COVID-19は収束に向かいつつあるが、1か月以上にわたる外出規制は経済に多大な影響を及ぼした。米労働省が発表した数字(5月9日時点)によると、アメリカ国内の失業者数は2000万人超。失業率が14.7%と世界恐慌以降最悪となった。そんな厳しい状況下、世界のランクルーの活動状況をお届けした前回。一緒に走ることだけが、ランニングコミュニティの在り方ではないことを教えてくれた。

Sports, Recreation, Physical fitness, Running, Footwear, Competition event, Sports training, Athletics, Competition, Performance,
Steven Carvente

LAを拠点としている「Koreatown Run club」(通称KRC)は「僕らは家族だから、サポートし合うのが当然」と、仕事を失くした仲間や困っているメンバーの家族を助け合うエイドグループを形成。今後も続くであろう社会的不安を、コミュニティ内で少しでも軽減させる取り組みを始めた。スポーツで繋がった彼らの、スポーツを超えた絆の実態をKRCリーダーのDuyに聞いた。

--- エイドグループを始めたきっかけは?

「ロックダウンは僕自身のランニング活動や暮らしに影響を与えただけでなく、仲間の経済状況にも大きな打撃を与えていたんだ。KRCには、いろんな社会的背景を持つランナーがいる。観光業やレストラン、ショップで働いていたメンバーは仕事を失くし、支払いの請求書を手に持って呆然としていた。フリーランスのアーティストたちは、撮影や制作をストップせざるを得なくなり不安で頭を抱えていた。

そんな状況を察したKRCメンバーのダニエルが、ランナーを支援するグループを作ろうと提案したんだ。失業した人が少なくない中、幸いにもまだ働けているメンバーも多く、できる限りの支援をしたいと思った。KRCは家族。一緒に走らなくなったからといって、彼らを無視することはできないからね

--- 具体的にどんなことをしているの?

instagramView full post on Instagram

「インスタグラムでメンバーに何らかの形で仲間を支援する意思があるかどうか、また、支援を必要としているかどうかアンケートをとったんだ。すると想像以上に反応が大きかったから、(支援者も援助される側も)匿名で少額の寄付金を募ることに。こういうことが起こるまでは、誰かの悩みや苦しみを本当の意味で理解することはできないからね。集まった寄付金は僕らKRCのリーダーが、責任を持って困っているメンバーに届けたよ。

でもこれはお金の話がすべてではないんだ。お金を受け取ったメンバーは他のメンバーのために、混雑した食料品店に行って食材を調達して家まで届けたり、助け合うサイクルが生まれた。あるときは、外出を不安がっているメンバーのおばあちゃんのために、1人が代わりに用事を済ませたこともあった。

KRCと交流がある地元のレストランと協力して、手頃な値段で食べ物を配ったりもしたよ。これは、何かを必要としている人のためのグループ。ただそれだけ。助けを必要としている人、そしてそれを支援する人が集まるスペースを作れば、すべてがうまく回り出すんだ」

--- エイドグループのメンバーは?

「『KRC CARES』と呼ばれるWhatsAppグループがあって、今は支援者が62人。この活動はロスのすべてのランクラブにまで広がってる。ランニングクルーのコミュニティは小さいうえにとても親密だから、こうしたコミュニティ支援グループが経済的、社会的危機の中で形成されるのは意外とよくあることなんだ」

--- メンバーからの反応は?

「反響は大きく、みんな積極的に協力してくれる。走ることで最高の人たちに出会ってきたのはわかっていたから、僕自身は特に驚きもないかな(笑)。すべてが終わった後、余った支援金はチャリティーに寄付する予定だよ」

ランニングを通して出会った最高の仲間がいるなら、はじめに誰かがプラットフォームを築いてしまえば、あとはその輪が広がっていくだけ。小さいからこそメンバーに浸透するスピードも速いコミュニティは、社会的、経済的困難にも立ち向かうパワーを持っているはずだ。

Headshot of Sawako Motegi
Sawako Motegi
コントリビューティング・エディター

スポーツファッション・サステナブルの記事を担当。山梨県の富士河口湖町へ移住し、オンラインを駆使して取材活動を行う。フェミニズムや環境問題などの時事ネタやニュース、人を掘るのが得意。  2020年までウィメンズヘルス編集部に在籍。