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子宮頸がんは予防可能? まずは学ぶことから始めよう

知らないまま後悔しないで。予防できるがんのこと。

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Maria Lapteva//Getty Images

「知らないという理由で後悔して欲しくない」。そう語るのは、「子宮頸がん」や「HPVワクチン」についての医学的根拠に基づいた情報を広めることで、若者が自分で判断できる社会の構築を目指す学生団体『Vcan』代表の大坪琉奈さん。今回はアシスタントエディターMIZUKIが、子宮頸がんとその予防策に関する不安や疑問について、大学生の視点から質問した。

そもそも子宮頸がんって何? その原因は?

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A. 子宮頸がんとは、子宮下部の管状の部分である子宮頸部に生じるがんで、20代〜40代の若い時期から多く発症するのが特徴。年間で約1.1万人が子宮頸がんと診断され、約2800人がそれによって亡くなっている。子宮頸がんによる死亡数は、年間の交通事故死者数よりも多いと言われている。※2021年の全国の交通事故死者数:2636人(24時間)

【原因】HPV(ヒトパピローマウイルス)

HPVは主に性交渉(オーラルセックスを含む)で感染するウイルス。過去に一度でも性交渉の経験があれば誰もが感染するリスクがあり、80%の女性が一生に一度感染すると言われている。HPVに感染すると、子宮頸がんに加え、中咽頭がん、腟がん、外陰がん、肛門がん、陰茎がん、尖圭コンジローマに罹患する恐れもあり、男性にも病気のリスクがある

子宮頸がんの原因は、性交渉によるHPVへの感染なので、HPVに感染しないための予防、それによって生じる病気を予防することが鍵となる。

HPVに感染しないために何ができる? コンドームで防げるの?

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stanisluva//Getty Images

A. コンドームでは不十分。

もちろんコンドームは避妊用具であり、感染症予防のために使用される。しかし、HPVは粘膜や喉にも感染する可能性があるため、より確実なのはワクチン接種といえる。加えて、コンドームは物理的にある程度防ぐだけなので、回数を重ねると自然とリスクが高まる。

ワクチンで子宮頸がんは防げるの?

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*N Engl Med 2020; 383:I340-I348

A. スウェーデンの研究によると、HPVワクチンを受けたことがある人とない人を比較すると、ワクチン接種で49%子宮頸がんを予防できるというデータがある。

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*N Engl Med 2020; 383:I340-I348

また、10〜16歳でHPVワクチンを接種した(1回以上)場合、子宮頸がんの発生率を88%、17〜30歳までだと53%減少できるとされる。このように、接種年齢が若いほど高い予防効果が期待できる。

HPVワクチン接種率が約89%のオーストラリアでは、2035年までに子宮頸がんを撲滅できると言われており、ワクチンの効果が実証され始めている。

ワクチン接種が見直されているけど、副反応の心配は?

vector of a woman with long hair in pink colors concept of feminism
mikroman6//Getty Images

A. 日本では2013年にHPVワクチンが定期接種の対象となったが、2か月後の同年6月にワクチン接種後の体調不良を訴えた若者についてメディアで大きく取り上げられたことにより、ワクチンの積極的接種勧奨が一時差し控えに。その後、約70%だったHPVワクチン接種率は1%未満まで減少した。しかし厚生労働省によると、メディアで放送されたいくつかの有害事象の症状は、ワクチン接種との因果関係は証明されていない。

それと同時に、HPVワクチンに限らずどのワクチンでも副反応が生じる可能性があることも予防の選択をする上で理解しなくてはならない。インフルエンザやコロナウイルスのワクチン接種後発熱などの症状が出ることがある。

初性交渉後、特にキャッチアップ世代の若者でもワクチンの効果はあるの? 今からでも遅くない?

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A. 年齢が上がるにつれ性交渉の数とHPV感染リスクは増える。そのため国では、性交渉前又は性交渉の経験が少ないと考えられる小学校6年生〜高校1年生相当の若者向けに積極的接種勧奨が行われているが、性交渉後のワクチン接種でも予防効果はあると言われている。

その理由の一つが、HPVには様々な型があるということ。

HPVワクチンには2価、4価、9価の3種類あるが、予防できるHPV型がそれぞれ異なる。例えば、4価ワクチンは6・11・16・18型の4つを予防することができる。そのため、4つのうちいずれかの型のウイルスに感染してしまっても、それ以外の型への感染はワクチンで予防することができる。

上記の4つの型に加え、31・33・45・52・58型と、多くの型を防ぐことができる9価ワクチンは、子宮頸がんの原因となるHPVのうち80〜90%に対応できると言われており、2023年4月から定期接種に追加された。17歳〜26歳のキャッチアップ世代と呼ばれる若者も無料接種の対象である。

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ワクチンを接種しない選択をした場合、予防のために出来ることは?

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ACIDmit//Getty Images

A. 子宮頸がん検診の受診

子宮頸がん検診は、子宮の入口の細胞を採りそれに異変がないかをチェックするもので、性行為の経験をしたら、20歳以上であれば2年に1回検診を受けることが推奨されている。この検診は早期発見・対処のために非常に重要である。

膣口から約7cmのところにある子宮頸がんは、医師が目で確認できる距離にあるため、早期発見さえできればすぐに対処することができる。だからこそ、ワクチンを接種しない選択をした場合でも子宮頸がん検診に行くことが重要である。

まとめ:
子宮頸がん予防には選択肢があるということを忘れないでほしい。自分に合った選択肢を見つけ、自分で判断するためにまず「知る」ことが大切なのではないか。

お話を伺ったのは......

a woman looking at something
Vcan

Vcan代表:大坪琉奈さん

「ワクチンを『接種する・しない』の選択は個人が決めること。でも同じ『接種しない』が『知らなかったから接種しなかった』であれば、自分で決めた判断とは言えない。『知らないまま後悔しないで』ほしい。だからこそまずは知ってほしい。そのために私たちは活動しています」

『Vcan』は全国の医学生を中心に活動している学生団体で、子宮頸がんやHPVワクチンについての情報発信を行っている。団体名である『Vcan』は「Preventable Cancer(予防できるがん)」の「V」と「Can」を合わせたもので、若者が「がん予防」のための選択を自身で判断できる社会を構築したい、という思いが込められている。具体的な活動として、全国の中高学校に直接出向いて授業を行う「全国中高ツアー」や、学園祭での講演会、ワークショップなどがある。これらの活動を通して、HPVワクチン定期接種対象者である小学6年生〜高校1年生相当の若者に加え、キャッチアップ世代の26歳までの若者や、その親世代が子宮頸がんやワクチンについて学べる機会を提供している。Vcan ホームページ

監修:埼玉医科大学 医療人育成支援センター・地域医学医療センター/産婦人科医 高橋幸子

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Mizuki Onodera

インターン中の現役大学生。エル・デコ編集部でのサマーインターンを経てウィメンズヘルス編集部にジョイン。高校時代のフランス留学をきっかけに、自然を愛するナチュラルな暮らしや、QOLを高める暮らしにインスパイアされる。その後大学で再び渡仏し、仕事におけるメンタルヘルスについて学ぶ。心と体にヘルシーなライフスタイルについてはもちろん、恋愛におけるヘルシーなリレーションシップについても発信していきたい。ヒップホップダンスやボクササイズの経験あり。今後は編集部の先輩方の影響で、テニスやランニングにも挑戦したい。趣味はカメラとナチュラルワイン巡り♡

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