私たちは1日にどれくらい人の顔を見て、その人のことを思い、ただただ話に耳を傾けているでしょうか。話を聞きながら、心の中で「それは違う」と反論したり、結末を予想したり、相手の弱みや性格を見定めたりしていないでしょうか。気づいたら話の腰を折って、反論していたなんてこともあるのでは?

対話に集中する思いやりのある会話は、相手に自信を与え、フレンドシップやパートナーシップといった関係性を深めます。その反対に意識が散漫で思いやりに欠けた会話は相手に寂しさを与え、自尊心を奪いかねません。

会話にもマインドフルネスを活用したテクニックがあります。それが、相手の話に全意識を向け、話し手の気持ちに全身全霊で寄り添い共感しながら耳を傾ける「マインドフルリスニング」。

話し手はひたすら自分の内側から湧き出る言葉を話し続け、聞き手はただただ聞くことに徹します。話し手が言葉に詰まるようなら、「そうなんだ。それで?」などという言葉をかけることもありますが、基本的には相手が言葉を絞り出すまで待ちます。

聞き手は、目の前で話している人以外のことには注意を向けず、ひたすら全力で耳を傾けます。聞く側も話す側も、対話力が養われます。対話が苦手という方や、自分の言葉で話すのが怖い、相手の話を最後まで聞けない、自分自身との対話ができないという方は、まずマインドフルリスニングの実践でコツを掴みましょう。友人や家族、パートナー、またはワークショップで他人同士でも実践可能です。職場の同僚などプライベートなことを話しづらい相手とはおすすめできません。

マインドフルリスニングのやり方

人数:2人〜3人

  1. 話し手と、聞き手を決めます。
  2. 話し手は2分間、最近あったことや気になることを話し続けます。
  3. 聞き手は口を挟まずにマインドフルに聞き続けます。うなずきや微笑み、相づちはOKですが、あくまでも聞くことに集中すること。
  4. 2分間が過ぎたら、聞き手の人は話し手に聞いた内容を伝えます。聞き手は、話し手の言葉をしっかり受け止めたことが伝わるように伝えましょう。
  5. 話し手は内容を確認し、聞いてもらった人に感謝を伝えます。
  6. 役割を入れ替えて同じことを繰り返します。

テーマを決めて、2分間話し続ける方法もあります。

その場合は、質問を1つに決めて、聞き手は話し手に同じ質問を2分間繰り返します。

「あなたは何に幸せを感じますか?」「あなたは何に喜びますか?」「あなたは何を恐れますか?」「あなたが好きなものは?」「あなたが嫌いなものは?」など。

初めて私がマインドフルリスニングを実践したのは、マインドフルネス瞑想のワークショップに参加した時でした。相手のことをまるで知らない参加者同士がペアになって、マインドフルリスニングのワークをしました。

この時は「あなたは何を恐れますか?」という質問を2分繰り返し、聞き手と話し手を入れ替え同じ質問をし、その後「あなたは何に喜びますか?」という質問を同じように繰り返しました。

最初の2分間は自分の深層心理の扉を開くのにちょうどよく、段々と心の深い部分が口からこぼれ出てきました。自分が恐れているものが自分の口から出た時、体には緊張を感じましたが、聞き手の方が優しく微笑み受け止めて頷いてくれました。この恐れは私だけではなく、私以外の誰かも持っていて、それを出してもいいんだと瞬間的に分かりました。どっと安心感が込み上げてきました。

そして自分が聞き手の時、話し手が何に喜ぶのかを聞いていて、本当に幸せな気持ちになったのを覚えています。目の前の人が何に喜び、何を感じて生きているのか、全身で受け止めた感覚になりました。そしてどうか幸せであって欲しいと心の底から共感が生まれたのも、マインドフルに意識を集中させ今この瞬間を分かち合っていたからだと思います。

対話力を養うことで、自分を自分で励ましたり、理解したりできるのもマインドフルリスニングの魅力です。

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佐々木依里
瞑想家、マインドフルネス指導者、環境活動家、モデル

 瞑想家、マインドフルネス指導者、環境活動家、モデル
11歳から瞑想と環境活動に興味をもち独学やお寺で瞑想を始める。現在は瞑想会の開催やマインドフルネスの指導者として活動。
また環境省森里川海アンバサダーとして環境活動家としてプラスチック問題に取り組む。
心の平和=地球の平和を目指しインスタグラムで精力的に瞑想配信中。
インスタグラム:www.instagram.com/erisasakimeditationjourney/