1日1万歩を目指している人は多くても、その数字の由来を知る人はたぶん少ない。「1日1万歩」は、1965年に“万歩計”というデバイスを売り出した日本企業のマーケティング戦略だった。1日4千歩を1万歩にすれば1日の消費カロリーが400kcal増えるという売り文句だったわけだが、これまでの研究結果を見る限り、なにも1万歩まで増やさなくても運動量を増やせば十分。
例えば、歩数カウンターを11年間使用した成人2100名のデータを見ると、1万歩に大した意味はないことが分かる。このデータが示しているのは、運動はすればするほどいい、つまり5千歩は4千歩より、6千歩は5千歩よりもいいということ。また別の研究では、1日3800歩でも認知機能の低下を25%抑えられることが分かった。
「X歩でYカロリー減る」という絶対的な方程式も存在しない。カロリーの消費量は、その人の筋量や体重、歩くスピードや場所によって変化する。だから、マーケティング目的で決められた数字にこだわる必要はない。フィットネスコーチのフィオナ・シンプソンは、それを自分の身を以て学んだ。
「私はずっと1日1万歩が“基準”というか“最適”だと思っていました。SNSで何回も聞いていれば、それでいいと思いますよね。でも、1日の歩数を平均1万2千歩から7千歩(目標は6千歩)に減らしたら、信じられないようなことが起きたんです!」
フィオナは、1日1時間しか外に出ることが許されなかったパンデミックの最中にウォーキングを開始した。そこで1日1万歩の目標を立てるのは、片道1時間以上かけて通勤する必要も人付き合いの必要もない当時の状況を考えると現実的なことだった。
でも、いまは違う。1日1万歩という不合理な重労働に固執する必要はもはやない。私たちの人生は“諦めること”で少しだけ楽になる。実際フィオナの心身には、歩数を半分に減らしたことで数々の重要な変化が起きた。今回はそイギリス版ウィメンズヘルスから、その7つの変わったことを見ていこう。
ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。