雨の日は気分が落ち込む、なんだかだるいと感じるのは、勘違いではない。実は、気象の変化と私たちの体調が関わっていることが、医学的にもわかってきている。日中と夜の寒暖差が大きい時季や梅雨は特に、この悩みを感じやすくなるそう。今回は、気象病の症状や対策方法をご紹介。

目次

  • 気象病とは
  • 気象病の症状
  • 気象病はなぜ発症する?
  • 気象病になりやすい人の特徴
  • 気象病の対策
  • まとめ

気象病とは?

気象の変化によって引き起こされる不調のことを気象病という。

気象病の症状

気象病の主な症状はこちら。

・頭痛やめまい

・ぜんそく

・体のだるさ

・気分の落ち込みやイライラ

他にも症状は個人差があるそう。

気象病はなぜ発症する?

 気象外来を持つ、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅 司先生によると、気象病の大きな原因は、気温の乱高下と気圧。私たちは毎日、“1気圧”の中で生活しており、1気圧は、1平方メートルで換算すると10トンの重さになる。私たちの体は外からの1気圧に対して、体の内側からの圧力でうまくバランスを取っているため、10トンの重さで潰されてしまうことはない。ところが天気が悪くなると低気圧が強まり、気圧が大きく変動し、今までうまくバランスを取っていた気圧と体とのバランスに変化が生じる。爆弾低気圧のような異常気象や台風などは気圧が大きく変化するので、不調になる人が増える。

そのほかにも、寒暖差が大きい日や梅雨などジメジメとしたつらい季節に症状が出やすいそう。

気象病になりやすい人の特徴

これは、大きく2つの部分が関係していると久手堅先生は指摘する。

①耳の中

一つは耳の中の内耳(ないじ)と言われる部分。飛行機に乗ったとき、急上昇して気圧が変化すると、耳がキーンと詰まった感じになることはない? あれは、気圧の変動を内耳が感知することで起こる。耳の中にある内耳と呼ばれる部分は、私たちの平衡感覚と聴覚を司っている部分で、気圧の変化などを感じるとそれを素早くキャッチし、脳の中枢にある視床下部に伝え、自律神経に“体に変化が起きているので対応しなさい”と指令を出す。飛行機の気圧変化でめまいが起きたり、頭痛がするのは、自律神経が乱れていることで起きているという。

この最初の変化を感じる内耳は個人差があるため、非常に敏感に反応してしまう人がいる。どちらかというと男性よりも女性のほうが、内耳変化に敏感だと言われている。乗り物酔いしやすい人は内耳が敏感なので、気圧変化も感じやすいと思ったほうがよいそう。

②姿勢の悪さ

また、姿勢の悪さも気圧の変化に大きく関係すると久手堅先生は指摘する。

1気圧で10トンの圧力がかかる私たちの体。通常はこの圧力にも対抗できる力を持っているが、姿勢が悪いと軸が定まらないため、気圧の影響を受けやすくなることが分かってきている。例えば、免震構造高層ビル。揺れて免震することで振動から建物を守っているため多少の負荷がかかっても倒れないが、柱が斜めになっていたり、一部が傷んでいたりすると、ちょっとの揺れや負荷がかかっても崩れてしまう。これは姿勢でも同じ。

先生のもとに気象病で来られる患者さんは、姿勢が悪い人が多いそう。

猫背はもちろん、最近多いのが、スマホによるストレートネック。ストレートネックは肩こりや首こりだけでなく、頭痛やめまい、自律神経の不調にも関係していると言われている。

参考記事「天気が悪いとなぜ不調になるの? そもそも「気象病」って何?

気象病の対策

気象病の対策は、症状に気づいたときにケアすることをクセづけるのが大切。

「気象病は調子が悪いな、というときには症状がすでに出てしまっているので、前もって習慣づけることが大事です。特にスマホが手放せない人、デスクワークでパソコンに長時間向かっている人は、“気づいたときにケアするクセ”をつけたほうがいいですね」と久手堅先生。

今回は、久手堅先生に伺った4つのメンテナンス方法をご紹介。

1.ストレートネックメンテナンス

デスクワークでパソコンに向かい続けたり、スマホを長時間見ていたりしていると、ストレートネックになりがち。ストレートネックとは、本来は緩やかなカーブを描くはずの首の骨(頸椎)が、こうした姿勢を取り続けたことなどにより、真っすぐになってしまった状態を指す。ストレートネックは首に負担がかかるため、それがさらに気圧で悪影響を受けて不調が出やすくなるため、日頃からストレートネックを正すケアが重要。

このストレッチは、スマホの画面などを見ていて「あれ、頭の位置が前に出ている」と気づいたときに行おう。“気づいたら行う”をクセにすることで、頭と首の正しい位置を刷り込むことができる。肩凝りと首凝りの予防にも◎。

ストレートネックメンテナンス
Kanao Enami(asterisk-agency)

【やり方】

①利き手の親指と人さし指でL字を作る。アゴにL字を横から当てて、ストレートネックで前に出ている頭を正しい位置に戻すように押し込む。

ポイント:このとき肩の位置はそのままに、頭の位置だけを押し込むようにして変える。押し込むのは、耳の下に肩が来るぐらいの位置まで。

2.肩甲骨を引き寄せて、猫背をメンテナンス

スマホやパソコンで作業をしていると肩が前に出て、胸が閉じた猫背になってしまいがち。この姿勢は、ストレートネックと同じく気圧の影響を受けやすい姿勢なので、しっかりケアしていこう。デスクワーク時には1時間ごとに、ストレッチ的に行うのがオススメ。

肩甲骨を引き寄せて、猫背をメンテナンス
Kanao Enami(asterisk-agency)

【やり方】

①両手を後ろ手に組み、息を吐きながらゆっくりと、左右の肩甲骨を合わせるようにして胸を気持ちよく開いていく。

②ゆっくり伸ばしながら20秒程度キープし、3セット行う。

3.内耳のバランスを良くする、耳揉みメンテナンス

耳の中の内耳は気圧の影響を受けやすく、気圧の変動をキャッチして脳の視床下部から自律神経へ信号を送る働きを担っている非常に重要な部分。この部分の循環をよくしておくこう。テレビを見ながらでもできるので、「気づいたらやる」を意識してみて。

内耳のバランスを良くする、耳揉みメンテナンス
Kanao Enami(asterisk-agency)

【やり方】

①右手で右耳、左手で左耳を持ち、耳の少し上を水平方向に引っ張る。

②耳を上下に引っ張りながら動かす。

③前に5回、後ろに5回耳を回す。

④耳を斜め上に引っ張る。いろいろな方向に耳を刺激することで、内耳のむくみなどをケア。

4.緊張しがちな部分を、指圧でメンテナンス

気圧の影響を受けると、頭痛やめまいなどを起こしやすくなる。このとき、緊張するのがこめかみやかみ合わせの部分。指圧で緩めることで、緊張が解けるそう。

緊張しがちな部分を、指圧でメンテナンス
Kanao Enami(asterisk-agency)

【やり方】

①人さし指と中指で、こめかみを20~30秒ぐらい押して刺激。

②頬骨の下のかみ合わせの部分を、同じく20~30秒ぐらい指圧する。

③耳の下のエラの部分を、少し前に押すように、持ち上げるように20~30秒ぐらい指圧。

参考記事「気圧のトラブルにさよなら! ドクターが解説、梅雨前から始めたい「気象病セルフケア」

まとめ

日常のちょっとした不調も気象病の可能性がある。自分の不調が何によって引き起こされているのか見極めて、不調改善方法を見つけておこう。

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Nao Sakamoto
エディター

アシスタントエディターとしてSNS業務も担当。人間の心理、睡眠や美容に興味を持ち、記事執筆を行っている。自他ともに認める運動音痴だが、最近ヨガとピラティスで心と体を整え始めた。健康なライフスタイルを送りたいため、1日1食オートミール生活を実践中。