完全菜食主義と言われるヴィーガン、肉や魚を食べないベジタリアン、肉は食べないが魚や乳製品は食べるペスカタリアン、フルーツやナッツ中心のフルータリアンなど、倫理、宗教の理由に限らず様々な食文化が当たり前のように日常に溶け込んできた。

どこまでを制限するかは個人の自由であり第三者が決めるものではないが、多様な食文化を取り入れることで健康を取り戻した人もたくさんいる。

パーソナルトレーナーの林健太さんは、自身の体調や思想を考えた食事に率先して取り組もうとしている人にこそ、注意点を理解しながらさらに健康になってほしいと願っているそう。

「食事の実験に関するエビデンスは被験者各々の生活スタイルがあるため、その正確性を判断することが非常に難しく、一概に良し悪しを決めることもできないと感じます。ただ、それぞれのメリットを最大限に生かし、デメリットを最小限に抑えることは、どんな食事文化にも共通して言えることだと感じます」

今回は特に増加傾向が見られる、肉など動物食品を控えながら菜食中心にしていこうと考えている人に、知っておいてほしいポイントを聞いてみた。

①新しい満腹感に慣れる

満腹感は血糖値が上がることにより脳の満腹中枢が刺激され得られる。胃が満タンになったときに生じる感覚ではないので、食べ始めてから30分程度のタイムラグがあると考えておこう。

つまり、満腹を感じる前に詰め込む早食いはダイエット時のみならず普段から最も避けたい食事方法の一つ。

「普段から血糖値を上げにくい食事を心がけていれば感覚は分かりやすいと思いますが、菜食中心にするとさらに血糖値が上がりにくいので、満腹を感じるまで時間がかかることもあります。食物繊維が豊富な食材はよく噛んで食べるものが多いので、食事にゆっくりと時間をかけて満腹中枢を刺激することで解消できるでしょう」

仕事が忙しくランチの時間がゆっくり取れないという人も多いかもしれないが、普段から食事時間は余裕を持てるタイムスケジュールを組んでおくことも重要。

②調理方法にはバリエーションを
man frying vegetables
10'000 Hours//Getty Images

菜食中心など、食材のバリエーションが減ってしまう場合は調理方法のバリエーションでカバーすることを林さんは勧める。

「植物性製品に多く含まれるシュウ酸やフィチン酸は、ミネラル吸収を阻害する働きがあります。ただしこれらは水溶性で、特にシュウ酸は栄養素ではなく灰汁などに含まれる老廃物です。豆類や穀類は水に浸してから調理する、野菜は茹でるなど、調理方法の工夫が味だけでなく栄養にも良い影響を与えます」

ヴィーガンやベジタリアンと聞くと、どうしても生野菜やサラダを食べるという印象を持ってしまう人も少なくないと思うが、それはあくまで想像の話。

カルシウムは加齢とともに吸収率が低下するため、乳製品を控えている人は骨まで食べられる魚など別の食品から積極的に摂る工夫も必要。自身の体調と相談しながら食材と栄養バランスを整えていこう。

③良質なオイルでビタミンの吸収率アップ

緑黄色野菜に多く含まれるカロテンや、ナッツ類に多いビタミンEは脂に溶ける脂溶性ビタミン類。ドレッシングは健康に気遣いノンオイルとしたいところだが、オイル入りのものもおすすめだと林さん。

「菜食が中心になるとカロリーが少なくできるので、代わりにドレッシングなどから摂ることも一つの方法です。エゴマ油やアマニ油のドレッシングを使うことでエネルギーも摂れる上に、脂溶性ビタミンの吸収率もアップし、特に一般的な食事でも不足しやすいオメガ3脂肪酸が豊富に摂れるのは大きなメリットです」

脂溶性とともに水溶性のビタミンもしっかり摂れるのか気になるところだが、野菜や果物は食材そのものに含まれる水分量も多いので問題はないそう。


④筋力アップも可能

various kinds of vegan protein sources
carlosgaw//Getty Images

ヴィーガンやベジタリアンのタンパク質不足が懸念されることは承知の通りだが、肉食同等に質の高いタンパク質を摂ることは十分に可能だと林さん。

「ソイプロテインなど植物性のタンパク質は減量や女性向けというイメージが強いですが、筋力アップも十分に可能です。ヴィーガンやベジタリアンの人でも、必要なタンパク質を食事から摂ることはもちろん、足りない場合は大豆ミートやヴィーガンプロテインなどを利用するといいでしょう」

海外には菜食主義で活躍するボディビルダーやアスリートもいれば、そういった食事方法に切り替えることでパフォーマンスを上げた選手もいる。

有名なグルテンフリーもスポーツ選手から一般に浸透したように、これから更なる新しい食文化が広まっていくかもしれない。

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/