最近の代替ミートはおいしい! でも本当にヘルシーなの?
体だけでなく環境にもいい。
ランニングシューズホカオネオネの長距離ランナーであり、プラントベースを実践するアスリート、セイジ・カナデイは肉の代替品を週に1回くらい食べるという。理由は、豆腐やテンペなどの他の植物性食品よりも、旅先で入手しやすいから。旅行中にレストランやファストフードで食事をするときには、肉の代替品がベストと説明する。今回は代替ミートについてご紹介。
インポッシブル・バーガーやビヨンド・ミートのような代替肉のおかげで、ベジタリアンのランナーが外出先で食事をすることは簡単になった。バーガーキングのコマーシャルでは、「インポッシブル・ワッパー」が肉を使っていないことを信じられない人々の様子が紹介されている。
マクドナルドはカナダでビヨンド・ミートのバーガーをテストし、KFCはビヨンド・フライド・チキンの実験を行い、アトランタのある店舗では5時間足らずで完売したという。さらに、ビヨンド・ミートは最近、ペプシコと提携し、将来的に植物由来のドリンクやスナックを作ることを目標として掲げた。
フェイクミートは今では昔と比べて簡単に手に入るようになった。だが、「一方でハンバーガーやチキン、エビなどに加工された植物は、果たして栄養があるのだろうか?」という疑問が出てくる。
疑問が生じる一方で、何が入っていてどんな味がするのかは分かっている。もし、インポッシブル・バーガーとビーフ・バーガーを並べて食べたとしても、見ただけでは違いがわからず、味もわからないだろう。
代替肉の味を本物に近づける方法は、製品によって異なる。例えばインポッシブル・バーガーを作るインポッシブル・フードは植物に含まれるヘム(鉄分を含む分子)を運ぶタンパク質である大豆レッグヘモグロビンを使用して、ハンバーガーに「肉の味」と「本物の肉のようにしたたる血」を実現している。一方、ビヨンド・ミートでは、加熱、冷却、加圧、そして植物性の油脂、結合剤、香料、着色料を組み合わせて、肉のような食感を作り出している。
インポッシブル・バーガーに使用されている植物性の肉は、濃縮大豆たんぱく質、ひまわり油、ココナッツ油が主な原材料。大豆レグモグロビンは風味を添えるタンパク質で、フィラーと結合剤には培養ブドウ糖と食物デンプンが使われている。ビヨンド・バーガーは、エンドウ豆、緑豆、米の混合物を使用して、肉のような食感のタンパク質を実現しており、製品には遺伝子組み換え作物、大豆、グルテンを使用していないことを誇りにしている。
このような複雑な材料と工程は、豆や穀物、野菜を使った従来のベジタリアンバーガーとは大きく異なり、見た目も味も血も牛肉のようにはいかない。
しかし、こういった新しい肉の代替品が植物性であるからといって、体に良いとは限らない。Eleat Sports Nutrition社のオーナーのアンジー・アスキ氏は、「植物性の食事の目的は、植物をより多く摂取することであり、加工度の高い偽装肉を摂取することではありません」という。さらに、アメリカ国立衛生研究所の研究では、加工食品の摂取が体重増加やカロリー摂取過多につながるとされている。
肉を使わないフライドチキンは、本当にヘルシー?
植物性食品は通常、カロリーや脂肪分が低いが、代替肉の栄養価を見ると本物の肉とそれほど変わらない。例えば、「インポッシブル・ミート」や「ビヨンド・バーガー」は、ココナッツオイルやヒマワリオイルを使用しているため、カロリーや飽和脂肪は同じ重量の牛肉と同程度。しかし、塩分は多く含まれているが、有害なコレステロールは含まれていない。
ただ、これらの代替肉がメニューやスーパーの肉売り場に並んでいる本当の理由は、これがヘルシーな一番の選択肢だからではなく、ベジタリアンやヴィーガンがより肉に近いものを楽しむためのものでもない。メーカーは、環境保護のために、肉を食べる人にもっと植物を食べてもらいたいと考えているのだ。
インポッシブル・フーズとビヨンド・ミートは、家畜による環境問題を解決するために商品を開発したと主張している。研究によると、食肉の生産は、メタンガスの排出や土地の農業への転換など、有害な環境活動に寄与しているという。国際食品情報評議会財団の食品技術コミュニケーション・ディレクターであるタミカ・シムズ博士は「食肉生産と作物開発(食用作物と動物用、繊維用、エネルギー用)を含む農業を含むすべての人間活動は、気候変動に影響を与えます」と述べている。
理論的には、植物を多く食べ、肉を減らすことは、これらの有害な影響に対抗するための有力な選択肢のように思えるが、必ずしもそうではないと言う。EPA(米国環境保護庁)によると、米国の温室効果ガス排出量のうち、農業による排出量は9%で、そのうち家畜による排出量は3分の1に過ぎず、一方、輸送による排出量は29%に上る。また、これらの新製品の開発には定量的な環境データが存在しないが、環境負荷がゼロである可能性は低いと考える。つまり、植物性の肉を食べることで、肉の生産に起因する3%の温室効果ガスを削減できる可能性がある。
要するに、代替肉の製品は、肉食主義者、雑食主義者、フレキシタリアンに動物性食品の摂取を控えるように説得するために、見た目、感触、味、調理法を肉に似せて作られているということ。 (ヴィーガンの中には「血合い」のリアルさに気持ち悪さを感じた人もいたそう)。つまり、これらの製品が地球にとっていいものかどうかについては、まだ審判が下ったわけではないが、必ずしもよいものではない。
とはいえ、こういった製品を試してみても損はない。ただし、ほどほどがベスト。完全なベジタリアンやヴィーガンになるのではなく、1週間のうち1日か2日だけ、植物性の食事を摂る日を作るだけでもいいのでは。
それでもまだ納得できないのなら、昔ながらの植物を食べればよい。
カナデイ氏は、「20年に及ぶスポーツ選手としてのキャリアは、植物性のライフスタイルのおかげです。野菜、果物、全粒穀物をたっぷり食べているからだと思います。走行距離が多く、ハードなトレーニングから体を回復させるために必要な、必須のビタミン、ミネラル、抗酸化物質を摂取しています」という。
※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Natalie Rizzo / Translation: Noriko Yanagisawa
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