それがウォーキングやランニングでも、ピラティスやヨガでも、はたまたHIITでもワークアウトは私たちの気分と頭をスッキリさせて、最高の状態に保ってくれる。でも、それだけいいなら毎日するべき? その答えは、あなたがどんなオーバートレーニングの対策を講じているかによって変わる。また、ひとことでオーバートレーニングと言っても、具体的にはどこからが“行き過ぎ”になるのだろうか? アメリカ版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。

最初に言っておくけれど、休養日を設けるのはOKどころかとてもよいこと。米国の身体活動ガイドラインによると、成人は週150分以上の中強度の有酸素運動(もしくは週75分以上の高強度の有酸素運動)に加えて、週2回の筋力トレーニングを行うべき。長めのワークアウトを好む人なら、数日でクリアできる目標値。逆に短めのワークアウトを好む人は、より多くの日数をワークアウトに充てることになるので、その努力を無駄にしないための方法を知っておく必要がある。

認定パーソナルトレーナーで、モビリティコーチおよびペインフリー・パフォーマンス・スペシャリストの資格も持つレベッカ・スチュワートによると、毎日のようにワークアウトしたいなら、ワークアウトに対する考え方を変えることも大切。「ジムのハードなセッションで毎回必ず全力を出し、汗をダラダラかいてこそワークアウト。そう思っている人は毎日ワークアウトをするべきではありません。ワークアウトのバラエティは体を休ませるためだけでなく、マンネリ化を防ぐ上でも重要です」

そうは言っても、週あたりのワークアウトの回数は、あなたの目標と(ある程度は)好み次第。ここからはワークアウトを毎日することのメリットとデメリット、そして毎日のワークアウトを安全に行うためのガイドラインを見ていこう。

理想的な運動量とは?

前述の通り、基準となるのは、中強度で150分以上あるいは高強度で75分以上の有酸素運動に加え、少なくとも週2回の筋力トレーニング。「そう書かれると大それた量に思えますが、中強度の有酸素運動の目標は、毎日20分のブリスクウォーキングや週5回30分ずつのウォーキングでもクリアできます」とスチュワート。「そのくらいなら、ランチタイムや夕食後の短い時間でもできそうですよね」

とはいえ理想的な運動量は、あなたの目標次第で変わるもの。スチュワートによると、一般的な目標に応じた理想的な運動量は以下の通り。

減量:あなたの目標が体重を減らすことなら、毎日動くようにして。「週2~3回は筋力トレーニングをして、それ以外の日は他の運動をするようにしてみましょう」と話すスチュワートが他の運動として勧めるのは30~60分の全身ワークアウト。プッシュ系のワークアウトとプル系のワークアウトを交互でしてもいい。それ以外の日は30分のウォーキングやヨガをして。

筋力向上:スチュワートによると、ヘビーなウエイトリフティングで筋力向上を図るときは休養が多めに必要。「重ためのウエイトと軽めのウエイトを混ぜながら、週2~3回はウエイトリフティングをするようにしてください」。それ以外の日は中強度の有酸素運動や低衝撃のワークアウト(ヨガ、モビリティトレーニング、ストレッチなど)でリカバリーを。

筋肥大:スチュワートいわく筋肉を増やしたい人には週2~3回のレジスタンストレーニング(10~15レップスx3~4セット)が必要。筋肥大を目的としたレジスタンストレーニングでは、自重、ケーブルマシンやウエイトマシン、フリーウエイト、レジスタンスバンドなどが使われる。

持久力:スチュワートによると、運動の初心者やブランクがある人は1日10~15分の有酸素運動から始め、少しずつ運動量を増やしながら週150分を目指すといい。できるだけ階段を歩いて上り、ウォーキング、水泳、サイクリング、エリプティカル、ローラーブレード、ダンス、縄跳びなどにトライして。

でも、いまの運動量が自分の体や目標に合っていると言えるのは、どんなとき? 「経験則から言うと、体がしっかり回復していて、疲労や痛みがないときですね」とスチュワート。体の調子がよいのなら、いまの運動量も適切と言えるはず。「1年を通して運動量が変わってもいいですよ。誰にでも忙しい時期はあります。そういうときは体をいたわり、過度の運動でストレスを増やさないようにしてください」

毎日ワークアウトすることのメリット

woman laughing with friends during yoga class
Thomas Barwick//Getty Images

毎日体を動かすという発想にワクワクするかゾッとするかは別として、連日のワークアウトにはかなり大きなメリットがある。

1.座って過ごす時間が減る

米メイヨークリニックによると、成人のほとんどは起きている時間の70%(!)を座って過ごす。これは近年のパブリックヘルスの大きな問題。

パーソナルトレーニングジムFutureのトレーナーで認定ストレングス&コンディショニングスペシャリストのジョシュ・ボノタルによると、毎日なんらかの形で体を動かすようにするのは、この問題を解決する糸口になるし、運動を習慣化するきっかけにもなる。「これで『明日やればいい』と自分に言い聞かせ、運動しないことを正当化する癖もなくなります」。ウォーキングでも筋力トレーニングでも、毎日なんらかの運動をするということは、いまより座る時間が少なくなる(健康になる)ということ。

2.フィットネスの目標を達成する可能性が高くなる

フィットネスの目標を達成する真の秘訣は一貫性。

「毎日トレーニングを続ければ強度と難易度を少しずつ上げていけるので、より大きな成果が得られます」とボノタル。

3.毎日の気分が大幅に向上する

毎日の運動は、体だけでなく心の健康にもよい。認定パーソナルトレーナーで公認管理栄養士のホイットニー・イングリッシュいわく運動は、幸福ホルモンとして知られるエンドルフィンの分泌を促す。「エンドルフィンはストレスと不安の軽減に役立ちます」。運動は、うつ病の治療法として科学的にも注目を浴びている。

日常的な運動はストレス、うつ病、不安障害の症状も和らげる。「ウォーキングやヨガをたった10分するだけで心身の健康状態が大幅に改善されます」とスチュワート。「ただし、運動は従来のメンタルヘルスの治療法に取って代わるものではなく、それを補完するものとして捉えてください。セルフケアのツールの1つですね」

4.思考が明晰になる

米国保健福祉省の調査によって、運動は記憶力と問題解決能力の両方を向上させることが分かっている。神経科学専門誌『Frontiers in Neuroscience』掲載の論文によると、運動はアルツハイマー病のような神経変性疾患の予防に役立つ可能性もある。

スチュワートによると、定期的な運動は活力を高めるため、結果的に思考も明晰になる。「ランチのあとや午後半ばでスランプに陥ったときは、15~20分のウォーキングをすると、コーヒーをガブガブ飲んだときより活力が回復します。ただし、就寝時間が近付いてから運動するのは、寝つきを悪くするのでやめましょう」

5.食生活が改善する

運動と健康的な食生活は密接に関連している。「ワークアウトで自分の健康に意識的な投資をした直後は、チップスをパスして、より健康的なオプションを選ぶ確率が高くなります」とボノタル。

イングリッシュの話では、毎日運動していると食後のお酒や深夜の間食も控えめになる(確かに翌朝も6時から走ると分かっていれば、ワインを2杯も飲む気にならない)。

6.モビリティ(可動性)が高くなる

スチュワートによれば、普段から体を動かしているとモビリティが高くなるので、日中の活動が楽になる。「レジスタンストレーニングは筋力と骨密度の向上に役立ちますが、モビリティトレーニングは加齢に伴うケガや痛みの予防に役立ちます」

実際のところモビリティトレーニングは、誰にでも始めやすく、筋力アップを促進し、ケガのリスクを最小限に抑え、体の痛みと筋肉の緊張を緩和するという最強のメリットを持ち合わせている。

7.よく眠れるようになる

スチュワートによると、適度~それなりにハードな運動(筋力トレーニングでも、有酸素運動でも、その両方でもいい)は睡眠の質と長さを改善する。そして睡眠の質が高くなると、筋肉の回復が促進されて、日常的なアクティビティが楽になる。「体は寝ている間に再生・回復するため、フィットネスの目標を達成するには質の高い睡眠が必要です。運動と睡眠は、持ちつ持たれつの関係にあるということですね」

毎日ワークアウトすることのデメリット

毎日のワークアウトには大きなメリットがある反面、3つの大きなデメリットがあることを覚えておこう。

1.リカバリータイムが足りないと、いつまでたっても結果が出ない

毎日ハードな運動をする気満々でいる人は、認定パーソナルトレーナーのカトリーナ・ピルキントンが言うように「ワークアウトの成果は体が回復するまで現れない」ことを忘れないで。

例えば、筋力トレーニングでは筋組織が分解されるので、そのトレーニングの成果が見たいなら、筋組織を十分(=何日か)休ませて修復させなければならない。そうしないと体がオーバートレーニング状態になり、ワークアウトの効果が下がってしまう(過度の疲労と異常に激しい筋肉痛はオーバートレーニングのサイン)。

2.バーンアウトはリアルな問題

モチベーションがあっという間に下がるのも、トレーニングをしすぎることのデメリット。

ボノタルによれば、毎日同じHIITでは絶対に続かないことを理解してワークアウトの内容に変化を持たせてあげないと、精神的に燃え尽きて、アクティブな生活を続けるためのモチベーションが保てない。運動が続かなければ、当然そのメリットも享受できない。

スチュワートいわく大事なのは、リカバリーの必要性を認識して休養を優先すること。「毎日ワークアウトしなければ大変なことになるという責任感や危機感に駆られ始めたら、ワークアウトの量を減らしたほうがいいでしょう」

3.ケガで先に進めなくなる/動けなくなることも

スチュワートによると、間違ったフォームや偏った手法によるオーバートレーニングは反復性のケガにつながる。また、体を十分回復させてあげないと、極度の疲労、ケガ、オーバーユース(使いすぎ)のリスクが高くなり、足止めを食って目標が遠のくことも。

毎日のワークアウトを可能にするバランスのよいルーティンの築き方

バーンアウトを防ぎ、毎日のワークアウトからよいところだけを取りたいのなら、いつもより戦略的にルーティンを組む必要がある。

低強度:イングリッシュによると、強度が低い運動(ウォーキングやヨガ)は体にストレスを与えないので、毎日しても大丈夫。

高強度:ピルキントンいわくハードな運動を好む人は、強度の高い日と低い日を交互にして、アクティブな生活を続けながらも体を十分休ませるようにするべき。

例えば、月曜日、水曜日、金曜日をHIITにするなら、火曜日、木曜日、週末は低強度のワークアウトだけにする。

ウエイトリフティング:筋力トレーニングでは強度に変化をつけることが重要。ピルキントンによると、フォーカスする筋肉群を日によって変えてあげれば、2日連続で同じ部位を鍛えてしまうこともない。今日が下半身なら明日は上半身といった感じでスケジュールを組めば、疲れた筋肉を休ませている間に別の部位を鍛えられる。

筋力トレーニングと有酸素運動:ボノタルによると、この両方を取り入れたいなら、筋力トレーニングの最後に軽めの有酸素運動をするか、有酸素運動の日を筋力トレーニングの日で挟むか。

有酸素運動:有酸素運動を何日も続けてやるなら強度を変えて。「何日も連続で走りたいなら、1日は長距離にして、次の日はスプリントドリルか短めのインターバルトレーニングにしてみるといいでしょう」とボノタル。

どのアプローチを取るにせよ、毎日のワークアウトを安全に続けるためには、自分の目標に合ったワークアウトを盛り込みつつも、十分な休養とリカバリータイムを確保する必要がある。ボノタルいわく大事なのは、「明日も頑張るために今日を生きる」という考え方を持ち続けること。そうすれば無理をせず、明日に必要な燃料を体の中に残しておける。

オーバートレーニングのサイン

連日のワークアウトで体を追い込みすぎていると、心と体に明らかなサインが現れ、休養が必要なことを知らせてくれる。ボノタルいわく以下のサインが1つでも見られる場合は、ウォーキング、ヨガ、モビリティトレーニングのような低衝撃のワークアウトに切り替えたほうがいい。

1.異常に激しい筋肉痛

ワークアウトで筋肉痛になるのはいたってノーマル。でも、ボノタルによると、その筋肉痛が4~5日たっても引かなかったり、普通に歩き回るのも大変なほどひどかったりするのは、ワークアウトそのものに無理があるから。

イングリッシュいわくケガ(捻挫や肉離れ)も休養やリカバリーが足りないことを示すサイン。

2.生理周期の乱れ

イングリッシュの話では、体に過度の負担がかかると生理周期が乱れることも。ワークアウトを毎日にするのなら、生理周期に変化がないか注意して見ておこう。

3.気分と活力が不安定

ボノタルによると、オーバートレーニングは気分と活力にも悪影響を及ぼす。疲労やイライラが続く場合は、連日のワークアウトに原因があるかもしれない。

4.食欲の変化

ボノタルによれば、食欲のアップダウンもオーバートレーニングのサイン。食欲が全くなくなるのも異常に増すのも、何かがおかしいことを示している。

毎日するのもよさそうではあるけれど、本当に必要なワークアウトの回数は?

前述の通り、米国の身体活動ガイドラインは、健康管理のために週150分以上の中強度の有酸素運動と週2回の筋力トレーニングを推奨している。

イングリッシュによると、毎日欠かさずワークアウトしたい場合は所要時間を1日30分程度に抑えるべき。その一方でボノタルは週4日以上のワークアウトを勧めている。人によって考え方は少しずつ違うけれど、本当に必要なワークアウトの回数を決めるのは、結局のところ個人の目標(とスケジュール!)。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Andi Breitowich and Erin Bunch Translation: Ai Igamoto

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Andi Breitowich

Andi Breitowich is a Chicago-based writer and graduate student at Northwestern Medill. She’s a mass consumer of social media and cares about women’s rights, holistic wellness, and non-stigmatizing reproductive care. As a former collegiate pole vaulter, she has a love for all things fitness and is currently obsessed with Peloton Tread workouts and hot yoga.  

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Erin has over 15 years of experience as a journalist and professional writer. Her words have appeared in Well+Good, The Zoe Report, Brides, HuffPo, InStyle, Nylon, Bustle, Blood+Milk, LALA Magazine, TimeOut LA, HelloGiggles, The EveryGirl, and other outlets. In 2010 she founded—and then sold—Broke Girl’s Guide, a hyper-local lifestyle guide for young women on a budget. More recently, she co-wrote a cookbook for Los Angeles-based vegan restaurant Little Pine to be published in early 2021.
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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。