サウナの写真とともに「ととのった(整った)※」なんて言葉がSNSでアップされてるのを目にする人も多いのでは? 今や本格的なサウナブームの到来。その存在を気にはなってはいるものの、「正しい入り方が分からない」「楽しみ方が分からない」なんて諦めていない? 今回は"サウナ教授"の愛称を持つ、日本サウナ学会代表理事の加藤容崇先生が、正しいサウナの入り方、整う方法、そして医学的観点からの効果を教えてくれた。

※以後「整う」は「ととのう」と表記

目次

そもそもサウナに入るとどんな効果が得られるの?

「サウナに入ることで得られる効果は大きく分けて4つあります」と加藤先生。「脳疲労の改善、睡眠の質の向上、そして自律神経がととのいます。そして女性に特におすすめしたい理由はサウナが肌にとてもいいからです」

「女性の方が体調の変化に敏感で、自律神経が失調気味になりやすいんです。冷え性もある意味自律神経の調整機能が低下しているという状態。サウナに入ると自律神経の状態がととのえられるので、冷え性もすぐ直ると思うんですよね。肌の質も変わります。僕はニキビが全然できなくなりました。サウナのおかげでファンデーションがいらなくなった、なんて人もいましたよ」

ここからは加藤先生に正しいサウナの入り方、そして気を付けるべき点について教わろう。(加藤先生・以下同)

「ととのう」ってどういうこと?

サウナー(サウナ愛好家)用語の一つ。サウナと冷水によるクールダウンを繰り返すと、交感神経と副交感神経が共存し、神経伝達物質のセロトニンが上昇することで、心身ともに最高の快感状態に達することができる。全国のサウナ愛好家たちはこの状態のことを「ととのう」と呼んでいる。

正しいサウナの楽しみ方・ととのい方

①どんなサウナを選べばいい?

「サウナの種類は大きく分けて二つ。一つはドライサウナ、もう一つはウェットサウナです。日本に多いドライサウナの特徴は、温度が高く、湿度が低いこと。ウェットサウナは比較的温度が低く、湿度が高いものを言います。乾燥で肌がバキバキになったり、喉がカラカラになってしまうのを防ぐために、ドライではなくてウェットサウナを選ぶことがポイントですね。ただ、女性の場合、ウェットサウナだとミストサウナが多くて、50度台ほどのぬるいサウナが多くなるんですよね。なので、ちゃんと温度が80~90度近くあるフィンランド式のウェットサウナをチョイスするのがいいと思います

水風呂の最適な温度は16~17度です。これ以下になると、痛みに変わります。快適な範囲内=痛みを感じない、というギリギリの温度が16~17度付近です」

②サウナの種類はどんなものがあるの?

・ドライサウナ
もっとも一般的なサウナ。室温は約80度~100度と高めのものが多い。サウナストーンやサウナストーブを木製のベンチが囲っているのが一般的な形。別名「フィンランドサウナ」とも言われる。

・ミストサウナ
お湯をミスト(霧状)にして、浴室内の温度と湿度を高めたサウナ。保湿効果もあると女性から人気。

・スチームサウナ
水蒸気で40度~50度の室温にしたサウナのこと。ドライサウナに比べ、低温のため、サウナ初心者や子どもでも楽しむことができる。

ここからはドライサウナの正しい入り方と整い方について見ていこう。

③サウナの正しい入り方は?

「大まかに言うと、サウナ室→水風呂→外気浴で1セット。女性の場合はこまやかに入り方を工夫しないと、体調によっては逆効果になってしまうので、体調がよかったら3~4セット、よくなかったら2セットくらいで止めておくことが必要かなと思います。初心者の方は2セットくらいから初めてみるのがいいかも」

④サウナ室を出るタイミングは?

時間やセット数じゃなくて、心拍数をみます。通常時の脈拍の2倍のなったら出るようにしています。サウナ室に入るとだんだん上がってきて、5~10分くらいで100ちょっとになると思うんです。ただし心拍数も人によって違うので、若い人であれば軽い運動をしたくらいの心拍数をあらかじめ覚えておいて、そこに至ったらすぐ出るのがいいでしょう」

「脈は簡単にはかれる方法があって、普段僕は50~60いかないくらいなんですけど、軽い運動をすると120回くらいまでいきます。そして120BPMの好きな歌っていうのを調べておくんですね。自分の好きな曲のBPMを把握しておいて、脳内再生しつつ、手首で心拍数をとりながらボーっとしてます。リズムがあってきたらそろそろ出るタイミングだなって。このBPMは人によって全然ちがうので自分で高揚した時の脈をあらかじめ把握しておく必要があります」

「もし、脈をはかるのが難しいという方は、全身があたたまったかどうかをチェックするために背中の真ん中あたりに意識を集中してみてください。ここは深部体温をセンサーできる場所なので、ここがしっかりと温まっているというのもサウナ室を出る目安の一つです」

⑤サウナ室が苦手! どうすればいい?

「前述した通り、乾燥で喉がカラカラになって苦しくなってしまうのを防ぐために、ドライサウナではなくてウェットサウナを選ぶのがおすすめ。顔が熱くて耐えられないという人はぬれタオルで顔を覆るのがいいでしょう」

⑥水風呂にスムーズに入るためのコツは?

「水風呂が苦手な主たる原因っていうのは体が温まりきってないことにあるんです。実はサウナ室では顔と足の温度差が15度くらいあって、顔だけすごく熱くなります。顔は熱いのに、体の他の部分、深い場所ってそれほど熱くなってないんですよ。周りの目もあるので難しいかもしれないけれど、あぐらをかいたりして、高低差をなくして本当に体の芯まで、足先まで温めるのがポイントです

「あとは先入観があると思うんですね。冷たすぎて無理無理みたいな。その時のコツがあって、実はネガティブな気持ちだと、自律神経の調整が遅くなり、余計しんどく感じてしまうんです。なので、ポイントとしては、まずはポジティブな気持ちをあおることが一つ。あとは呼吸を止めてしまうと血圧がグッと上がってしまうんですよね。余計しんどくなるので、入る前に大きく息を吸って、ゆっくり吐きながら徐々に水風呂につかる方法がいいかなって。で、ポジティブな気持ちを上げるために、聞こえるか聞こえないかくらいの大きさで、『きもちいい~』って言いながらはいるのがおすすめです。あとは、水風呂に入ったらなるべく足を上げること。水風呂って一番下が冷たくて、水圧もかかるので、冷たいんですよ、下が。なので上にあげた方が楽です」

⑦水風呂に入らなくても得られる効果は一緒?

「全く違いますね。『ととのう』ためには水風呂に入ることが大前提。サウナに入って、水風呂に入って、外気浴をすると、外気浴のときに自律神経はものすごくリラックスするんですね。それで水風呂をはじくと、副交感神経がちょこっとしか活性化せず、ちょっとしかリラックスできない。分かりやすい言い方をすると交感神経というのは、敵に襲われて逃げたりするときにばーっと出る神経なんです。異常事態なんですね。で、逆に異常事態から脱したあとって、すごいほっとして眠くなるじゃないですか。それを狙って深くリラックスするっていう技術なんですね、サウナって。だからもういかに異常事態・緊急事態を繰り返すか、なので水風呂をはぶくと、効果が弱くなってしまいます」

⑧外気浴の方法は?

「水風呂から出たら手早く体についた水滴を拭き、外気浴に向かいましょう。体制はととのい椅子に座るか、スペースがあれば横になるのがおすすめ。時間は季節にもよりますが、5~10分程度。足の末端が少し冷たく感じる程度までが目安です」

⑨サウナはどれくらいの頻度で入るのがベスト?

頻度は月に9回~12回が理想です。月に何回くらい入ったら健康効果があるのかって細かく調べた報告がでて、これは基本的に認知症にリスクが増えるか減るかっていう尺度で調べてるんですけど。認知症※のリスクが減る可能性があるといわれた頻度が月に9~12回程度。なので2、3日にいっぺんくらいの頻度が理想です

※アメリカのメイヨークリニックが2018年に発表したレポートによると、週に1回しかサウナに入らない人と4~7回入る人を比較した際、軽度認知症になるリスクが66%も低かったそう。

⑩サウナに持っていくべきおすすめグッズは?

一つは炭酸水。炭酸水を持っていく理由は単純に水分補給と、水風呂の効果を上げるため。時々銭湯に行くんですけど水風呂が20度くらいあってぬるいことが多いんですよね。その時に、炭酸水を水風呂の前後で飲みます。そうすると、口腔内で水風呂の中に反応するセンサーと同じセンサーが反応するんです。口の中のセンサーを刺激して実際の温度より冷たいと感じさせることで水風呂の効果を強くすることができます」

もう一つはサウナハット。ウールで断熱性のあるものがいいでしょう。頭の温度が42度(サウナ室では44度くらいになる)を超えるとタンパク質が変性して、ダメージになってしまうので。特に女性は髪が長いから、だらんと垂らしてたりすると、すごく毛先が熱くなってしまうので、束ねてハットとかにいれるのがいいのかなと思います」

Totonoi Japan サウナハット
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髪を熱や乾燥から守るために必要不可欠なのが、サウナハット。「いかにも“サウナハット”なデザインはちょっと……」という人におすすめなのが、こちらのバケットハットタイプ。よくあるフェルトやウールタイプのものと違って、簡単に洗濯可能。サウナ中に邪魔になりがちなサウナキーやロッカーの鍵も収納できるポケット付き。

サウナマット ポーチセット
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施設備え付けのものや他人が座ったタオルの上には座りたくないという人に便利なサウナマット。スマホサイズのコンパクトな折り畳みマットなので、バックの中にいれて、かさばらないのがいい。使用後は、水で流して自然乾燥するだけなのでお手入れも簡単。

医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?
ダイヤモンド社 医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?

サウナ―でもあり医師でもある加藤先生が最新の研究結果を基に、サウナが脳と体に与える効果について解説。最大限の「ととのい」を引き出すためのサウナの入り方を医学的観点から詳しく紹介している。これを読めばサウナのすべてが分かる、サウナー必携の一冊!

Headshot of 加藤 容崇
加藤 容崇
日本サウナ学会代表理事/慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任助教/北斗病院腫瘍医学研究所医師

 1983年、群馬県生まれ。北海道大学医学部医学科卒、医師。 北海道大学医学部に勤務したのちハーバード大学医学部附属病院(Massachusetts General Hospital)癌センターに勤務し膵臓癌の研究に従事。 帰国後、慶応義塾大学医学部腫瘍センター、北斗病院腫瘍医学研究所に勤務し現在に至る。 専門は癌遺伝子検査、病理。日本サウナ学会、日本鍼治療標準化学会の代表理事もつとめ、 健康(疾患の早期発見、予防)に関する研究を第二の専門としている。 目標は『患者を本当にゼロにすること』。 どんなに優れた技術でも社会に広く受け入れられて活用されなければ意味がなく、 社会実装性をテーマに活動している。 

インスタグラム:www.instagram.com/yasutaka_kato_saunner_prof/