女性の体、とくに膣は生涯を通じて変化する。とりわけ閉経前後では膣に違和感が生じやすい。

米国産科婦人科学会(ACOG)によると、閉経後はエストロゲンというホルモンの量が減り、女性の膣と尿路に影響を及ぼすことがある。その結果、膣壁が徐々に薄くなり、乾燥して弾力を失っていくことも。

医学専門誌『Journal of Menopausal Medicine』掲載の論文によると、これは女性の45%を悩ませる膣萎縮(萎縮性膣炎)という名の疾患。米テキサス州ダラスの産婦人科医ジェシカ・シェパード医学博士の話では、膣萎縮が生じると膣内の血流が減少し、性的に興奮してオーガズムに達する体の能力が低下するため、セックスが気持ちいいと思えなくなってしまう。

膣萎縮の影響はセックスだけにとどまらない。米イェール大学メディカルスクールの産婦人科学・生殖科学臨床教授メアリー・ジェーン・ミンキン医学博士によれば、膣萎縮を発症すると歩くだけでも痛みを感じることがある。

かなり辛そうな疾患ではあるけれど、幸いにも治療は可能。ここからは膣萎縮の具体的な症状と治療法を見ていこう。

膣萎縮の症状

ミンキン博士いわく膣萎縮の症状は人によって少しずつ違うもの。でも、ACOGによると、膣萎縮には次のような症状がある。

  • 膣の灼熱感や痒み
  • 性交時の滑りが悪くなる
  • セックス後の出血
  • 膣と尿路の感染症にかかりやすくなる
  • 頻尿

尿関係の症状が多いことに驚くかもしれないけれど、シェパード医師いわく膣萎縮を発症すると膀胱の内壁も薄くなるため、尿路感染症にかかりやすくなる。

膣萎縮が日常生活に与える影響

ミンキン博士によると、さまざまな症状の中でも性交痛はとくに辛い。「潤滑液不足でヒリヒリしている膣の組織がセックスでさらに刺激されるからですね」。しかも、痛みを理由にセックスを避けていると、膣萎縮の症状は悪化することがある。「まさに悪循環ですね」とミンキン博士。「セックスをしないでいると、膣はどんどん乾いていきます」。シェパード医師いわく定期的にセックスをしていれば、膣に送られる血流と、膣の潤滑や弾力を維持するために必要なホルモンが増える可能性もある。

膣の乾燥はそれだけでも十分辛く、日常的な痒みと灼熱感を引き起こす。「膣が萎縮すると、膣内の細胞が健康でふくよかな状態から薄弱な状態に変化して、不快な症状を引き起こすことがあります」とミンキン博士。

また、膣萎縮では尿意を催すことが多くなり、用を足した直後にまた用を足したくなるので、トイレから離れることに不安を感じる人もいる。

膣萎縮の治療法

幸い膣萎縮の治療法には、市販の薬や処方箋などさまざまなものがある。ACOGによると、一般的な治療法は以下の通り。

膣用の保湿液と潤滑ゼリー

膣の乾燥を和らげて性交痛を防ぐ膣用の保湿液や潤滑ゼリーは、ドラッグストアで入手可能。

エストロゲンの局所的投与

ミンキン博士によれば、膣用のクリームやリング、座薬を介して少量のエストロゲンを投与すると、膣壁が厚みと弾力を取り戻し、膣の乾燥と炎症も軽減する。

エストロゲンの全身的投与

エストロゲンを含む錠剤の服用、パッチの使用、ジェルやスプレーの塗布により、エストロゲンが血中に放出されて、必要な臓器と組織に送られる。

ACOGによると、エストロゲン療法の最中はプロゲスチンも並行して摂取することが大切。処方箋によるエストロゲンのみの治療は子宮内膜がんのリスクを上昇させる可能性があるけれど、プロゲスチンを摂取すれば、そのリスクが中和される。シェパード医師いわくエストロゲンは子宮内膜の細胞を増殖・分裂させる一方で、プロゲスチンは子宮内膜の剥離を促す。

選択的エストロゲン受容体モジュレーター

SERM (サーム)としても知られる選択的エストロゲン受容体モジュレーターは、全身のエストロゲン受容体に結合し、エストロゲンの産生を促進する処方箋。

かかりつけ医に相談するべきタイミング

閉経が近づいたら(通常は40~50代)一度医師に相談を。「将来起こりうることを理解して、症状に逐一対応していくためにも、膣萎縮に関する話し合いは継続的に行いましょう」とシェパード医師。

でも、膣の不快感や性交痛に悩まされているのなら、いまの年齢にかかわらず必ず医師に相談を。ミンキン医師が言うように「この疾患の治療は難しくありませんから」
 
※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました

Text: Korin Miller Translation: Ai Igamoto

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Korin Miller
Korin Miller is a freelance writer specializing in general wellness, sexual health and relationships, and lifestyle trends, with work appearing in Men’s Health, Women’s Health, Self, Glamour, and more. She has a master’s degree from American University, lives by the beach, and hopes to own a teacup pig and taco truck one day.
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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。