フィットネストレンドといえば、自宅でリラックスして取り組める軽い有酸素運動「コージー・カーディオ」から、高い理想を追求する「75ハードチャレンジ」まで、私たちはいろんなタイプの運動を試してきた。そして最近、TikTokやInstagramで頻繁に登場し始めたのはなんと、「後ろ歩き」。確かにウォーキングは簡単で、負担も少なくてコストもかからない。既存の運動ルーティンに取り入れやすそうではあるものの、これはただ流行っているだけ? それとも、本当に実行する価値があるのかな? この疑問に詳しく答えてくれたのは、フィットネスファーストのパーソナルトレーナー、ジェームズ・バー氏。イギリス版ウィメンズからみていこう。


後ろ歩きがもたらす6つのメリット

woman walking on meadow with bare feet, low section
ZenShui/Eric Audras//Getty Images

「後ろ歩きを含め、歩くことにはメリットがたくさんあります」とバー氏。具体的には?

1. バランスとコーディネーション能力が向上する

「後ろ歩きは普段と異なる筋肉を使い、コーディネーション能力(自分の身体を自由に操る能力)が要求されるため、バランスとプロプリオセプション(動きや動作、体の位置を感じ取る能力)が向上します」とバー氏。「ある研究では、後ろ歩きでバランスが改善されるため、転倒リスクが減ることを示唆しています」

2.  筋肉が強化される

バー氏の説明によると、後ろ歩きは「ハムストリングスや殿筋、腰など、通常の前歩きでは使わない筋肉を集中して使うため、筋肉のバランスや筋力の全体的な向上につながる」とのこと。学術誌『The Indian Journal of Physiotherapy and Occupational Therapy』に掲載された研究では、変形性膝関節症患者が従来の理学療法に加え、後ろ歩きを取り入れたことで、大腿四頭筋の筋力に改善がみられている。

3.  関節への負荷を減らせる

「後ろ歩きは膝や足首にかかる負担が少ないため、前を向いて歩いたり走ったりするより関節に優しい運動です」とバー氏。同研究によると、後ろ歩きは「踵からつま先へ足を着地させる」動きが独特であり、「つま先から踵へ足を着地させる」前歩きに比べて、「膝関節への衝撃が少ない」のだそう。

4.  認知機能が向上する

「後ろ歩きをするには高い注意力と集中力が必要であり、これが認知機能と空間認識の向上に役立ちます」とバー氏。『Gait and Posture』誌が発表した研究が指摘するように、グローバル認知機能(注意、記憶、言語流暢性、言語、視空間認知能力からなる5つの認知領域)は前歩きではなく、後ろ歩きに関連付けられている。理由は、前歩きと違って後ろ歩きはより難しく、馴染みのない動きであるからだと考えられているよう。

5.  姿勢が改善される

「正しいフォームで後ろ歩きをすることにより、体幹の筋肉を鍛えられ、姿勢をまっすぐに正すことができます」とバー氏。

6. 認知症から脳を守る

「歳をとるにつれ、脳は収縮します。それが少し怖いと思ったら、ウォーキングでその進行を遅らせることができますよ」とバー氏。

「2020年に行われたフロンティア研究では、肥満や過体重の人がウォーキングをしたところ、記憶と情報処理を司る脳の領域(前頭前野と海馬)がそれぞれ大きくなることが示されました。また、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された研究では、運動が海馬の体積を2%増加させ、加齢による海馬の体積の減少を1〜2年分取り戻せることが示唆されています」

後ろ歩きの2つの欠点と実際の効果について

achilles injury on running outdoors women holding achilles tendon by hands close up and suffering with pain ankle twist sprain accident in sport exercise running jogging
TravelCouples//Getty Images

「後ろ歩きはスキルですから、慣れるのに時間がかかります。とくに、今までやったことがない人にとってはなおさらです」とバー氏。

考慮しておきたい2つの欠点は以下のとおり。

1. 怪我のリスクが上がる

「後ろ歩きは、躓いたり転んだり、障害物や他の人と衝突したりするリスクが高いので、とても難しく感じることがあります」とバー氏。

2.  首と背中に負担がかかる

「後ろを振り向くたびに首を回す必要があるため、後ろ歩きによって首と背中が疲れやすくなるでしょう。ウォーミングアップでは、首と背中のストレッチを忘れずに行うことが重要です」とバー氏。

もし、体重を管理したい人は、このエクササイズだけに頼ることはできないとバー氏は言う。「後ろ歩きで本気で成果を出したいのであれば、他のエクササイズと並行して行う必要があります」

後ろ歩きを既存の運動プランに組み込む方法は?

「後ろ歩きを取り入れる場合は、ゆっくり始めていくことが重要です」とバー氏。「まずはウォーミングアップの際に行うようにすると、ゆっくり始められます。数分後ろ歩きを練習したら、有酸素運動をする日に実際に後ろ歩きを少しずつ取り入れていきましょう」

「例えば、決めた時間と距離の中で後ろ歩きと前歩きを交互に行います。ショートインターバルで始めてください。動きに慣れるにつれ、徐々に時間の長さや強度を増やすようにしてください」

「筋トレにも後ろ歩きを加えるといいですね。ランジやスクワットと併せて行えば、下半身の筋肉をさらに鍛えられます」

「ですが、どんな運動であれ、初めて挑戦する運動はゆっくり始めることです。強度と時間の長さは徐々に増やしていきましょう」

リマインダー:健康上の問題や懸念があるときは、後ろ歩きを始める前に、医療従事者に相談することが常に大切。

トレッドミルや外で後ろ歩きはできる?

woman running exercise on track treadmill
Sorapop//Getty Images

「どちらでもできますが、外でする前に、初めはトレッドミルで慣れておいたほうがいいでしょう」とバー氏。

後ろ歩きは週に何回/どれくらいの頻度でするといい?

「後ろ歩きの頻度と時間の長さは、個々のフィットネスレベルによって変わるものです。最初は週に2〜3回程度、通常の運動ルーティンに後ろ歩きを取り入れてみるのがいいでしょう」とバー氏。

「セッションごとに5〜10分の短い時間から始めていき、フィットネスレベルが向上するにつれて、徐々に時間を長くしていくことです。目標時間を設定し、持久力がついてきたら、後ろ歩きを最大で20〜30分行えるように目指してみてください」

結論は  初めは半信半疑だった後ろ歩きも、バー氏のおかげで案外取り組みやすい運動だということがわかった。メリットもたくさんあるし、なんだかノーマルなエクササイズに思えてきたからびっくり。トレッドミルで行うときは、確かにジムでちょっと変な目で見られることがあるかもしれないけれど、それほど突飛なオプションではなく、いつものジムセッションに自然と後ろ歩きを組み込めそう!
 
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: KATE CHENG Translation : Yukie Kawabata

Lettermark
Kate Cheng
Health and Fitness Writer


Kate puts together fitness content that covers functional and strength training, cardio, workout challenges, interviews and news. She's often doing gym laundry or listening to music.

Headshot of 川畑 幸絵

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。