昔は入っていた靴が、最近きつくなったと感じている人。それはもしかしたら足裏のアーチが老化しているせいかも。こういった足の違和感を軽視していると足の病気になる可能性が高くなってしまうこともある。今回は、足の医療に特化したクリニック、足のクリニック表参道の桑原靖先生に、女性の足の不調の原因や対策法を伺った。

<目次>

足の老化のカギを握る足のアーチ
足のアーチ図
足のクリニック表参道

私たちの足は2つのアーチと中心軸で構成されている。

・三角アーチ(トラス構造)

三角を基本形として5本のアーチが組み合わさり形成されている。

・半円アーチ

半円アーチがあることで、体重が乗っても足の全体構造が崩れることがない。

・中心軸

半円アーチ内にある中心軸が動くことで、平坦な道や急勾配の道など様々な道を歩くことができている。

この2つのアーチがあることで足の中央に少し浮いている部分、土踏まずができる。土踏まずは、足の老化に大きく関わっており、主に3つの役割を担っている。

①体重を支える

②歩く時の地面の蹴り出しをサポート

③足にかかる圧を和らげるクッション

土踏まずの部分に適正な高さがなくなると、靴ずれ、足指や爪の変形などのトラブルにつながる。特に40歳を過ぎると筋力や骨密度が低下し、足のアーチが崩れるスピードも早くなる。

良い足の形

遺伝や生活習慣などで足の形が良い状態の人が少ないと桑原先生。では、良い足とはどういう形なのだろう? 

まず、土踏まず部分にある舟状骨(しゅうじょうこつ)の高さが一定以上あり、地面についている部分が左右対称であること。土踏まずが、高すぎても低すぎてもよくないという。

土踏まずの高さが低い: 扁平足

土踏まずにある舟状骨(しゅうじょうこつ)が下がると生じる扁平足。歩くと疲れやすい、足の裏が痛むなどの症状がある。特に高齢者や女性に多い。

土踏まずが高い状態:甲高

甲高の状態は、足の指の付け根が痛くなったり、タコができやすくなったりする。また、腰痛を引き起こしたり、足が疲れやすくなったりすることもある。

足の老化のサイン! 「フットエイジング」とは

足の筋肉や関節を適度に動かさないと足のアーチが崩れ、足の機能が低下し、老化していく。この老化現象を「フットエイジング」という。足の老化が始まっているサインは下記の6つ。

・足のサイズが大きくなる

・足の幅が広くなる

・膝が内側に向くor足が外側に向く

・足指が曲がる

・夜中に足がつる

・靴底は内側から減る

女性の足の不調が多い理由

足のクリニック表参道では、患者の4分の3は女性で、特に40代から50代の人が多い。女性は骨格が弱く、足の形も歪みやすいなど、足に不調が出やすいのだそう。妊娠や子育てが忙しくて足の不調を無視してしまう人が多く、病院に来るのが遅くなってしまう傾向があるという。

足裏アーチをキープする方法

足の裏の健康には、大きく分けて靴の選び方とストレッチ・歩き方が大切。今回は、靴の選び方と生活習慣をご紹介。

自分に合った靴の選び方

足に良い靴選びには、足の甲とかかとの部分を意識することが重要。

①足の甲をしっかり覆う

足の甲と靴がフィットしていないと無意識のうちに指へ余計な力が入ってしまうため、疲れやすくなったり変形の原因にもなる。

② かかとと指の高低差が5㎜〜10㎜程度

踏み返しの時間が短くなり、前に進む動きが楽になる。また、かかとの部分が硬くて自分の足にフィットするものを選ぼう。

③ 靴底は、足の先端が浮いていて厚みがあり左右対称

靴の先端が浮いていないと踏み出す時に引っかかってしまうため注意。靴底の素材は、足裏からの衝撃を吸収するために硬すぎず、柔らかすぎないものが◎。

④ 靴のつま先の余裕が5㎜〜10㎜程度

足がたわみ前後方向に少しだけ変化することで地面からの衝撃を吸収する。そのため靴のつま先部分に余裕がないと足を痛めてしまう。

インソールを入れる場合は土踏まずの部分が立体的で取り外しができるもの、靴の素材は適度に伸びて発汗性が良いものを選ぼう。また、足の全体構造の崩れを補整して、足のアーチをつくるのにおすすめなのが5本指ソックス。外反母趾対策にも有効だそう。

生活習慣

靴の選び方だけでなく、足裏ケアに重要なのがストレッチや歩き方などの生活習慣。意識すべき3つのことをご紹介。

①グーチョキパー体操

足でグー、チョキ、パーを10回繰り返す。足の指をしっかり動かすことで足裏の筋肉も活性化する。

②アキレス腱が硬くなる? ハイヒールに注意

removing painful killer heels to massage feet in office
Peter Dazeley//Getty Images

アキレス腱は、ふくらはぎとかかとをつなぐ大切な組織で、アキレス腱が硬いと足裏に大きな負担がかかる。もし、ヒールのある靴を履いているほうが楽という人はアキレス腱が硬くなり、親指の付け根など前方に負担がかかっているから注意。足は骨格構造上、前半分が体重の3割で後半分が7割に分散するよう構成されている。ヒールの高さが4cm以上になると、これが逆転してしまうため痛みの原因となる。

③大股で歩く

歩幅が小さい人は、足指を使わず歩くペタペタ歩きになってしまう傾向にあり、足の老化が加速してしまう。大股で歩くことで自然とかかとで踏み入れて、指の付け根で押し返すよう歩けるようになり、体幹も鍛えることができる。

運動をする人の足裏のケア

運動=健康にいいのは事実だけれど、負荷の高い運動は知らないうちに足裏を痛める原因になってしまっているかも。運動をするときに気を付けるべきポイントはこちら。

①運動の強度を高めすぎない

運動不足と焦るあまり、自分に合っていない強度の運動をしていない? そうすることで、足を痛める人はかなり多いのだとか。実は、足が耐えられる負荷を表す活動限界値というものがあり、それを超えると足に不調が出てしまう。運動を習慣化することで、活動限界値は徐々に上がっていくので、今行っている運動が全然きつくなくなったというタイミングで運動負荷を高めていこう。

②裸足で運動はNG

自宅でトレーニングをすることが増えたことで、本来はシューズを履くべきトレーニング(エアロビなど)を裸足で行う人が増えているそう。シューズや靴下を履かないと足をサポートするものがなくなり、足裏への負荷が一気に増え、足の痛みにつながる。特に裸足で飛び跳ねるのは×。

③日常に運動を取り入れる

運動が苦手という人も足の健康をキープするためには、どうすれば良いのだろうか。桑原先生いわく、日常の中に運動を取り入れる程度でOK。

例えば自転車に乗る、通勤時1駅分歩き、徐々に歩数を増やして1万歩を目指して歩いてみるなど、生活の中で体を動かすことを意識してみよう。

まとめ

普段意識することがない足の裏。靴の選び方や生活習慣を意識して、足の裏を大切にしよう。

お話を伺ったのは……

桑原先生

桑原 靖(くわはら やすし)先生

足のクリニック表参道院長。日本フットケア・足病医学会評議員。
2004年、埼玉医科大学医学部卒業、同大学病院形成外科で創傷治癒学、難治性足潰瘍およびフットケアを専攻。
2013年、日本で初めて足に特化した専門医療機関を開院。専門医師、看護師(メディカルフットケア)、義肢装具士(インソール作製)、理学療法士(歩行機能改善訓練)がチーム医療として足のあらゆるトラブルに対応。
著書に「足が痛い本当の原因はコレだ!(時事通信出版局)」「一生自分の足で歩ける!『最強の土踏まず』のつくり方(PHP研究所)」他

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Nao Sakamoto
エディター

アシスタントエディターとしてSNS業務も担当。人間の心理、睡眠や美容に興味を持ち、記事執筆を行っている。自他ともに認める運動音痴だが、最近ヨガとピラティスで心と体を整え始めた。健康なライフスタイルを送りたいため、1日1食オートミール生活を実践中。