長年東京マラソンのレースディレクターを務めてきた早野忠昭氏が、2023年秋に東京マラソン財団の理事長に就任。新たな理事長のもとで東京マラソンはどう変わっていくのだろうか? 芸能界きってのランナーで2009年には東京マラソンも完走している安⽥美沙⼦さんが、気になる東京マラソンの今後について、早野理事長にインタビュー。


安田美沙子さんと東京マラソン

a person smiling at the camera
Akira Yamada

早野理事長:「去年は沿道で応援もされたそうですね」

安田さん:「そうなんです。ランニングがてら応援にいっちゃいました。応援しているとやはり車いすランナーや先頭集団の迫力がすごすぎて、鳥肌が立ちました。マラソン大会って、応援するだけでも感動をもらえて好きです」

早野理事長:「安田さんが東京マラソンに出場されたのは何年ですか?」

安田さん:「2008年の年末に初めてホノルルマラソンでフルマラソンに挑戦して、東京マラソンは2009年。ホノルルで目標タイムはクリアできたのですがレースの内容に満足できなくて、リベンジのつもりで東京マラソンに出場しました」

早野理事長:「ホノルルマラソンが12月で、当時東京マラソンは2月の最終日でしたから、かなり短いスパンでの連続フルマラソンですね」

安田さん:「でもそこで目標だった4時間をきれなくて……。私の中ではとても悔しかった大会なんです。でもさらにマラソン熱に火がついて、悔しさを原動力に次に進めた思い出があります」

早野理事長:「2009年はまだコースが古い時代で、最後の佃大橋が上り坂で、記録が出にくかったんです。現在のコースは、記録が出しやすいことと、フィニッシュを東京らしいフォトジェニックなロケーションにできるように設計したんですよ」

安田さん:「そうなんですね。私はその後、出産で走ることから少し離れてしまったので、少しずつ戻して、いつかは東京マラソンであの時の感覚をもう一度味わいたいです。今度こそ4時間切りを狙います!」

2024年の東京マラソンの見どころは? 

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Akira Yamada


安田さん:「早野さんが理事長に就任されて初となる、今年の東京マラソンの見どころはどんなところですか?」

早野理事長:「今年は注目ポイントがいっぱいありますよ。まず、前世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ選手とシファン・ハッサン選手(Tokyo2020オリンピック女子5000mと1000mの金メダリスト)が出場します。とくにハッサン選手はとても人気で、彼女の走りと話し方、そしてチャーミングさは世界中のファンにはたまらないと思います。そのお二人を呼んでいるので業界は大騒ぎです(笑)」

安田さん:「一般ランナーにとっても、“キプチョゲ選手やハッサン選手と一緒に走ったんだよ”って思い出になりますよね」

早野理事長:「そう思います。またハーフマラソンの日本記録を持つ新谷仁美選手と、男子もMGCファイナルチャレンジとしてパリ五輪を目指す日本選手も多く出場しますし、海外勢では2時間3分台の選手も2人いて、多分東京マラソンの歴史上最もハイペースなレース展開になると思います」

安田さん:「話題の選手や見どころがが多くて中継の人も大変そうですね。応援する側としてもとても楽しみです!」


世界一温かくて優しい大会に 

a man and a woman sitting on a couch
Akira Yamada

安田さん:「東京マラソンは、世界⼀の⼤会を⽬指していると聞きました。大会づくりで苦労していることはありますか?」

早野理事長:「まずは“世界一って何だろう” “なにをもって世界一なのか”という基準を明確にするところから始めました。東京マラソンには3つの柱があるのですが、その一つ目が安全性。でも実は、日本はすでに安全性に関しては世界一なんです」

安田さん:「すでに安全性は世界一なのですね?!」

早野理事長:「そうなんです。東京マラソンはこれまで、事故で人命が失われたことがありません。これからも一般の方、エリートの方も含めて事故のない“安全で安心な大会の世界一”を目指し、現場の医療チームとも連携をはかっていくつもりです」

安田さん:「安全という意味では、東京という街自体も世界の国の中でも治安の良さはピカイチですものね。二つ目の柱はなんですか?」

早野理事長:「二番目は“世界一エキサイティングな大会”です。エリートレースだけでなく、一般の方もワクワクするような1週間を過ごして欲しいと考えています。例えば、全国各地、世界各地の方が東京マラソンをきっかけに東京に来るということもありますよね。せっかくだからマラソンを走るだけでなく2、3泊して友達に会ったり、東京という街を思い切り楽しんでもらえたらと思います。前日のイベントやエキスポを通じても、みなさんのワクワク感を盛り上げられたらうれしいですね」

安田さん:「確かにそうですよね。皆さん東京マラソンはお祭り感覚で楽しみにされていると思います。東京マラソンウィークは、海外からのゲストも含めてさまざまな人とランニング中に会えたり、気さくに挨拶を交わしたり……そういったモーメントも楽しさのひとつですよね。ここまででも十分に魅力的な大会ではあると思うのですが、最後のひとつはなんですか?」

早野理事長:「はい。最後は、“世界一温かくて優しい大会”です。温かいというのは、人種や性別、年齢、障がいの有無も関係なく、色んな方が参加しやすいという意味での温かさです。ホスピタリティやボランティアなど、あらゆる方を歓迎するスタンスが、我々の目指していくべきところではないかと思います。東京マラソンではこの3本柱のどれをとってもやはり世界一だよね、と言われる大会の実現に向けて動いています」

“走る喜び、支える誇り、応援する楽しみ”を大切に

a man and woman sitting on a couch
Akira Yamada

安田さん:「新理事⻑になられて、これから東京マラソンをどう変えていかれるのですか?」

早野理事長:「東京マラソンは“走る喜び、支える誇り、応援する楽しみ”を大切にしています。ランナーとしての参加、あるいはボランティアだけではなく、スポンサーなども支える側として参加しているということです。また沿道やテレビなどを通じて応援し、そこから感動や刺激を受けるという参加の方法もあると思っています。自分が走らなくても、東京マラソンへの参加の形は色々ある。それを多くの方に知ってもらい、感動の輪をもっと広げていきたいですね」

安田さん:「東京マラソンへの参加って、走るか、ボランティアか、だと思っていましたが、応援する人やスポンサーとして支援する企業も広い意味での“参加者”なんですね」

早野理事長:「そう考えています。フルマラソンへの参加は、走ったこともない方にとってはとてもハードルが高いことですよね。でも、ボランティアとしてなら参加できます。そしてボランティアをしてみると、“マラソンって最高”と感じるんです。ランナーの方に“ありがとう”と言ってもらえると、ボランティアにとっても喜びや感動に繋がります。そうしたマラソンから生み出される感動が、人を助けること、育成にも繋がってくると思うのです。私はそういう感動の瞬間をたくさん作っていきたいと思っています」

安田さん:「なるほど。確かにボランティアって素敵ですよね。私もこの前、ごみを拾いながら走っている方たちを見かけたんです。そしてその方々に“ありがとう”と声をかけている人を見て、そのコミュニケーションって素敵だなって思いました」


スポーツを通して子供に伝えたい「やり遂げる」ということ 

a man and a woman standing next to each other smiling
Akira Yamada


早野理事長:「安田さんは、ランナーとして東京マラソンに期待することはありますか?」

安田さん:「私、食育の団体に入っていて、たまに復興マラソンをやっているんです。そこでお母さんと子どもが走っている姿とか見ると、なんだか泣けちゃうんですよね。だから東京マラソンの“子ども部門”とか“親子部門”があったらいいなと思います」

早野理事長:「子を持つ親の気持ち、分かります。やはりお子さんを持たれて走っているママなどが参加しやすい環境を、つくっていかなければいけないと感じます。東京マラソン当日は難しいかもしれませんが、関連イベントとして実施していた“ファミリーラン”や“フレンドシップラン”のように、東京マラソンウィークのイベント(東京ランニングフェスタ)の一環として行ったり、秋に開催する東京レガシーハーフマラソンの前日や、昨年新しく誕生したリレーマラソン、トウキョウロクタイフェスの中で行うのもいいかもしれませんね」

安田さん:「女性って、出産すると産前のようなペースで走ることが難しくなるんです。もっと練習したいのに、なかなか走る時間が取れなかったり。それがもどかしかったりするので、最近はたまに息子と走っています」

早野理事長:「息子さんはおいくつですか?」

安田さん:「6歳なんですけど、今5kmくらい走れるんです」

早野理事長:「すごいですね!」

安田さん:「だから子どもたちに東京マラソンのようなレースを見せて、その景色に感動してほしいなと思います。自分もそこに出たいと思うような、そんな風になったらいいなと。ランナーとしての英才教育じゃないですけど(笑)、走る楽しさは教えていきたいなと思っています」

早野理事長:「分かります。スポーツをやり遂げることで得られる感動とか喜びって、子どもたちに伝えたいですよね。“スポーツを通して、そういったものの価値を教える”ということも、今後は私たちが伝えていけたらと考えています」

安田さん:「そうしたらきっと、走ったりボランティアとして参加する側の人と応援する人、合わせたらかなりの人数に影響を与えられるから、より素敵な世界になるでしょうね」

ランナー、ボランティア、そして応援、東京マラソンへの関わり方は違っても、日本中、世界中からランナーが集まり、盛り上がる東京マラソンはすべての人のもの。それぞれの立場で東京マラソンを楽しもう!

<3月2日、東京がキレイになる日。>

東京マラソンの前日である3月2日(土)に、東京マラソン財団が主催、ウィメンズヘルス編集部のサポートによるプロギング(ゴミ拾いランニング)イベントの開催が決定。浅草で行われる本イベントの参加受付はすでに締め切っているが、東京マラソンに参加する人も、しない人も、3月2日はいつものランニングコースを走りながら、ゴミ拾いをしてみては?

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Nanita
コミュニティリーダー

ウィメンズヘルスのコミュニティーリーダー。元ボクシングインストラクターの経験を持ち、ダンス・トレーニング・ランニングと様々なワークアウトに取り組み発信している。底抜けの元気さとポジティブエネルギーが強み。日々心と体をHAPPYにするため、まだ見ぬ境地へフルスピードで突進中。