考えすぎてしまう癖を直すためにはどうしたらいいでしょうか

考えすぎてしまう癖! 私もとてもよく分かります。私自身「治せました」と断言はできませんが、それでも以前の自分と比べるとだいぶ良くなっているので、私なりにお答えさせてください。

まず、考えすぎてしまう癖とは、本来私たちが生まれながらに持っているような癖ではないと思います。考え癖は、学校へ通ったり社会の中で生きる上で身につけたことだと思うのです。あまり考えすぎて悩んでしまうという小さな子どもには会ったことはありませんよね。

それは、考えることは良いことだと教わり続けてきていることを指していると私は考えます。

十代の頃、私は姉に「めいはよくボーッとしてる」とつっこまれていました。それは褒め言葉ではなく、少し馬鹿にされるように指摘されていたと思います。つまり、「ちゃんとよく考えること」が良しとされ、「考えない言動や行動」「衝動で決めてしまうこと」や「考えないでただボーッとしていること」は悪いことだという思想が浸透しているということを表していると思います。

そもそも根底にあるこの背景に気づけていないと、自分の中にもこのような一般論と同じ「考えること=良いこと」「考えないこと=悪いこと」という観念が植え付けられたままになってしまいます。

どんなに考え癖に悩まされ、それを改善しようと努力しても、「実は考えることは良いことで、考えないことは良くないこと」といった観念が潜んでいると、上辺の努力で長く続いている癖を塗り替えることは非常に困難になってしまうのです。

ちなみに、十代の頃、私がよくボーッとしていたのは、両親の離婚を受け、ものすごいショックな時期があったからだと今は分かります。私の心は衝撃を受け、放心状態になることで、その時期を生き延びていたのです。これは、表向き姉に分かることではありませんでしたし、自分自身にとっても、こうして何年も経ち、ヨガや瞑想など、心の荒波を鎮めていくすべを身につけるようになって初めて気づくことができました。

当時の私は、どうしようもなくお手上げでボーッとしていたように思いますが、それは同時に「考えてもどうにもならないこと」に立ち向かう私なりの最善の手段だったのかもしれません。このような過去を踏まえ、次第に私は「考えることが必ずしも最善の方法ではない」と思うようになったのです。そして、瞑想を通して自分の心の動きをよく観察するようになってから、考えることが役立つ時と役に立たない時を明確に区別するようになりました。

例えば、大切な受験があり、それにベストを尽くしたいのなら、よく考えて最善の努力をすることでしょう。勉強したり、復習したり、塾へ行ってみたり、先生や仲間に相談してみたり。模擬テストを受けてみたり、その試験を受けたことのある人の話を聞いてみたり、ネットで調べてみたり。他にできることはないかと、よく考えて全ての手を尽くすことでしょう。それは、役に立つ思考力の使い方です。

しかし、テストを受けた後は結果が出るまで、どんなに考えても、もうできることはありません。この時点ではどんなに考えても全く役に立たない、ただ心配を募らせてしまうだけということ。つまり、この時点では考えることより、考えないでいることの方が賢いのです。

考えることばかりに注力してきた勢いがあると、急に考えをやめることは難しいでしょう。ご質問者の方のおっしゃる通り、ここで「癖」の力が働くからです。

役に立たない思考をやめられないでいるような癖に気づいたら、今度は自分自身の力で選び直して、これまでの流れ(癖)を変えることを選択する必要があります。それは、最初の内は特に、自分で自分自身に反するように感じることでしょう。それでも、これまで考えることばかりを続けてきた自分のマインドと神経システムに、考えないでもいいことの素晴らしさを再教育する必要があるということです。このような癖のパターンを阻止させるアクションのことを、心理学やNLP(神経言語プログラミング)ではpattern-interrupt(パターンインタラプト)と言います。

パターンインタラプトとは、癖の発動に気づいた時に選択的に起こすアクション。いつもの癖の軌道から変化することができるのなら、どんなに小さなことでもOKですが、私自身活用している癖の切り替え術からおすすめしたい3つの方法を以下にピックアップします。

  1. 運動。体を動かすこと。考えがついていけないくらいのスピード感で、少々激しく動かすこと。
  2. 音楽やアート、感性を使うこと。
  3. 自然に還ること。

個人的には、心の癖をパターンインタラプトするすべは、昔おばあちゃんと一緒に見ていたドミノ倒しのコンテストの長く続く制作途中のドミノの列の間に置く“安全牌”のドミノのストッパーのように、勢い余った癖のパターンが始まってしまったのをストップしてキャッチする動作のように考えています。それを有効活用するには、

  1. 見極めの力「この考えは役に立たない」と明らかに見極める
  2. 癖にストップをかける物理的な動作 (パターンインタラプト)
    (個人的には大きな音量で曲をかけて歌うとかシャワーを浴びるのが好きです)そして、
  3. 自ら選んで思考癖のパターンを変えること。何度でも選び直すこと

この三つが必要なステップだと思っています。特に3つ目のステップは当たり前に聞こえて、なかなかグサッとくるものではないかと思います。それだけ、実は多くの方が表面的には「考え癖が辛い、やめたい」と思っていても、深層では「考えることをやめることに恐れ」を感じているのだと思います。

これはなぜでしょうか? ぜひ、あなた自身の本当の答えを探り、解いていただきたいと思いますが、まずはいくつかよくある例を挙げてみましょう。

冒頭に挙げた社会的な一般論に戻ると、まず、「考えることをやめたら馬鹿になってしまうのではないか」「社会から落ちこぼれるのではないか」や「みんなと比べて遅れをとってしまうのではないか」などと言った恐れが挙げられます。これらのものは、当たり前すぎて一見なんとも思われないかもしれません。しかし、本当にパターンインタラプトして癖を変えようとした時に、心の内のフィーリングとしてこのような恐れ顔を出さないか、今一度よく確認してみてください。なぜなら、「考え癖をやめたい!」とどんなに思っても、「考えることをやめてしまったら馬鹿になる」という思想が根深いところで勝っていたら、どんなに表層で感張っても変化は起こらないからです。

では、もしそのような恐れに気づいたら? 

少し不思議に聞こえるかもしれませんが、私は、恐れを潰そうとするのでもなく、消そうとするのでもなく、恐れと交渉することをおすすめします。

考えることを全部やめる訳ではありません。私は、考えることが役に立つ時と、役に立たない時をしっかりと見極め、区別した上で役に立つ思考をちゃんと続けていくから。馬鹿にはならないよ、と。自分の中の恐れの側面を安心させてあげるのです。

それは、見極め力といった新たな形で自分自身への信頼を深めていくことをも意味しています。思考力に振り回されるのではなく、私が思考力を乗りこなし、使いこなすことができる人間なのだ、と、自身の選ぶ力を信頼することです。

思考に翻弄されることなく、思考を選ぶことができるのはマインドフルネスの基本です。気づくことができたところで、このような実践的な知恵がみなさんの暮らしの中で活かされ、毎日を生きやすく、楽しくしてくれることを心より願っております。

皆さんからのご質問は毎月10日頃を目安に @womenshealthjp のインスタグラムのストーリーズで募集中。ぜひフォローしてご質問やお悩みをお寄せくださいね。

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吉川めい
ヨガマスター

MAE Y主宰、ウェルネスメンター。日本で生まれ育ちながら、幼少期より英語圏の文化にも精通する。母の看取りや夫との死別、2人の息子の育児などを経験する中で、13年間インドに通い続けて得た伝統的な学びを日々の生活で活かせるメソッドに落とし込み、自分の中で成熟させた。ヨガ歴22年、日本人女性初のアシュタンガヨガ正式指導資格者であり『Yoga People Award 2016』ベスト・オブ・ヨギーニ受賞。adidasグローバル・ヨガアンバサダー。2024年4月より、本心から自分を生きることを実現する人のための会員制コミュニティ「 MAE Y」をスタート。https://mae-y.com/