もし抜け毛や薄毛に悩んでいるなら、それはあなたひとりじゃない。米クリーブランド・クリニックによると、女性の50%以上が人生で一度は著しい抜け毛を経験するという。これを読んでいるあなたも(まだ経験がないなら)、いつかこの問題に直面するときがくるかもしれない。

抜け毛や薄毛がどれほど一般的なことかを知らされたところで、精神的な負担が大きいという事実を変えられるわけではない。髪の分け目が目立ち、ポニーテールの束が細くなり、お風呂での抜け毛が急激に増えると不安やストレスを感じるのは当然のこと。

もしあなたがこのような状況にいるのなら、きっと解決策を探し求めているはず。もちろん治療法はあるけれど、抜け毛は複雑でいろんな要素が絡んでいるため、診断と治療には多くの時間と忍耐力が必要になることを心に留めておこう。とはいえ、抜け毛の原因を理解することで安心感が生まれ、的確な治療プランを立てやすくなるのも事実。

そこで今回イギリス版ウィメンズヘルスは、皮膚科専門医たちの協力を得て、抜け毛のもっとも一般的な原因や治療法の選択肢、自宅で使う製品の選び方や抜け毛を予防するためのアドバイスを総まとめにしたガイドラインを作成した。

このガイドラインを、「抜け毛によるストレスを減らす出発点」と捉えて読んでみてほしい。

抜け毛の正常な量ってどれくらい?

クリーブランドクリニック所属の認定皮膚科専門医、メリッサ・ピリアン医学博士によると、抜け毛は健全なヘアサイクル(毛周期)の一部であることをまずは理解する必要がある。実際には、1日平均100本の髪の毛が自然と抜け落ちる。とはいえ、こうした特定の数字にこだわるよりも、あなたの普段の状態をベースに判断するべき。「抜け毛の量は、浴室に落ちている髪の毛や、ヘアブラシや衣類に付着している髪の毛の量を見ると大体確認できます」とピリアン医学博士。「抜け毛の量が普段より著しく増えたと感じたり、髪の毛が常にあちこち落ちているようなら、なにかしらの問題や異変が起きている可能性があります」

抜け毛の量が正常かどうかわからない? ニューヨーク市の認定皮膚科医であるミシェル・グリーン医学博士は、皮膚科を受診するときに、1日に抜け落ちた髪を集めて持参するように提案している(抜け毛に対して不安を感じたときはいつでも、皮膚科を受診するように)。治療へ進む前に、医師は血液検査を行い、潜在的な医学的問題を排除したうえで、正確な診断をする必要がある。

抜け毛の原因とは?

healthy concept woman show her brush with long loss hair and looking at her hair
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抜け毛の原因はさまざまで複雑だが、専門家いわくもっとも一般的な原因は以下の4つ。

女性型脱毛症

「男性型脱毛症」として知られる「女性型脱毛症(FPHL)」は、研究によると、50歳までに女性の40%が影響を受けている。「慢性的でゆっくり進行が進むタイプの脱毛症です。分け目が広くなったり、頭皮の地肌が透けて見えることを自覚し始めるでしょう。生え際が後退してM字になり始めたと気付く人もいます」とピリアン医学博士。

年齢や遺伝など複雑な要素が関係しているけれど、主な原因はホルモンの変化にあるそう。「テストステロンなど、男性ホルモンのアンドロゲンは更年期周辺で増加する傾向にあり、これらはDHTというホルモンに変換されます。毛包を攻撃するホルモンです」と説明するのは、サンフランシスコにある健康維持機構「カイザーパーマネンテ」の公認皮膚科医で毛髪疾患の専門家であるパラディ・ミルミラニ医学博士。「そのため、通常のヘアサイクルが変わり、成長期が短縮し、毛根が小さくなり、髪の毛の直径が徐々に小さくなっていくのです」

FPHLは加齢と共に発症することが多いが、とくに遺伝的素因を持つ人においてはいつ発症してもおかしくはない。また、ほとんどのFPHL患者は閉経後に発症しているけれど、グリーン医学博士の患者には20代女性もいる。

休止期脱毛症

FPHLは徐々に毛髪が薄くなる特徴を持つが、休止期脱毛症(TE)は突然に起こる一過性の脱毛症。グリーン医学博士いわく、TEは感情的ストレス(別れや愛する人の死など)や身体的ストレス(手術や重篤な病など)を受けた後で発症するケースが大半。具体的に言うと、その出来事が起きて3ヶ月後に髪の毛が抜け始める。原因は明らかではないが、グリーン医学博士が言うには、ストレスホルモンのコルチゾール濃度が高くなることで髪の成長期が短くなり、抜け毛が増えると考えられている。

このタイプの脱毛症を経験しているなら、覚えておくべきポジティブな側面がある。それは、その抜け毛は一時的なものであり、自然に治るということ。髪の毛に影響を及ぼす要因(栄養不足など、これについても後ほど解説!)が他になく、ストレスが慢性的なものでなければ、髪の成長期はいずれ正常に戻り、「数ヶ月ほど抜け毛が起こるかもしれませんが、次第に治まるでしょう」とグリーン医学博士。

休止期脱毛症のもっとも一般的な例のひとつに「産後脱毛症」があり、出産して数ヶ月後に抜け毛が急激に増えたと気付き始める女性は多い。

円形脱毛症

「円形脱毛症は自分の免疫系が誤った信号を送り、自ら毛包を攻撃することで起こる脱毛症です」とミルミラニ医学博士。「原因ははっきり分かっていませんが、遺伝子が関与している可能性があります」。ただし、毛包が攻撃されるとヘアサイクルは休止期に入るので、毛包が永久的なダメージを受けたり破壊されるということはない。要するに、髪の毛はまた生えてくる。

唯一の問題は、それがいつどのようにして起こるのかが完全に不透明であるという点。「円形脱毛症について予測できる唯一のことは、それが予測不可能であることだけなんです」とピリアン医学博士。この症状は理由もなく現れたり治ったりすることがあり、頭皮や体のあらゆる部位にコインほどの大きさの脱毛斑が発生する。円形脱毛症と闘っている人は、抜け毛の塊や多さによって気付く傾向にある。

牽引性脱毛症

ミルミラニ医学博士によると、継続的に髪の毛に緊張や負担をかけると、毛包がダメージを受け、血流や栄養が届かなくなり、最終的には永久的な脱毛となる可能性がある。牽引性脱毛症は、髪型や習慣(三つ編みやポニーテール、エクステなど)によって、継続的に髪に負荷をかけている女性に多くみられる。

1度きりのイベントで髪をきつく結んだくらいでは問題にならないが、繰り返しずっと髪の毛に圧をかけていると、頭皮にダメージが蓄積されるため、牽引性脱毛症を引き起こす。頭皮の生え際や、クリップやローラーを繰り返し使っていた部分の髪が薄くなるケースが多い。そしてもう一つの典型的な兆候が、頭皮の痛み。「頭皮が痛むということは、ヘアスタイルを変える必要があることを示しているサインです」とミルミラニ医学博士。「ハイヒールを履いて足を痛めるようなものです。その痛みを無視して履き続ければ、最終的には外反母趾になります」

抜け毛を防ぐ方法は?

young woman with hand touching her wet, blonde, perfect hair after shower on the white background care about beautiful, healthy and clean hair beauty salon concept side view
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遺伝や年齢、ホルモンレベルを変えることはできないが、完全に制御不能というわけではない。

ヘアスタイルを変える:とくに牽引性脱毛症に関しては、毛根に過度な負担をかけないヘアスタイルに変えるだけで十分効果的。また、染料やパーマ、リラクサーなどで髪に化学的なダメージを与え過ぎないように心がけて。これにより髪の毛は強度を失い、髪を締め付けるヘアスタイルから受けるダメージをさらに受けやすくなる。

定期的にシャンプーする:最近では、髪を頻繁に洗いすぎないように推奨されているが、抜け毛に悩んでいる人にとってはあまり適切なアプローチじゃない。ピリアン医学博士によると、頭皮に油分や汚れ、汚染物質が溜まると毛根が詰まり、髪の毛の成長に影響を及ぼすことがある。刺激の低いマイルドなシャンプーを選んで、定期的に洗髪すること。熱を使うヒートスタイリングを控えることも、ピリアン医学博士いわく、抜け毛を予防する有力な策になる。

ストレス管理をする:具体的なことはさておき、ストレス解消に関しては特別なことをする必要はなく、健康やウェルネスにおける一般的なアドバイスを実践するのがベスト。健康にいいことが髪の健康にもいいのは当然。「できる限りストレス管理と運動を徹底することで、髪の毛を良好な状態に保ち、遺伝的素因や年齢による影響を最小限に抑えることができるでしょう」とピリアン医学博士。
ストレス解消はコルチゾール値の急激な上昇を防ぐことにもなるため、休止期脱毛症の予防にも役立つ。言うほど簡単なことではないけれど、自分に合ったストレス管理法(運動、瞑想、ヨガ、ジャーナリングなど)を見つけることが非常に大切。抜け毛と直接的な関連性を示す研究は今のところないけれど、このような習慣がストレスの緩和に役立つことは有名な話(ある研究は、定期的にヨガをしている人のコルチゾール値が低いことを示している)

栄養に気を配る:ネット上では、どのビタミンが不足すると抜け毛の原因になるかについてよく議論されているものの、はっきりとした答えはない。ビタミン欠乏症(とくにビタミンD、鉄、亜鉛)は確かに抜け毛の一因にはなるが、グリーン医学博士いわく、アメリカの平均的な食事は必要な栄養素のほとんどをカバーできているため、抜け毛の唯一の原因になることはない。ただし、既に女性型脱毛症(FPHL)の素因があるか、他のタイプの脱毛症を経験している場合は、ビタミン不足が抜け毛の状態をさらに悪化させる可能性がある。そのため、抜け毛に悩んでいる人は血液検査を受け、バランスのとれた食事をとり、マルチビタミンを摂取するように専門家たちは勧めている。

最善の治療法とは?

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上述したように、抜け毛に悩んでいる人は認定皮膚科医の専門的な助けを求めることが大切。抜け毛の根本的な原因を特定し、あなたに適した治療プランを導き出すことができるのは専門医だけだから。ここからは、市販薬を含め、抜け毛にもっとも有力な治療法をみていこう。

自宅での治療

抜け毛の効果的な解決策はクリックひとつで手に入る!

1. ミノキシジル外用薬:これは、まさに理想的な特効薬と言っても過言じゃない。「ミノキシジルはFDAが承認した唯一の薄毛治療薬ですが、その正確なメカニズムについては完全に解明されていません」とミルミラニ医学博士。「分かっていることは、血管拡張剤であるということです。もともとは高血圧の治療のために経口薬として投与されており、その副作用が発毛でした」と補足するグリーン医学博士は、毛包への血流増加が関与している可能性を指摘している。ミノキシジル濃度が2%、または5%のものであれば、処方箋なしで入手できる(アメリカ版ウィメンズヘルスが取材した医師によると、濃度が5%のミノキシジルのほうが効果は高い傾向にある)。実際に効果が現れるまでには数ヶ月かかることもあるため、忍耐力と一貫性が必要になる。途中で使用をやめると、新しい髪の毛の成長まで止めることになる。

2.  レーザー育毛器:家庭用レーザー機器の多くは赤色光を利用しており、女性の脱毛症に有効であることを示すデータは複数存在する。これもまた、正確な理由は定かではないが、ある一説ではこれらの機器が抜け毛に関わる酸化ストレスと戦うからだと考えられている(フリーラジカルによるダメージが肌に悪いのと同様に、毛包を傷つけ、健康的な髪の成長に悪影響を及ぼすことがわかっている)。一般的に安全ではあるが、費用がやや高め。研究では、ミノキシジルと組み合わせて利用することで発毛効果が高まることが示唆されている。グリーン医学博士は、1日おきに30分の使用を勧めている。

3.  サプリメント:まずは良質なマルチビタミンを摂ることから。「髪の毛に特化したサプリメントの難点は、高額であるということです」とミルミラニ医学博士。「このようなサプリを服用しても健康に害はありませんが、市販のマルチビタミンでも十分です」 。市販のマルチビタミンを服用して半年が過ぎてもなにも変化がない場合、かつ経済的に余裕がある場合に、より高額なサプリメントを試してみるようミルミラニ医学博士は勧めている。

4.  フケを抑えるシャンプー:フケは出ていないと思っていても、フケが見えていなくても、実際は気付いていないだけということはよくある。フケを防ぐシャンプーは酵母や炎症を抑えるため、抜け毛防止にも有効だという。ある研究では、男性型脱毛症の男性がフケ防止シャンプーを使用したところ、髪の発育が改善したことが報告されている。

クリニックでの治療

それでも改善しない場合は、躊躇せず医師に相談すること。

1.  処方箋が必要な内服薬:内服薬は第一選択の治療であり、低用量のミノキシジル(適応外使用)はもっとも人気の飲み薬。「多くの患者が改善効果を得られるでしょう。なぜならミノキシジルは、酵素によって発毛効果のある物質に変換される必要があり、多くの人の毛根にはこの酵素が存在しているからです」とミルミラニ医学博士。フィナステリドは男性型脱毛症の治療薬としてFDAの認可を受けているが、女性への投与は認められていないため、これも適応外の選択肢。グリーン医学博士いわく、この治療薬が作用する具体的なメカニズムは定かではないが、テストステロンがDHTに変換するのに必要な酵素の働きを阻害することは分かっている(DHTの増加は女性の男性型脱毛症に関連している)。避妊薬と同じくホルモンに働きかけるスピロノラクトンもまた、女性の薄毛治療に用いられる飲み薬。

2.  PRP注射/マイクロニードル:スキンケアでよく話題に上がる多血小板血漿(PRP)は、頭皮にもいい影響を与える。「PRPの中に含まれる成長因子が発毛を促すと考えられています」とグリーン医学博士。頭皮に直接注入する方法と、数千本の微細な針で皮膚に微小の穴を開けて注入するマイクロニードルがある(ミルミラニ医学博士いわくこの理論は、微細な傷が傷の治癒反応を誘発し、髪の再生が促進される)。

今回取材した皮膚科専門医たちはみな、PRP注射がよりよい結果をもたらすことに同意している。グリーン医学博士いわく、月4回の治療を行ったあと、その後の状態に応じて年に1〜2回注射をするのが一般的。それでもなお、飲み薬やミノキシジル外用薬と併用して行うのがもっとも効果的だとされている。「私はいつもミノキシジルとよい経口薬を処方するのが先で、補助的な治療としてPRP注射を追加しています」とミルミラニ医学博士。

3.  植毛手術:これはもっとも永続的な効果を実現できる一方で、それほど単純な選択肢ではなく、どちらかというと男性のための解決策となる傾向にある。植毛を成功させるには十分なドナー(植毛のもとになる髪の毛)が必要であり、ピリアン医学博士が言うには、「男性は通常頭頂部だけが薄くなり、後頭部には髪の毛がしっかりあることが多いけれど、女性は全体的に髪の毛が薄くなるため採取できる髪が少ない」とのこと。とはいえ、移植を必要とするほど重度の薄毛かつ十分にドナーがある人にとっては成功する治療法となる。

まとめ

抜け毛は複雑で、その原因や潜在的な問題は計り知れないほどあり、治療も簡単ではない。まずは、抜け毛の原因を特定することから始めていこう。そのためには、皮膚科専門医に相談することが90%の割合で必要になる。医師は総合的な評価や検査を行い、抜け毛の状態を確認し、家族歴や自分の病歴を考慮したうえで、できる限り早く根本原因に辿り着くことができる。原因さえわかれば、処方薬や自宅で使う製品、病院で受けられる治療など、あなたにとってもっとも効果的な治療法にアクセスできるから。

抜け毛は非常にストレスフルで、感情的な負担が大きいのも事実。でも諦めないで。治療のオプションがこんなにあるのだから。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: MELANIE RUD Translation : Yukie Kawabata

Headshot of 川畑 幸絵
川畑 幸絵
翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。