コロナウイルス感染症の拡大を防ぐには、マスクの着用が絶対不可欠。でも、マスクには残念な副作用がある。それは、口、頬、アゴのラインにできる“マスクニキビ”。
マスクを少し着けただけでも、このニキビは現れる。そして、マスクニキビのリスクが一番高いのは、ピッタリしたマスクを何時間も着けなければならないヘルスケアワーカーたち。
今回は、このマスクニキビの原因と治療法、そして予防法を3人の皮膚科医が教えてくれた。
マスクニキビとは
コロナウイルス感染症のパンデミックによるストレスの増幅は、いうまでもなく既存のニキビや皮膚疾患を悪化させた。でも、顧問皮膚科医で名誉上級講師のファヒーム・ラティーフ医師によると、それに加えて新しいタイプのニキビ、通称“マスクニキビ”が問題となっている。
「マスクニキビは、マスクで閉塞された部位に現れる小さなニキビで、長時間にわたりマスクを着用するヘルスケアワーカーのSNSに何度も登場しています」とラティーフ医師。
マスクニキビを引き起こすマスクの種類
マスクニキビは、医療用マスク、布マスク、紙マスクなど、さまざまな種類のマスクで生じる問題。聞き慣れない言葉かもしれないけれど、ラティーフ医師いわく医療従事者の間では、パンデミックのずっと前から問題になっていた。「マスクニキビは、1日中PPE(個人用防護具)を着けている人や、ヘルメットや野球帽を被るアスリートにもっとも多く見られます。皮膚科医は、この種のニキビを“アクネメカニカ”と呼んでいます」
マスクニキビの根本的な原因
イギリスのヘルスケアクリニック『Bupa UK』の皮膚科医、ステファニー・ムン医師いわく、アクネメカニカは、分厚い布や硬い防具に皮膚が押しつけられることで生じる。「最初のうちは、皮膚がザラザラしたりブツブツしたりする程度かもしれません。でも、アクネメカニカが進行するにつれ、小さな吹き出ものが炎症を起こし、見るからに赤いニキビになります」
その原因はマスクの下の環境にある。マスクの摩擦はスキンバリアを壊してしまう。しかも、マスクのなかは湿度が高い。その環境に汗、皮脂、細菌が閉じ込められたら、ただでさえ弱り気味の肌はどうなる?
「マスクが作り出す閉塞的な環境と酸素不足は、肌の正常な機能を妨げます」と説明するのは、美容皮膚科クリニック『Clinogen Laboratories』設立者で皮膚科医のスジャータ・ジョリー医師。「高い湿度と熱で毛穴が塞がり、皮脂が閉じ込められるため、細菌が増殖し、炎症とニキビが生じます」
ジョリー医師の話では、顔の側面や鼻筋、耳の後ろなど、マスクが圧迫する部位に乾燥性皮膚炎が生じることもあるけれど、この場合の原因は、大抵マスクに使われているゴム。
マスクニキビの治し方
マスクの着用前
マスクニキビは自分で治せることもある。「マスクを着ける前に保湿液やクリームを塗って肌を守りましょう。マスクが圧迫する部位はとくに入念にケアするとよいですよ」とラティーフ医師。
「ニキビができやすい人は、“オイルフリー”、“毛穴を詰まらせにくい”、“ニキビになりにくい”といった言葉が使われている商品を選びましょう。マスク着用の30分ほど前に塗ってあげれば効果が高くなりますし、マスクが滑るのも防げます」
マスクの着用後
マスクを外したら、しっかり顔を洗ってから保湿液を。過酸化ベンゾイルやレチノールといった刺激の強い成分を含む商品は避けるべき。マスクの摩擦と合わさって、肌の炎症を悪化させることがある。
「メイクは肌トラブルを悪化させてしまうので、マスクニキビが治るまでしないほうがいいですね」とムン医師。「布マスクの場合は、香料不使用かつ低アレルギー性の洗剤で頻繁に洗いましょう。他の洗濯ものと一緒にす洗うのは構いませんが、できれば水温を60℃にしてください。それでも治らないときは、皮膚科医に相談しましょう」
マスクニキビの防ぎ方
1.スキンケアを怠らない
「顔は、香料不使用のマイルドな洗顔料とぬるま湯で洗ってください」とムン医師。「指は皮膚を刺激するので、タオルやメッシュのスポンジなど、指以外のなにかを使いましょう」
2.マスクの素材にこだわる
ヘルスケアワーカーはマスクの選択肢が限られている。でも、そうでない人は、できるだけ摩擦の少ないマスクを選んで。素材は重要。肌荒れ対策に焦点を当てるならば、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなどの合成繊維ではなく、水洗い可能なシルクがオススメ。
3.マスクをフィットさせる
「マスクは鼻、顔の側面、アゴの下にぴったりフィットさせましょう」とムン医師。「それで肌トラブルが減ることもあります。マスクがきつすぎたり緩すぎたりすると、肌が擦れてしまいますから」
「フィット感が悪いと、何度も触って直そうとしますよね。洗っていない手でマスクを触ると、そのたびに細菌が手からマスク、マスクから顔に移っていくので、感染症が拡大しやすくなりますよ」
4.水分を補給する
スキンケアとマスクのフィッティングだけでなく、健康全般のケアも必要。「1日中マスクを着けていると大変かもしれませんが、十分な水分補給もマスクニキビを防ぐシンプルな方法の1つです。食生活も健康に」とラティーフ医師。
5.精製糖質と乳製品を避ける
「精製糖質と乳製品は、ニキビを悪化させることが分かっているので避けたほうがいいでしょう」とラティーフ医師。「ストレスと皮膚疾患は密接に関連しています。瞑想、ヨガ、マインドフルネスなど、ストレスと不安の軽減に役立つものならなんでも肌の改善に役立ちます」
6.肌を休ませる
アメリカの皮膚科学会は、4時間ごとに15分マスクを外し、肌を休ませるよう勧めている。もちろんこれは、そうすることが安全な場合に限っての話。ヘルスケアワーカーだけでなく、四六時中マスクを着けている人も検討してみて。
マスクの継続的な着用により、湿疹、乾癬、酒さといった皮膚疾患が悪化することもある。その場合は、かかりつけ医に相談を。
結論
「マスクニキビは比較的新しい問題ですが、コロナウイルス感染症のパンデミックで患者数は急激に増えています」とジョリー医師。「最初はヘルスケアワーカーだけの問題でしたが、一般の人々が長時間マスクを着けるようになったことで症例が増加しました。マスクの着用は“ニューノーマル”の一部ですから、マスクによる肌トラブルの治し方を知っておくことが大切です。いまはとくに、肌を健康な状態に保つことが不可欠ですよ」
※この記事は、『Netdoctor』から翻訳されました。
Text: Medically reviewed by Dr Louise Wiseman MBBS, BSc (Hons), DRCOG, MRCGP and words by Annie Hayes Translation: Ai Igamoto