりか強くなるので、花粉症の症状もひどくなる。

でも、問題は花粉だけじゃない。温室効果ガスも、ぜん息をはじめとする肺疾患やアレルギーを持つ患者の呼吸を困難にする恐れがある。米国アレルギー・ぜん息・免疫学会によると、洪水や暴風雨が続けば屋内が湿り、カビが生えやすくなる。「いままで花粉の飛散が少なかった地域でも、状況が着実に悪化しています」とパリク博士。

アレルギー症状を緩和するには

オグボグ博士いわく季節性アレルギーの症状は人によって違うため、アレルギー専門医に相談したほうがいい。その中でアレルゲンを特定し、そのアレルゲンを可能な限り避ける方法を見つけていく必要がある。

花粉症と長い付き合いをしている人は、シュヴァル博士が言うように、去年より1~2週間早めに薬を飲み始めるといいかもしれない。

家を出る前に、居住エリアの大気汚染指数を調べるのも忘れずに。指数が高い日に外出するなら、N95マスクで自分を守ろう。シュヴァル博士の話では、花粉が目に入るのを防ぐため、サングラスをかけるのも名案。

生活習慣を少し変えるだけで、症状が軽くなることも。米国アレルギー・ぜん息・免疫学会は、以下7つの対策を勧めている。

①夜も窓を閉めっぱなしにして、可能な限りエアコンを使う。

②花粉とカビ胞子の飛散量が多いときは、外出を控える。

③アレルギー症状が悪化している状態で長時間外出する必要があるときは、マスクを着ける。

④帰宅したらシャワーを浴びて髪を洗い、服を着替える。

⑤粉とカビ胞子を舞わせる芝刈りなどの屋外作業は人に頼む。

⑥洗濯物を外に干さない。

⑦車に乗るときも窓を閉める。

パリク博士いわく咳、喘鳴(ぜんめい)、息切れは、アレルギーによるぜん息のサインかもしれない。該当する症状があるときは早急に病院へ。

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Korin Miller Translation: Ai Igamoto