皮膚科専門医が解説！ 「乾燥肌」と「脱水肌」の違い

肌の状態に関して言うなら、「乾燥」と「脱水」ほど解釈がややこしい用語はないかも。なぜなら、この2つの用語間の線引きが非常に曖昧だから。

「乾燥肌」と「脱水肌」には似た特徴があるものの、根本的な原因が異なる。さらに複雑なのは、乾燥肌と脱水肌に同時になり得ることもあるということ。混乱を招くのは当たり前。

でも、この2つの違いを理解することで、あなたの今後の美容習慣が大きく変わる可能性がある。そこでイギリス版ウィメンズヘルスは、ロンドンを拠点とする皮膚科医のクリスティーナ・ソマダキス博士に、乾燥肌と脱水肌の違いとそれぞれのスキンケアについて詳しく訊いてみた。

「乾燥肌」と「脱水肌」の違いとは？

「まず初めに、"乾燥肌" と "脱水肌" という用語はときに同じ意味で使われ、参考書にある"乾皮症（xerosis）" という用語もまた、両方の意味を指す場合があります」とソマダキス博士。

でも、「美容業界における乾燥肌とは、皮膚を潤す脂質が不足している肌タイプを指す一方で、脱水肌は一時的な肌状態を表し、皮膚の水分が不足していたり、脱水状態にあることを指します」とソマダキス博士は続ける。

「ですが実際には、この2つの用語に重複する部分は多く、乾燥肌になりやすい人はおそらく脂質と水分の両方が不足しているはずです」とソマダキス博士。

「乾燥肌」と「脱水肌」の見分け方

重要なのは、乾燥肌も脱水肌も似た特徴を持つことを理解すること。

「乾燥肌（別名：乾皮症）は触ると肌が乾燥しており、鱗状に見えたり、肌がつっぱったり、かゆみを伴う場合もあります。これは、もとからこのような肌の性質を持つ人もいますし、湿疹や魚鱗癬のような特定の皮膚疾患の症状でもあります」とソマダキス博士。

乾燥肌の他の特徴としては、毛穴が小さい、肌がふっくらして見えない、刺激を受けやすいなどがある。

「肌が脱水状態にある場合は、触った感じではオイリー肌に感じることもありますが、同時に肌がくすんで見えたり、かさついているように感じられるかもしれません」

もっとも分かりやすいのは、脱水肌の場合は製品に含まれるすべての水分を吸収する傾向にあるため、リキッドファンデーションがまだらやムラになりやすいこと。

「脱水状態を調べる際は、ピンチテストを行います。脱水している場合は、前腕の皮膚をつまむと、皮膚が元の状態に戻るまでに時間がかかります」とソマダキス博士。

脱水肌を治すには？

脱水肌を治すために、必ずしも普段より水を多く飲む必要はない。

「肌が脱水状態にあるかといって、必ずしも体全体が脱水を起こしているわけではありません。どちらかと言うと、ほとんどの場合は環境要因や皮膚のバリア機能による問題の結果として、皮膚から水分が蒸発してしまうことが原因です」とソマダキス博士。

「一日に約500mlの水分が皮膚を通じて失われます。皮膚の剥離が正常に行われるには、皮膚の最上層である角質層に約10%水分を含んでいる必要があります」

「この量の水分がなければ、皮膚細胞が適切に分解されず、古い皮膚細胞が剥がれずに蓄積していきます」

脱水肌のお手入れ法

1.　身の回りの環境を整える

「乾燥肌や脱水肌への主な対処法は、肌を悪化させている環境要因を整えることです。もし、乾燥した地域に住んでいたり、暖房が効いた室内で過ごすことが多いなら、加湿器の利用がおすすめです。また、熱いお風呂に長時間浸かるよりも、ぬるま湯のシャワーを短時間で済ませるようにしましょう」とソマダキス博士。

2. 　保湿ケアを強化する

「これがとくに重要です」とソマダキス博士。手っ取り早く肌を潤すお手入れとして、フェイスミストを一日中持ち歩くか、定期的に保湿パックをすることで、肌に素早く水分を補うことができる。

3. 　肌が乾いていない状態で保湿する

肌が湿った状態のうちに保湿するようにすると、肌に潤いを閉じ込め、水分が外に逃げにくくなる。「これを1日に何度か繰り返し続けることが、乾燥肌や脱水肌を改善するうえで役立ちます」

4. 　水分補給を続ける

「水をいっぱい飲むことが脱水肌に有効であるかどうかは未だに結論づけられていませんが、少なくとも十分に水分をとれているかどうか、日頃から気に掛けるようにしてください」とソマダキス博士。

乾燥肌の主な原因は？

「例えば、アトピー性皮膚炎を持つ人のフィラグリン遺伝子の変異など、遺伝的な原因もありますが、環境的な要因が原因である場合もあります」とソマダキス博士。

「例えば、乾燥した地域に住んでいたり、肌の過剰な洗顔や紫外線によるダメージ、暖房などがそうです。また、歳を重ねるごとに皮脂の産生は減少し、皮膚からの水分喪失量が増えるので、皮膚はだんだん乾燥しやすくなります」

乾燥肌に最適なスキンケア成分は？

「乾燥肌を救ってくれる成分は、尿素、グリセリン、ワセリン、セラミド、そして脂質（リピッド）です」とソマダキス博士。これらの成分は肌に潤いを閉じ込め、肌のバリア機能を再構築するのに役立ち、水分が皮膚を通して外に逃げ出すことを防いでくれる。

脱水肌に最適なスキンケア成分は？

「乾燥肌とほぼ同じですが、ヒアルロン酸を加えることができます」とソマダキス博士。ヒアルロン酸は自身の重さの1000倍もの水分を抱え込むことができ、保湿効果はかなり強力。浸透性の度合いがそれぞれ違うため、異なる重さのヒアルロン酸を含む製品を探してみるといい。ヒアルロン酸美容液を使ったあとは、常に保湿剤で蓋をして水分を逃さないようにすることがポイント。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: PERDITA NOURIL　Translation : Yukie Kawabata

Perdita Nouril

Beauty Editor

Perdita Nouril is the Beauty Editor for Women’s Health UK. She has worked in the beauty industry for 15 years since graduating from the University of Nottingham. Adept at exploring the colossal world of beauty, she loves to scratch beneath the surface to debunk the myths, decode the science and challenge traditional notions of beauty. You can always find her preaching sermons on the power of a red lip, extolling the virtues of a decent serum and championing the very best female beauty founders.  
You can find Perdita on Instagram on @perditanouril

川畑　幸絵

翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。