「サウナとは『血管の筋トレ』である」

そう断言するのは著書やメディア出演も多数ある順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏だ。体の健康の鍵は血流にある。血流は全身の細胞組織に酸素や栄養を送り届けて、代わりに二酸化炭素や老廃物を回収する役目を持つ。

血液の流れがスムーズであればこそ、活発に生命維持活動をおこなうことができる。小林氏によると、サウナはこの血流をよくするだけではなく、血管も鍛えてくれるという。また、サウナは脳と各臓器をつなぐ、自律神経のバランスを整える効果も期待できる。サウナの効果と効果的な入り方について小林氏に解説いただいた。

サウナは「血管の筋トレ」

小林氏によると「血管を鍛える」ためには「血流をよくする」ことが重要だという。

サウナで体を温めてから、水風呂や水シャワー、外気浴によって体を冷やす……これを複数回繰り返すことによって、全身の血液の流れが促進され、また自律神経にも適度な刺激を与えることができる。

血管は大きな血管である動脈と静脈、そして小さな血管である毛細血管に大別されるが、この刺激によって全ての血管と自律神経のコンディションを向上させることができるのだ。

ガマンをすると逆効果

「サウナにガマンはつきもの」。

サウナ好きほどそう思っているのではないか。

水風呂のためにサウナ上段で暑いのをガマンする、「ととのい」のために冷た過ぎると感じる水風呂にガマンして入る、サウナ後のビールのために水分補給をせずにのどの渇きをガマンする……残念ながら、これらのガマンは「自己満足」になっている可能性があるという。

体にとってガマンとは、心身を苦しめるストレスにすぎない」と小林氏は語る。

サウナに入る時間や多くのサウナ本で推奨される「サウナ→水風呂→外気浴」のセット数はあくまで目安でしかない。人間の体には個人差がある。その日の体調によっても変わって然るべきだ。あくまで自分の「気持ちいい」を道標に、無理なく入れる時間や方法が自分に適した入り方だと心得よう。

ベストなタイミングは朝と夕方!
医師が教える、サウナの効果的な入り方
Galina Zhigalova / EyeEm//Getty Images

では、サウナに入るタイミングはどうか。

小林氏によると、朝と夕方がもっとも効率的だという。

自律神経には「日内変動」と呼ばれるリズムがあり、朝と夕方の1日2回、交感神経と副交感神経のバランスが大きく切り替わる。この切り替わりのタイミングは自律神経のバランスが崩れやすいだけでなく、血流の流れも滞りやすい。

また、朝は筋肉が硬直しやすく、夕方は足のむくみが発生しやすい。この時サウナに入ると自律神経に適度な刺激を与えることができ、滞りがちな血流の流れも良くすることができる。朝と夕方がもっとも理にかなったサウナに入るタイミングといえるだろう。

サウナの種類で効果は変わらない

サウナには様々な種類がある。最も一般的なものが「ドライサウナ」。湿度が低く、室温が70〜100度に保たれているものだ。

比較して「ウェットサウナ」は湿度が高く、室温が低いもの。ほかにも「スチームサウナ」や「フィンランド式サウナ」などもある。

湿度や温度が変われば、当然体が温まるスピードが変わる。しかし、実は受けられる健康効果は大差がないという。それぞれの違いを気にするよりも、自分が気持ちよく感じるサウナ、利用しやすいものを選ぶといいだろう。

水分補給はマスト

小林氏はかつてサウナで倒れ、救急車で搬送された患者を何人も診てきたという。その患者の多くの原因は、水分補給をガマンしたことによる脱水症状だ。

サウナに入ると大量の汗をかき、体は脱水状態になる。口やのどの渇きをガマンして放置すると、やがて脱水症状を引き起こし、体がだるくなる、立ちくらみがする、微熱が出るなどの症状が。

さらに悪化すれば、意識を失ったり、血圧が低下してしまうこともある。「水分補給しながら入る」ことこそ、正しいサウナの入り方。持ち込み禁止の場合は、入る前と入った後にこまめに水分補給をしよう。

サウナは瞑想に最適な環境!
young woman meditating at spa
Hans Neleman//Getty Images

必然的に電話やインターネットから遮断される場であるサウナは、瞑想の場としても最適だ。普段から自律神経を整えることを目的としたメディカルな瞑想方法を開発している小林氏によると、サウナの中で瞑想することで、その効果はさらに大きくなるという。

最後に小林氏流の「サウナ瞑想」の方法を紹介しよう。

目を閉じ、日々の生活や出来事を思い浮かべながら、感謝の気持ちを想起する。
口角を少し上げ、笑顔をキープしながら大きく呼吸をし、心静かに3分間過ごす。

サウナの最後に「サウナ瞑想」を取り入れることで、自律神経のバランスが整う。朝サウナのときは、日中のパフォーマンス向上。また、夕方であれば、睡眠の質の向上が期待できるそうだ。

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メディア出演も多数ある自律神経研究の第一人者、順天堂大学医学部教授・小林弘幸氏による『自律神経の名医が教える! サウナのトリセツ』が学研プラスより発売中だ。医師として自身が3年間実践したサウナ生活の経験をもとに、サウナの効果や医学的にも正しいサウナの入り方を紹介している。

<目次>
プロローグ なぜ、サウナで自律神経が整うのか
Part1 名医が認める! サウナの絶大な効果
Part2 医学的に正しい 本当のサウナの入り方
Part3 血管だけじゃない! サウナがもたらすトータルケア
Part 4 教えて小林先生! サウナの疑問Q&A

Hikari Inagaki(side dishes)