プラントベース(Plant-based)とは「健康的で環境にも優しい、植物ベースなプロダクトを中心」にしたライフスタイルのことだ。食事面ではベジタリアンやヴィーガンより取り組みやすく、また、フードのみならずファッションやコスメなどにも広がっている。そんな話題の「プラントベース」についてあらためて整理してみよう。

4人に1人が実践。アメリカで進む脱ミート

プラントベースのライフスタイルは欧米を中心に急速に広がっている。アメリカの調査会社Gallup社によると(https://news.gallup.com/poll/282779/nearly-one-four-cut-back-eating-meat.aspx)、アメリカ人の4人に1人が去年に比べ肉の消費を減らしたという。

その理由は健康上の懸念、次に環境への配慮が多かった。アメリカは20歳以上の7割が太り過ぎ、もしくは肥満にカテゴライズされる。しかし、肥満大国である一方で、新しいダイエットメソッドやフィットネスメニューが次々と生まれるヘルスケアの先進国だ。

アメリカで進む脱ミートがプラントベースの浸透を物語っている。

ベジタリアンと何が違う? 「プラントベース」とは?

あらためて「プラントベースとは何か?」について説明しよう。食事面におけるプラントベースとは植物ベースの食品や食材を中心にした食事習慣のことを指す。

具体的には果物や野菜だけではなく、穀物、豆やナッツ類、油なども含まれる。ベジタリアンやヴィーガンとの違いがよく話題に登るが、あくまで「植物ベースを中心に選ぶ」ということで、肉や乳製品の完全に排除する必要はない。

ベジタリアンやヴィーガンを実践した場合、カルシウムやビタミンB12などの一部の栄養素が不足しがちな傾向があり、意識的に摂取する必要がある。その点を比べるとプラントベースは健康のために必要な栄養素を自然に網羅しやすいと言えるだろう。

きっかけは一冊のベストセラーから

プラントベースという考えはT・コリン・キャンベル博士が2004年に上梓し、ニューヨーク・タイムズで大ベストセラーとなった『The China Study(邦題:『葬られた「第二のマクガバン報告」』)』のなかで生まれた。さらにこの本を元にして生まれたドキュメンタリー映画「Forks Over Knives」も追い風となり現在のブームに至る。

チャイナ・スタディー 葬られた「第二のマクガバン報告」(合本版)

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『The China Study』は一見誤解を招きそうなタイトルだが、1980年代に米中が中国で実施した大規模な栄養調査が元となっていることに由来する。

博士は本書の中で肉、魚、乳製品などの全ての動物ベースの食品を避け、植物ベースの食事にシフトすることが肥満、ガン、心臓疾患といったさまざまな病気を防ぎ、健康な生活をおくることができると主張している。

プラントベースは環境にも優しい

ところで、1つのビーフパテをつくるのにどれくらいの水が必要か、みなさんはご存知だろうか?

正解はバスタブ30杯分。このような問いかけを行い、「週に1日お肉を食べない日をつくろう」と活動しているのはイギリスの「Meat Free Monday」だ。「Meat Free Monday」には元・ビートルズのポール・マッカートニーも賛同し、畜産が環境に与える負荷を指摘している。

片手に余るほどの大きさでそれぐらいだとすると、200gのサーロインステーキだとするとどれくらいの水が必要になるか想像に難くない。使用水量に加え、飼育の過程で生まれる汚水、温室効果ガスなどの影響も大きい。もちろん、動物の権利についても考えなければならない。

プラントベースを選択し、過剰に増えた肉の消費量を減らすことは私たちにもできる環境保全の1つとも言える。

まるで本物! #instagood な「代替肉」も続々誕生

食とIT技術の融合を「フードテック(Food Tech)」と呼ぶ。近年ではフードテックを扱うスタートアップから続々と「代替肉」が誕生している。

代替肉とは味や食感、見た目も本物にこだわった、プラントベースな肉のことを指す。日本でも大豆ミートという名で昔から存在しているが、最近の代替肉はそれとは比べ物にならない。たとえば、レオナルド・ディカプリオも出資する米・Beyond Meat社が提供する「ビヨンド・バーガー(BEYOND BURGER)」 でつくるハンバーガーは味も見た目も本物以上の迫力だ(2021年3月現在まだ日本では購入不可)。

日本でもNext Meat社が「NEXT焼肉」「NEXT牛丼」といった牛肉の代替肉、The Vegetarian Butcher Japan社からは鶏肉やサーモンの代替肉を楽しめるなど、これら様々な代替肉の誕生もブームの後押しとなっている。

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食べ物以外にも広がるプラントベース

プラントベースは食品のみならず、ファッションやコスメなど他の業界のプロダクトにも波及している。昨年はアディダスとステラマッカートニーがヴィーガンレザーを用いたスタンスミスを発表し、話題となった。

ステラ マッカートニー
Stella McCartney

老舗ブランドのエルメスも2021年末にマッシュルームを原料としたバッグを発売するそうだ。

また、韓国ではヴィーガンコスメがトレンドになっているなど、日本でもブームになる日は近い。

まずは週1からゆるくはじめてみるのはどう?

世界中で大きなトレンドとなっているプラントベース。「Meat Free Monday」にあやかって、まずは週に1度ゆるくはじめてみるのはどうだろう。

自身の健康や、環境に対して意識を向ける、よいきっかけになるのではないだろうか。

Hikari Inagaki (side dishes)