唇が荒れて皮がむけている。乾燥してひび割れが生じている。リップクリームやワセリンを塗ってケアをしても中々回復しない。そんな悩みをもつ人も少なくないのではないだろうか。

死活問題じゃないけれど、唇が荒れるのは楽しくない。乾燥して皮が剥けるどころか血が出た日には、かなり落ち込む。

唇が荒れるのにはワケがある。水分不足、唇の舐めすぎ、塩分の摂りすぎなどの単純な理由ならいいけれど、日焼け、アレルギー反応、皮膚がんなどの深刻な理由の場合は、リップクリームをいくら塗っても治らない。

でも、後者の可能性はかなり低い。「わざわざ皮膚科に行かなくても、唇荒れは大抵数週間で治ります」と話すのは、アメリカのハワード大学とジョージワシントン大学の皮膚科学教授で、美容皮膚科クリニック『Eternal Dermatology + Aesthetics』創設者兼ディレクターのイフェ・J・ロドニー医学博士。また、ドリス・デイ医学博士とアダム・フリードマン医学博士によると、唇は生理学的な化粧の性質が原因で荒れてしまうこともある。

とはいえ、唇が荒れるのは、冬だから乾燥しているだけなのか、そうじゃないのかの見分け方を知っておいても損はない。唇が荒れる最大の原因と、それを早急に治す方法をアメリカ版ウィメンズヘルスからみていこう。

唇が荒れるのはなぜ?

ほとんどの場合は心配無用。唇は、もともと乾燥している。デイ博士によると、唇には脂腺がないので、水分を保つのが難しい。唇にニキビができないのは、これが理由。つまり、脂腺がないということは、皮膚の外層を守るバリア機能である保湿成分が分泌されないということ。

そもそも唇には、外層と呼べるものがないに等しい。フリードマン博士によると、皮膚のほかの部位と違って、唇の大部分には角質層(表皮)がない。「角質層はよろいのようなものです」とフリードマン博士。「脂質、タンパク質、角質が複雑に編み込まれたバリアです」。このバリアには、皮膚を乾燥から守る働きだけでなく、SPF5程度の紫外線防止効果もある。

だから、唇が乾燥したり荒れたりしたときは、重篤な疾患を疑う前に、唇は皮膚のほかの部位よりも敏感で、大抵のカサつきや皮剥けはリップクリームを塗るだけで治ることを思い出して。

生活習慣を少し変えると、唇の状態は2週間ほどで改善する。「それでもよくならないときや状態が悪化する場合には、皮膚科医に相談しましょう」とロドニー博士。出血、大きなヒビ割れ、痛みや炎症、皮剥けが数週間続くときは注意が必要。薬用のリップクリームを使っても治まらず、手で皮を剥いてばかりなら、病院へ行ったほうがいいかもしれない。

とはいえ、唇の皮剥けの原因が乾燥だけとは限らない。食生活から深刻な疾患まで、考えられる原因を1つずつみていこう。

1.塩分や辛いものの摂りすぎ

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JGI/Jamie Grill//Getty Images

プレッツェルやチップスが大好きな人は、それが理由で唇の皮が剥けるかも。デイ博士いわく塩気のある食べもの、とくに外側の塩が唇につくような食べものは、間違いなく唇を乾燥させる。「塩は水を引き寄せるので、唇の水分を吸い取ってしまいます」。辛いスナックも、唇の炎症や乾燥の原因になる。

塩気のあるものや辛いものをしばらく控え、パラフィンワックスのリップクリームを塗ってみて。

2.唇の舐めすぎ

フリードマン博士によると、唇を一番乾燥させるのはコレ。「唾液は、唇の構成要素である脂質、タンパク質、糖質を分解する酵素から成り立っています。唇を舐めるのは、唇を消化するのと同じことです」

唇を舐めるのは即刻やめ、リップクリームを持ち歩き、舐めたくなったらサッとひと塗りしよう。

3.日焼け

先述の通り、唇には紫外線から皮膚を守る外層がないので、SPFリップクリームを塗らずに日差しを浴びれば、唇の皮が剥ける確率は高くなる。「日光は皮膚の水分を奪い、もともと乾燥している部分をさらに乾燥させてしまいます」とデイ博士。皮膚のターンオーバーと再生に日焼けによる炎症が加わって、唇の皮が剥けてしまうこともある。

一般的な日焼けの治療法(アロエや抗炎症薬)は唇の日焼けにも使えるそう。

4.水分不足

close up of young asian woman pouring water from bottle into the glass on a coffee table at home healthy lifestyle and stay hydrated
d3sign//Getty Images

ロドニー博士によると、唇の皮膚細胞はターンオーバーが早いため、体が水分不足のときは一段と乾燥しやすい。室内の乾いた空気が皮膚(唇を含む)の水分を奪う冬はとくに注意が必要。

いまよりも、さらに水を飲むことが大切。アメリカの科学・工学・医学アカデミーによると、女性は液体と食品から1日2.7リットルの水分を摂取するべき。水が一番よいけれど、ほかの飲みものもカウントされる。

5.空気の乾燥

1年中湿度が低い地域に住んでいる人や、季節の変わり目の湿度低下に敏感な人は、空気が乾いているせいで唇が荒れることもある。「とくに冬は空気中の水分が少なくなって、唇が荒れてしまうことがあります」とロドニー博士。

この場合できることは少ないけれど、加湿器を使うのは名案。夜間や冬がラクになる。

6.薬

一部の薬は唇を乾燥させる。フリードマン博士によると、これはニキビ治療薬を使っている人に多い悩み。「アキュテイン(イソトレチノイン)を服用中の患者さんには、唇の荒れが最大の副作用であることを伝えています。また、友達に『どうしたの?』と聞かれるくらい頻繁にリップクリームを使うよう指示しています」

ロドニー博士の話では、過酸化ベンゾイル、レチノール、サリチル酸といったスキンケア成分、 抗生物質、一部の市販の鎮痛剤なども唇を乾燥させる。

治し方としては、服用中の薬に唇を乾燥させる作用があるかを医師に確認。その作用があり、すぐに服用を中止できないときは、リップクリームで対処する。症状が悪化する場合には、病院でアレルギーやほかの疾患でないことを確かめて。

7.酵母菌の異常増殖

受け口の人や睡眠中によだれが出る人は、酵母菌の異常増殖による口腔カンジダ症で唇が荒れてもおかしくない。デイ博士いわく口腔カンジダ症は、口周辺の皮膚の乾燥や口角のヒビ割れを引き起こすことがある。

部位が違っても、カンジダ症には抗真菌薬が一番効果的なので、皮膚科医に相談を。

8.光線性口唇炎

フリードマン博士によると、光線性口唇炎は慢性的に日光を浴びた結果、唇の皮膚が自分で修復できないほどダメージを受けている状態で、高齢者に多くみられる。

このような長期的な紫外線ダメージと炎症は、皮膚がんにつながることも。「乾燥してヒビ割れた皮膚は非常にがんになりやすく、高齢者には下唇の扁平上皮がんが多くみられます」とフリードマン博士。下唇に乾燥やウロコ状の斑がみられるのは、光線性口唇炎のサインだそう。

免疫反応を起こさせる、もしくは損傷した皮膚細胞を破壊する目的で、局所治療や光線力学的療法が用いられるそう。でも、これは病院で皮膚生検による診断を受けてから。

9. ビタミン不足

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Tanja Ivanova//Getty Images

「ビタミンB群が不足すると、唇が乾いたり、割れたり、ヒリヒリしたり、赤くなったりします」とフリードマン博士。ビタミンB不足の場合は、口周辺の湿疹を伴うことが多い。ロドニー博士によると、一番不足しやすいのはビタミンB12。このビタミンは細胞の成長、治癒、ターンオーバーを促すため、不足すると、唇が乾燥して治癒が遅れる。

「ビタミンC不足でも唇は荒れますが、ビタミンCは一般的な食生活から十分に摂取することができるので、不足することは稀です」とロドニー博士。

不足しているビタミンの種類は血液検査で特定可能。必要に応じて、適切なサプリメントが処方される(または食生活の変更が指示される)こともある。ビタミンB12不足は、ビタミンB12かビタミンB複合体のサプリメントで改善を。

10.アレルギー反応または刺激性接触皮膚炎

デイ博士によると、アレルギー反応で唇の皮が剥けたり、周りの皮膚に発赤や腫れが生じることもある。アレルギー反応の場合は大抵、皮膚が乾いて剥がれるというよりむしろ痒くなる。コスメ、スキンケア商品、歯磨き粉の成分が引き金となっていることも。「ケイ皮酸やシナモンの派生物は歯磨き粉によく含まれるアレルゲンで、唇の炎症を引き起こすことがあります」とフリードマン博士。

一方の刺激性接触皮膚炎は、口腔用の金属製装置(リテイナーなど)が唇に擦れて生じる。フリードマン博士いわく金属製の装置やインプラントの複合材は、唇の皮が慢性的に剥ける要因の1つ。通常は、ステロイド外用薬か経口薬で治るはず。

唇の荒れを早く治すには?

その原因が深刻でない(日焼けなどの)ときは、バリアを修復して保湿することが大切。唇を唾液ではなく水で濡らし、何かこってりしたものでコーティングを。フリードマン博士のオススメはパラフィンワックス(温熱効果、トリートメント効果や保湿効果があるワックス)。「パラフィンワックスの小さい缶はいいですね。指でたっぷりすくえますし、持ち運びにも便利です」

SPFリップクリームもオススメ。刺激物やアレルゲンとの接触は可能な限り避けたいので、香料不使用のオプションを。

ロドニー博士によると、以下の成分配合のリップクリームは◎。

・セラミド
・ラノリン
・シアバター
・ビタミンE

また、酸化亜鉛と二酸化チタンを含む商品は、唇を紫外線から守りながら治癒・修復してくれるそう。

ロドニー博士の話では、シュガースクラブ(ブラウンシュガー1:ココナッツオイル0.5のミックス)で角質を除去しても治癒が早まる。「アロエ、ハチミツ、ココアバターのミックスも効果的です。スクラブ後にワセリンかビーワックスを塗ると(アレルギーがない場合)、唇の乾燥が防げます」

リップバームを塗る頻度は?

young woman looking in mirror and applying lip balm
Jamie Grill//Getty Images

フリードマン博士によると、日中は唇を舐めたくなるたびに塗ればいい。夜は寝る前に濃厚なリップクリームを。口呼吸の人や口を開けて寝る人は、空気の行き来で唇がとくに乾きやすい。また、睡眠中の体は大量の水分を失うけれど、リップクリームを塗っておけば唇だけでも乾きにくくなる。ベッドの横に加湿器を置いて、寝室の湿度を上げるのも効果的。

それでも治らないときは?

ロドニー博士によると、唇の荒れは一貫した治療を2~3週間続けないと治らない。ここはひとつ、辛抱強く。

とはいえ、どれだけ生活習慣を改めても改善がみられないときは皮膚科医に相談を。根本的な原因を突き止めて、あなたに合った治療法を提案してくれるはず。

唇の荒れは通常2~3週間でよくなるけれど、症状が悪化するなら皮膚科で根本的な原因を調べてもらおう。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Alexis Jones And Korin Miller Translation: Ai Igamoto