ニューヨークに住むジェニファー・ウォルシュは、ただ歩けるということに感謝しながら生きてきた。「私の双子の妹は車いすに乗っていて、自分の足で歩けません。だから私には足を一歩ずつ前に出して進めるということが、ありがたくて仕方ない。これまでも一歩一歩を大切に生きてきました」。いつからかウォーキングは、ウォルシュに心の平静も与えてくれるようになった。「歩きながら草花の存在に気付けるようになりました。ウォーキングをすると心が落ち着き、自分の時間を楽しむことができたんです」。だからこそ不思議に感じた。「ウォーキングをすると気分がよくなる。なのに、どうしてウォーキングをする人は少ないの?」

「そこから私は、自然の中を歩くことが脳に与える影響を調べ始めました」と話すウォルシュは、大小さまざまなグループを健康目的のウォーキングに連れていく『Walk With Walsh』を立ち上げて、ウォーキングの神髄を新著『Walk Your Way Calm』にまとめた。この本には、ウォーキングが脳に与える影響、ウォーキングを始めるべき意外な理由や人一倍楽しむための方法が書かれている。その中でも以下の5つは、ウォーキングから最大限の効果を引き出すために取り入れてほしいこと。

①現実的なゴールを設定する
最初は週に1回、20分歩くだけでもOK! 少しずつ体を慣らして、最終的には1回20分以上のウォーキングを“できれば外で”週3回できるようになるといい。周囲に気を配りながら歩いていると、自然の恩恵の大きさが分かるはず。

②足音に注意を向ける
一貫した足音には瞑想的なリズムがある。どんな場所を歩くにせよ、次のような問いかけで自分の意識を足元に向けてみよう。「着地したときの足裏の感覚は?」「最初に接地するのは足のどこ?」「靴の中の足の感覚は?」。こういうディテールに注意を向けると、自然とリズムが安定してくる。

③呼吸を意識する
呼吸はマインドフルネスに取り組む上で足音と同じくらいパワフルなツール。自分の呼吸を意識しながら一歩ずつ前に進めば、“いまここ”にいる感覚が強くなる。

④友達を誘う
ウォーキンググループを立ち上げれば、定期的に歩くという責任感が生まれるし、ウォーキングに社交的な側面が加わって気分が上がる。対面でもバーチャル(電話)でもいいので、毎週決まった時間に友達や家族を連れ出して。

⑤目的を持って歩く
いろいろな目的を持たせれば、ウォーキングがより刺激的かつ効果的に。次のセクションで説明するセルフガイド・ウォーキングを参考にしてみよう。

まずはココから! 5種類のセルフガイド・ウォーキング

1.レインウォーク

HOW-TO:雨の日の景色、音や香りは五感に強く訴えかける。地面や樹木、草花の色は普段よりも濃くなって、大気中には(その場所と季節特有の)豊かな香り。雨の日のウォーキングを始めると、雨が降りそうな段階で外に出たくなるから不思議。雨の日にしか出会えない景色の中で、“いまここ”に集中しながら走るレインウォークは、五感と体への最高の贈り物。

マインドフルネスを促す問いかけ:何が聞こえた? どんな匂いがした? (傘を持って外に出た場合)傘に雨が当たると、どんな音がした?

2.スパイウォーク

HOW-TO:頭の中がパンパンのときは、散歩をしながら周囲を見回して。そうすると、終わりのないTo-Doリストや最悪のシナリオから一時的に脳が解放されて、目の前の達成可能なタスク1つに集中することができるので心が落ち着く。周囲を細かく観察し、「赤い車を発見しました」「あの家に新しい家族が引っ越してきたようです」「あそこの桜が満開ですね」といった感じで、気づいたことを自分自身やウォーキングパートナーに報告しよう。

マインドフルネスを促す問いかけ:歩いたら数分で少し気持ちが落ち着かなかった? 思考の沼から抜け出せたと思わない? 少し笑顔になれたかな?

3.グラウンディングウォーク

HOW-TO:晴れた日には公園やビーチなど、靴を脱いで歩ける場所に出かけよう。グラウンディングにあると言われる気分改善効果は、家の裏庭を歩くだけでも十分得られる。視覚、聴覚、嗅覚をフル活動させ、その瞬間に100%の注意を向けて。足の指を広げて小刻みに動かし、足裏で地面をガッシリつかむ。足が汚れるほどベター。背筋を伸ばし、地面から体に伝わるエネルギーを感じながら、深い呼吸と共に一歩ずつ、ゆっくり歩く。

マインドフルネスを促す問いかけ:どのような地表を歩いた? どんなことに感謝しながら歩いた? どこを歩いた? そこが特別なのはなぜ?

4.パワーウォーク

HOW-TO:パワーウォークのポイントは心拍数を上げること。速いペースで歩くと、リラクゼーションと気分の改善を促すエンドルフィンという脳内化学物質が分泌される。深く息をしながら歩くのもリラクゼーションに効果的。背筋を伸ばしてジョギングに近いペースで歩き、普通のウォーキングと同じように、足の動きに合わせて腕を振る。最初は変な感じがするかもしれないけれど、すぐにコツがつかめるはず。

マインドフルネスを促す問いかけ:いつもより速く歩いたときの体の感覚は? 自分の体が好むペースは? 音楽や周囲の音で、体の動きはどう変わった?

5.星空ウォーク

HOW-TO:これは、夜空を見上げて星を見ることの重要性を思い出すためのウォーキング。自然界の計り知れない美しさに息を飲むこと間違いなし。日が暮れたら懐中電灯を(あれば双眼鏡も)持って近所を歩き、街灯に照らされない場所を見つけよう。星の位置は季節によって変わるので、各季節に最低1度はしてほしい。地域ごとの星の位置や流星群の出現日時を教えてくれる便利なアプリを活用して。

マインドフルネスを促す問いかけ:久々に見た星座はあった? 思いがけない色に出会えた? 想像以上に明るい星はなかった?

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: The Editors Translation: Ai Igamoto

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。