近年、美容業界で注目されている成分といえば「レチノール」。シワやシミ、ニキビの改善に効果を発揮し、肌に輝きを与える “年齢肌のための成分” として人気を博している。とはいえ、スキンケアにレチノールを取り入れるなら、効果や特性、正しい使い方を心得ておくべき。そこで今回はレチノールについて、銀座ケイスキンクリニック院長の慶田朋子先生にお話を伺った。

目次

レチノールにはどんな効果がある?

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レチノールは、ビタミンAの一種(ビタミンA誘導体)。肌のコラーゲンを増やしてハリを与え、肌のコンディションを高めてくれる効果が。その高い美容効果は、ビタミンのなかでも一番と言っていいほど注目されている。

「肌にレチノールを塗ることで抗酸化作用を発揮し、シミ・シワの原因になる酸化ストレスを軽減してくれます。また、表皮ではターンオーバーを促進し、シミの原因であるメラニンの排泄を促し、くすみを改善してくれます。さらに、真皮表層のコラーゲンを増やし、表皮~真皮浅層に厚みを持たせることで、シワの改善にも効果が期待できますよ

さらにレチノールは、ニキビ肌にも効果を発揮するという。

「レチノールには軽いピーリング作用があるので、ニキビの改善にも有効です。毛穴の入り口を詰まりにくくしてくれるので、そもそもニキビができにくくすることができます。ニキビなどの炎症のあとにはメラニンが増えるので、レチノールでターンオーバーを高めておくことでニキビ跡や黒ずみを防ぐこともできます

レチノールクリームの正しい選び方

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化粧品には全成分が表示されているが、一つ一つの成分の濃度はわからない。レチノールが含まれている化粧品を選ぶ際、どのような点に注意すべき?

「レチノールはほかの成分に比べると安定性が悪いので、エアレスポンプチューブなど、空気と触れないような構造になっている化粧品を選びましょう。とはいえ、一度開けたら劣化が始まるので、早めに使い切ってしまうことをおすすめします。また、レチノールを高含有しているものは比較的高価なものが多いので、一つの判断基準にしてもよいかもしれません。また、レチノールの基礎研究をしっかりしている化粧品会社のものを選ぶとよいでしょう」

レチノールの正しい使い方

woman applying moisturizer on face
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シミ・シワの改善だけでなく、 防ぐ効果もあるレチノール。どのようにスキンケアに取り入れればいい?

毎日朝晩、レチノールを含むクリームを塗りましょう。朝は紫外線対策として、夜は代謝を上げるために塗る。朝から抗酸化力を上げておくと、日中の酸化を事前に防ぐことができます。気になる部分にだけ塗る方がいらっしゃいますが、私は顔全体に塗ることをおすすめしています効果はだいたい1〜2週間で実感し始め、くすみ・シワだと3カ月〜半年くらいで効果を感じられる方が多いです」 

レチノールクリームは継続使用することで効果を発揮する

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「レチノールクリームは永続的に塗り続けてほしいアイテム。継続して使うことで、シミやシワができにくくなります。肌のバリア機能が弱い人(レチノイド反応がある人)は最初のうちは低頻度でも効果がありますが、レチノイド反応が出ない人は浸透が悪いので、朝晩塗っていないと効果は感じにくいかもしれません。また、ダーマペンやスポット照射をする予定がある人は、レチノールを塗っておくとダウンダイムが短くなりますよ」

効果の高いレチノールだけど、相性の悪い成分は?

特別相性が悪い成分がないので、一緒に使用をすることを避けるべき成分はありません。逆に、ほかの成分と掛け合わせることで高い効果を発揮します。たとえば、ニキビや肌のゴワつきが気になる方には、+アルファでピーリング効果のある化粧品をおすすめしています。シミ・シワが気になる方には、ルミキシルやハイドロキノンなど、メラニン生成を抑える成分との併用がおすすめです。肝斑が気になる人には、トラネキサム酸で炎症を抑えて、ルミキシルでメラニン合成を抑える。さらに、レチノールで排泄を促してあげるという治療が定番です。あとは、ビタミンCも抗酸化剤として一緒に使用することがおすすめですね」

レチノールの副反応と注意点

肌が敏感な人やレチノールに慣れないうちは、レチノイド反応が出る場合があるので注意が必要。

「レチノールに慣れるまでに時間がかかる人がいます。たとえば、乾燥性敏感肌やアトピーなどがある人は、ゆっくり成分に慣らしていかないと少しカサついたり、ヒリヒリしたりする可能性があります。その場合は、低濃度のレチノールクリームから始めて、徐々に慣らしていく必要が。濃度が低いものから、だんだん濃度の高いものにシフトしていくというステップ制を設けているブランドもあります。また、使い慣れた保湿剤と併用することもおすすめ。当院では医療機関専売の高濃度レチノールクリームを処方していますが、セラミドバリアクリームと11で混ぜて塗ることで、アトピー肌の方でも使用いただいています。肌に塗る直前に保湿剤と混ぜて塗ったり、数日間隔を開けて使用したりするのがよいでしょう」

レチノールは食事からも摂取しよう

giblets of goose on kitchen board
Creativ Studio Heinemann//Getty Images

レチノールはビタミンAなので、食事から摂取することが可能。インナーケア・アウターケア、双方からのアプローチが有効だという。

日本人はビタミンAが不足気味と言われているので、ぜひ食事からも積極的に摂りましょう。ビタミンAは、酸化ストレスを消去してくれます。ビタミンAの含有量がダントツに高いのは鶏や豚のレバーとうなぎ。とはいえ、うなぎは高価な食材なので、普段から取り入れやすいのはレバーかもしれませんね。また、βカロテンは体の中でレチノールに変換されるので、βカロテンが多く含まれる緑黄色野菜も摂りましょう。人参、ほうれん草、ニラ、パプリカ、小松菜、ブロッコリーなど、色の濃いお野菜にβカロテンは多く含まれます。とはいえ、βカロテンのレチノール変換率は低めなので、動物性のものから摂取したほうが効率はいいですね」

食事から摂るのが難しい場合は、サプリメントなどで補うことも一手。肌からも食事からもレチノールを取り入れて、エイジングケアしよう。

慶田朋子

銀座ケイスキンクリニック院長

医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医、日本美容皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会会員。東京女子医科大学医学部卒。同大皮膚科助手を経て、「銀座ケイスキンクリニック」を開設。最新の医療機器と注射によるメスを使わないナチュラルな若返り治療、食と美容、健康などの幅広い知識から、テレビや雑誌、WEBなどで活躍。著書に『365日のスキンケア』(池田書店)や『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)がある。 ウェブサイト: www.ks-skin.com/

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慶田朋子
銀座ケイスキンクリニック院長

 医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医、日本美容皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会会員。東京女子医科大学医学部卒。同大皮膚科助手を経て、「銀座ケイスキンクリニック」を開設。最新の医療機器と注射によるメスを使わないナチュラルな若返り治療、食と美容、健康などの幅広い知識から、テレビや雑誌、WEBなどで活躍。著書に『365日のスキンケア』(池田書店)や『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)がある。  ウェブサイト: www.ks-skin.com/ 

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Kaoru Sawa
ウィメンズヘルス・エディター

美容・ダイエットを中心とした記事を担当。自他共に認める美容マニアで、ハマり症。その気質から、自分が挑戦する取材企画には必ず結果へのコミットにこだわる。男性ライフスタイル誌、女性向けアプリメディアなどを経て、2021年までウィメンズヘルス編集部に在籍。