前回の記事で、頭皮フローラを腸内フローラの関係性について解説し、髪の艶や頭皮のニオイに腸内環境が深く関わっていることがわかった。「食べ過ぎを防ぐことや、食べるものの選択次第で、髪の老化は防げます」と話すのは、東京医科学研究所の代表を務める鈴木奈央子さん。そこで今回は、髪の老化と腸内環境、腸内環境の改善の仕方についてお話を伺った。
老化の鍵を握るのは「細胞」
人間は、膨大な数の細胞からできている。その細胞がさまざまな要因によりダメージを受け、劣化したり、減少したりする。さらに、細胞の生まれ変わりがうまく働かなくなり、健康な細胞が十分に作られないことが老化の最大の要因だという。
「老化や病気を防ぐポイントは、細胞の劣化と減少を防ぐことと、健康な細胞を生み出すこと。その細胞を劣化させたり、減少させたりする最大の要因は“活性酸素”です。それは、髪の老化も同様です。活性酸素は、髪を作る細胞や頭皮の細胞にもダメージを与えます。そのことによって健康な髪を作りだすことができなくなり、白髪や薄毛など、髪の老化につながるのです」
活性酸素と腸の関係
「活性酸素は全身いたるところで発生します。しかし、活性酸素の約9割は腸内で発生するといわれています。圧倒的な割合ですよね。活性酸素は悪玉菌が増殖する際に多量に発生しますが、本来、活性酸素は体内の免疫機能やウイルスなどの感染から身を守るために重要な役割を果たす物質です。しかし、活性酸素が過剰に出てしまうと、さまざまな細胞に悪影響をもたらします。通常、不要な活性酸素は自分自身で作り出す抗酸化物質が抑え込んでいます。しかし、現代社会を生きる私たちのほとんどが、自身が作る抗酸化物質では抑え込めないくらいの活性酸素を過剰に分泌させてしまっているのです」
腸の汚れが活性酸素を発生させる
活性酸素が発生する原因を作る「腸の汚れ」。具体的に腸の汚れを作る原因に、下記が挙げられる。
- 偏った食事(高糖質・高脂質等)
- 食品添加物
- 農薬などの化学物質
- 薬
- 疲労やストレス
- 睡眠不足
- 運動不足
「上記以外にも、紫外線や大気中のガス、直射日光などの影響を受けて活性酸素は発生してしまいます。しかし、一番の要因は食生活。現代の私たちは飽食で、しかも食卓にはさまざまな食品添加物が入った食べ物があふれています。この食生活こそが、活性酸素を発生しやすくしてしまっている大きな原因の一つなのです」
「腸を汚す」食生活とは
- 食べすぎ
「食事を摂りすぎると、食べ物がきちんと消化されず、しっかりと吸収ができません。腸の中に消化されないものが滞留すると、脳が排出する信号を出すことができなくなってしまいます。そこから食べかすの腐敗(悪玉菌の発生)が始まり、腐敗が進むと有害なガスを発生して、悪玉菌が活発化してしまいます。さらにそれが便秘に繋がり、便が滞留することでも悪玉菌が発生します。大切なのは、しっかりと空腹の時間を作ってあげること。また、糖質の摂りすぎにも気をつけたいところです。1日3食、バランス良く食べているつもりでも、ドレッシングなどの調味料や缶コーヒーなどの飲料に含まれている“隠れ糖質”を多量に摂ってしまっている可能性も」 - 早食い
「よく噛まずに食べると、消化吸収されずに腸に食べ物が運ばれてしまいます。これも食べかすの腐敗につながり、活性酸素が発生する原因に。食事をするときはゆっくり、よく咀嚼しましょう」 - 加工食品の摂取
「加工食品などの“自然由来ではないもの”は、消化吸収がしづらいものが多いです。保存料や着色料、人工甘味料などの科学物質の摂取を減らしましょう。加工食品を購入する際は、原材料をしっかりと確認して、自分で選択することが大切。また、加工食品には糖質が多く含まれていることが多いので、糖質量も確認しましょう」
美腸を作って、髪の老化を防ごう
「髪の老化を防ぐには、腸内環境を整えることが大切です。体に良いものをゆっくりと、適量食べることが美腸への第一歩です。また、発酵食品やきのこ類、食物繊維等は、美腸フードなので、積極的に取り入れてみてください。
また、適度な運動や睡眠をしっかりとることも重要です。質の良い睡眠(副交感神経が優位になる睡眠)は、腸の蠕動運動が起きるので、翌朝しっかりと排泄することができます。少しづつ腸内環境を変えて、髪の老化を防ぎましょう!」
1996年 杏林大学保健学部卒業。同年より杏林大学医学部付属病院に勤務。2002年より医薬品の臨床開発業務に従事し、2014年、株式会社東京医科学研究所を設立。2020年1月に書籍『髪も肌もどんどん艶めく腸のお掃除』を発刊。食品の安全性にかかわる研究の傍ら、健康管理士指導員としてエイジングマネジメントに関する講演や執筆活動を通し、予防医学や食育等の普及に努めている。東京医科学研究所では現在、育毛評価試験の育毛モニターを募集中。
美容・ダイエットを中心とした記事を担当。自他共に認める美容マニアで、ハマり症。その気質から、自分が挑戦する取材企画には必ず結果へのコミットにこだわる。男性ライフスタイル誌、女性向けアプリメディアなどを経て、2021年までウィメンズヘルス編集部に在籍。