仕事のためにアラームを朝4時にセットする彼を見ながら、フリーランスのライターである私はスペアルームに移るべきか考えている。必要以上に早く起こされ、午前中をずっとイライラした状態で過ごすのはイヤ。時計を見ると、もう真夜中。しかも、彼は静かに身支度をするタイプじゃないので、一度目が覚めたら最後、再び眠りにつくことはできないだろう。

けれど、私は自分が1ミリも動かないことを知っている。スペアルームに移るという考えを浮かんだそばから打ち消して、彼とベッドに潜り込み、結局はスヤスヤと眠るのだ。

キャメロン・ディアスをはじめとするセレブと違って、私にはパートナーと完全に寝室を分けようと思ったことが一度もない。むしろ、別々に寝たら、彼との親密な関係にヒビが入りそうで怖い。

でも、最近、人気ポッドキャスト『Lipstick on the Rim』にゲスト出演したキャメロンは次のように話していた。「私には私の家があり、彼には彼の家がある。その中間に家族の家があるけれど、私は自分の部屋で寝て、彼は彼の部屋で寝る。その中間には私たちの関係を深めるための寝室がある」

現在51歳のキャメロンはロックバンド『グッド・シャーロット』のギタリスト、ベンジー・マッデン(44歳)と結婚しており、「別々に寝ることがノーマライズされるべき」とも言っていた。

パートナーのいびきや寝相、またはスペースの問題などの理由で寝室を分けているセレブは多く、グウィネス・パルトロウ(51歳)と夫のブラッド・ファルチャックも別々に寝ていることを明かしている。ベッカム夫妻に至っては“別々のウイング”で寝ているというからスゴイ。その実態についてイギリス版ウィメンズヘルスから見ていこう。

実態調査

もちろん、このトピックに関する意見は分かれていて、世間では一般的に寝室を分けたら夫婦関係が破滅すると思われているけれど、実際は「寝室を分けることでウェルビーイングが全体的に向上するケースもあります。睡眠を邪魔されることが減り、自分が好きなように眠れますから」と説明するのは睡眠エキスパートのクリス・タッターソル氏。「その一方で、一緒に寝るのは親密な関係と絆の構築に欠かせない重要な要素であり、寝室を分けるのは2人の関係に悪い影響を及ぼすと考えるカップルもいます」

確かに私も、彼と付き合い始めたばかりの頃は、自分の睡眠習慣が彼の眠りを妨げるような気がして不安だった。でも、お互いがお互いの睡眠習慣や睡眠環境の好みに慣れたいまは、彼が隣にいないと逆に眠れず、周囲の状況がやたら気になる。ベッドが空っぽで冷たく感じ、明け方まで考えすぎてしまうことも少なくない。

私たちにとってベッドは、ただ寝るための場所じゃない。リラックスした環境で、その日気になっていたことを正直かつオープンに話し合うためのプライベートな空間だ。でも、寝室を分けるのは想像以上に一般的で、英国ベッド協会の調査によると、英国では同居しているカップルの6組に1組(15%)が離れて寝ており、10組に9組(89%)が寝室を分けている。

その理由として一番多かったのはいびきで、別々に寝ているカップルの3組中2組(66%)が「最大の障害」として挙げた。その他の理由には、パートナーの寝相が悪いから、ジャーキング(入眠時のぴくつき)、子どもの存在、1日8時間は途切れずに寝たいから、などが含まれる。

睡眠の質

睡眠は私たちの健康に絶対不可欠。寝不足でも2~3日は何とかなるけれど、病気を防いで長生きしたい人にとっては堅実な策じゃない。「寝不足が続くと、身体面では肥満、糖尿病、循環器系疾患などのリスクが高くなります。また、免疫力が低下して、病気にかかりやすくなります」とタッターソル氏。

「精神面では記憶力、注意力、問題解決能力などの認知機能が著しく低下して、生産性や意思決定に影響を与えます。そして、感情面ではイライラすることが多くなり、気分のむらが激しくなって、ストレスに弱くなります」

タッターソル氏によると、好きな人の隣で寝ることには「不安の軽減、安心感と幸福感の向上、レム睡眠(もっとも回復力のある睡眠ステージ)の促進」といった多くのメリットがある。これは私も同感だ。彼が隣にいる日は彼の体温が奪えるからか寝つきがよく、彼の穏やかな呼吸と心音が心地よくてぐっすり眠れる。

でも、世の多くのカップルは違うようで、YouGovの調査によると、英国人の3分の2(37%)は1人のほうがよく眠れると感じている。私の友達にも、パートナーのいびきが原因で交際初日から寝室を分けている子や、パートナーの睡眠障害が原因で2人とも慢性的な寝不足になった上、寝室を分けることに同意してもらえず別れた子がいる。その一方で、2~3週間別々に寝てみたものの、ロマンティックなパートナーというより友達と住んでいるような感じがしたのでやめたというカップルもいる。

寝室を分ける場合の注意点

恋愛カウンセリングアプリ『Alley』の共同開発者で、心理学者兼恋愛カウンセラーのヘルガ・ジョンソン・ウェナーダル博士によると、寝室を分けることが寝るための最後の手段である場合、それ以外のエリアで必要な調節をしなきゃダメ。「身体的な距離を縮めるための機会を探し、寝室を分けることで親密な時間が減ることのないようにしなければなりません」

「別々に寝るというのは、ルーティンを変えてでも愛のある関係を維持しようという意志の表れ。困難な状況を乗り越えるために何かを変えようとするカップルは、長期的に強い関係を築ける可能性が高いです」

私自身、寝室を分けようとは思わないけれど、そこに利点があるのは承知。実際、彼が夜勤の週は私たちも別々に寝ることになるわけで、寝つきにくいのは確かだけれど、一度寝ついてしまえば、彼が何度も寝返りを打ったり彼の息が顔にかかったりすることがない分いつもより長く寝られる。離れて眠る日があると、また一緒に眠れる日が楽しみになるというのも事実。

質の高い睡眠の重要性や別々に寝ることを選ぶ人の気持ちは私にも理解できる。要は、2人の間にコミュニケーションと愛があるなら、無理して一緒に寝るよりも別々に寝たほうが長く幸せでいられるということだ。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Maisie Bovingdon Translation: Ai Igamoto

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。