妊娠中期と後期に運動をしていた母親から生まれた赤ちゃんは心臓が強い可能性がある。

米スポーツ医学会の月刊誌『Medicine & Science in Sports & Exercise』に掲載された論文によると、この調査では、出産まであと24週間の妊婦さんが2つのグループに分けられた。1つ目のグループは中強度の有酸素運動を週150分行い、比較対象となった2つ目のグループは運動をしない代わりにリラクゼーション、マインドフルネス、ボディ・アウェアネス(身体意識)を促進するアクティビティを週150分行った。運動するグループでは、それぞれが好きな器具(トレッドミル、エリプティカル、ローイングマシン、エアロバイクなど)を選んで使用した。

妊婦さんたちが無事に出産すると、調査チームは赤ちゃんが生後1ヶ月になった段階で一連の心機能検査を実施した。その結果、運動した母親の赤ちゃんは「心機能が高い」ことが判明。また、この調査には適正体重の女性と過体重の女性の両方が参加していたけれど、心機能の向上がより顕著に見られたのは意外にも過体重あるいは肥満の女性から生まれた子どもだった。なお、この調査は米国心臓協会から部分的な出資を受けて米イースト・カロライナ大学が行った。

この論文にもある通り「初期の所見は、妊娠中の有酸素運動によって幼児の心拍数が下がり、心機能の測定結果が向上することを示して」おり、一般的な産婦人科も、妊娠中の女性(とくに過体重や肥満の女性)には週150分の有酸素運動を推奨している。ただし、妊娠中の適度な有酸素運動が成人後の子どもの心血管にもよい影響(心血管疾患のリスク低下など)を与えるかどうかについてはまだ分かっていない。

過去の研究結果も、妊娠中の運動が子どもの心臓によいという見方を裏付けている。一例として運動スポーツ科学専門誌『Exercise and Sport Sciences Reviews』に掲載された2015年の研究結果は、妊娠中の運動で子どもの慢性疾患の発症リスクが低下する可能性を浮き彫りにした。さらに、その研究チームは同研究結果が「妊娠中の運動は母親にも子どもにもよいという見方」を大方裏付けていると結論付けた。

でも、赤ちゃんの健康に影響を及ぼすのは母体の運動習慣だけじゃない。その証拠として2020年に発表された研究結果は、受胎前の父親の健康状態も産後の母親と子どもの状態に影響することを示している。研究チームは78万6000件の分娩データから、父親の健康状態が悪いと、新生児集中治療が必要となる早産児や低出生体重児が生まれる確率が高くなることを突き止めた。
 
※この記事は、イギリス版『Runners World』から翻訳されました。

Text: Amy Sedghi Translation: Ai Igamoto

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。