私には夢があります。

温め続けて5年目の大きな夢。まだちょっとデリケート過ぎて、今はその内容を公にすることができないのですが、今回は、夢の実現に向かっていく中で誰しもが巡りあう「挫折や失敗に立ち向かうマインドセット」についてシェアしたいと思います。

私は今、この夢に向かって動いていく道のりの中で、数えることさえやめたくなるくらい、何通もの「不採用通知」をもらい続けています。人生一番! と言えるほど丹精込めて作り上げている渾身のプロジェクトで、時間をかければかけるほど磨きがかかっていることも間違いないのですが、それでもまだ私の申請に対して「不採用通知」が返ってくるのです。それだけハードルが高く、狭き門を通ろうとしているとも言えるのですが……不採用通知を受け取った日は、正直さすがに凹みます。

実は今朝も、ここぞとばかりに期待を込めた申請に対して、不採用通知が届きました(二週間もの間、ドキドキしながら待ち続けていたのに!)。それは、前回の不採用から気を改めるよう立て直しの期間を設け、自分なりに最善の準備を行なってから臨んだ久しぶりの申請でした。それでも結果は不採用。これまでの不採用通知の総数を数えたら、そろそろ慣れてきてもいいはずで、最初の頃に比べ、挫折の痛みは減ってきたかも? と思いきや、やはり今日もその打撃はじわじわジクジクと胸の奥まで、時間差で広がっていったのでした。

「ああ。これは失ったモノを嘆くグリーフの気持ちだ」と、認識した私。

しかし、気づくことができたところで、その悔しさと「こうあって欲しかった未来の喪失感」は減る訳でもないし、痛くなくなる訳でもありません。

こんな時、私にできることは「リアルな感情にリアルでいること。それこそ人間なんだから」と、密かに自分を誇りに思い続けること。たったそれだけです。同時に、コテンパンに凹む自分の心を嘆かせてあげることで、心にゆとりを与え、早く立ち直れるよう労ってあげているのでしょう。

世界の成功者たちの話によると、失敗や挫折を受け入れるのは「成功への道のりにおいて重要なスキル」だと言います。

ですが、一見良いこと無しのこのような体験をどうやって受け入れ、一体どうやってスキルに変えていけばいいのでしょうか?

私はよく主宰するVeda Tokyoで行っている『瞑想マインドフルネス』のオンラインプログラムで、参加者のみなさんに「思いっきりバックして高台に上がり、遠くから自分の人生を眺めるように」とか、「思考や感情などの“ミクロ”の体験もすべて、広角レンズで観るように下がって眺めてみましょう」と話します。真摯に願い続けている、自分にとって大切な夢や目標であるほど近視眼になりがちですが、あえて10年、20年といった長い期間で、その失敗や挫折を捉え直してみます。同じように「空間」も、住まいのエリアのみならず、日本全国、そして全世界、地球だけでなく太陽系の惑星のほんの一部として捉え直してみます。すると、自分っていかにちっぽけな存在で、人の人生なんて所詮80億人のうちのたった一つの小さな欠片。そんな人生の中の一つの挫折なんて、塵より小さい、大して意味のない事柄にも思えてきます。

view from above pedestrians crossing street by kids coloring rainbow on sidewalk
Malte Mueller//Getty Images

広い視点から自分の「今」という時の一コマを見直してみると、失敗や挫折、そして数多く続く不採用通知から、失敗に対する新たな5つの観点が浮き彫りになってきました。

1.私が失敗したのは、それだけのことにチャレンジした証拠。

      今回成功できなかったことの自己批判以上に、「それに挑んだ自分って、なかなか素晴らしい生き物かもしれない」と感じる気持ちが芽生えてきました。世界を変えた理論物理学者のアルベルト・アインシュタイン氏はかつて、「挫折を経験したことがない者は、新しいことに挑戦したことが無いということだ」という言葉を残したそうですが、それは彼がいかに挫折を味わい続けたかを物語っているように思えました。

      2. 徐々に、“失敗のプロになっているのかもしれない。

        以前のわたしは失敗する度に「自分が何かおかしいのでは?」と、真っ先に自分を疑いました。今思えばそれは、失敗以前にそもそもの自己価値や自尊心の低さに原因があったと思います。それにしても、自分を厳しく批評したり、卑下することは、怖いぐらい自動的な思考だったように感じます。ニューヨークタイムズ誌のこの記事によると、「なんで私はこんなことを言っちゃったの、こんなことをしてしまったの?」「なんで私はこんなに不安症なの?」などといった考え過ぎの負のスパイラルは、男性より女性に多い傾向にあるそうです。そんな思考パターンの事実を知ったなら、もう少し冷静に自分の思考回路を捉え、そもそもそれは誤っているのかも? と、自分自身の思考を疑えるようにもなってきました。そうして、失敗や挫折を自分の人間性に対する攻撃のように捉えなくなりました。

        3.「今回の件から何をどのように学べるだろう?」と、改善の思考を働かせる

          去年までの私は、不採用通知をもらう度にプロジェクト内容の微調整を繰り返し、さらなるクオリティの向上に徹底して尽くしました。今年に入ってからは、次の申請の前にできる限りの確認を行いたいと考え、第三者を雇い、自分にはない観点でその道のプロに事前評価を依頼しました。評価はとても高く、「これまでに評価対象となった何百名もの提出者の内、トップ2%に入る」という最高なもので、私は多大な勇気をもらい、今回の申請に挑んだのです。それでも届いた不採用。ならば、さらに私がここから学ぶべきことはなんだろう? そうポジティブに探り続けるようになりました。

          4. 失敗とは、自分の信念を確かめるために訪れてくるもの

            自己不信、そして自分を疑う気持ちは、挫折が大きければ大きいほど避けられず、必ずやってくるでしょう。このような思いは、過去の私にブレーキをかけたことが何度もありました。しかし、失敗や挫折は自分のことを疑わせるために訪れるのではなく、失敗を通してでも失せない信念を持っているかを確かめにあるのではないか。そう私は、数々の挫折を通じて感じるようになりました。そう捉えたら、挫折は自分のやる気と想い入れ、そしてプロジェクトの意義に対する信念を確かめ、揺るがないものであるよう深めるためにやってきている、とも思え、むしろ自分を高めるために有効活用するようになりました。

            5. 粘り強さのある根性が鍵を握っている。

              「継続は力なり」と言うけれど、その力を最も発揮できるのは、ほとんどの人が一番辞めたくなる、挫折や失敗の経験の中です。挫折して凹んで、失敗して落ち込んで。傷ついて恥ずかしい思いをする度に、多くの人は辞めたくなるでしょう。辞めたくなるだけでなく「辞めるべきなんだ」と、自分をさらなる傷から守ろうとする思考も働き始めるでしょう。しかし、「持続力」とは、こういった経験を通してこそ発揮される、成功において重要な要素ではないでしょうか。多くの人は、こればかりはあまり見たがらないことですが、世界を率いるビジネス・コーチやサクセス・コーチは、口を揃えて決心を抱き、持続力を育む根性の重要性を、目標達成のために最も確かなアプローチだと主張します。

              ここまで話したなら、一度振り出しに戻って確認すべき大事なことがあります。それは、「そもそもの自分の夢や目標が、そこまでして達成する価値があるかどうか?」といった、基本的な確認です。

              私がこうして不採用通知歴3年目に突入する中、諦めるどころか、なお熱い想いで前を向き続けるのは、自分の夢とその価値をそれだけ信じているからなのです。それは、他の誰にも測ることのできない、分からない、私と私の心の真髄の中で起こる、確かめ合いなのです。また、自分にとってそれだけ価値のある目標だからこそ、繰り返し、目標自体を整え直し続けてきた証だとも言えます。

              友人から教えてもらった、ネイティブアメリカンのトーマス・ワン・ウルフ氏の言葉で、「人はどんなに頑張って欲しいものをゲットしたり、目標を達成しても、“そのもの”によって幸せになることはない」と言う名言があります。

              トーマスさんは、「君が本当に幸せになる時は、君が“なりたい人に自分になった時”だよ」と話したそうです。

              夢や目標を追いかける中で、これは非常に大切なリマインダーです。そんな言葉を思い出したら、今、挫折を飲み込み、自分をコンパッションで抱き、それでも前に進む態度は“夢を達成した後のなりたい自分”に最も近いのかもしれない、とさえ思えてきました。

              夢を通して私が自分自身に示そうとしているのは、自分がいかにして自分自身を信頼して、大きな夢を諦めない、勇敢に、フルに人生を生きる人間であるか。それだけなのかもしれません。

              Headshot of 吉川めい
              吉川めい
              ヨガマスター

              MAE Y主宰、ウェルネスメンター。日本で生まれ育ちながら、幼少期より英語圏の文化にも精通する。母の看取りや夫との死別、2人の息子の育児などを経験する中で、13年間インドに通い続けて得た伝統的な学びを日々の生活で活かせるメソッドに落とし込み、自分の中で成熟させた。ヨガ歴22年、日本人女性初のアシュタンガヨガ正式指導資格者であり『Yoga People Award 2016』ベスト・オブ・ヨギーニ受賞。adidasグローバル・ヨガアンバサダー。2024年4月より、本心から自分を生きることを実現する人のための会員制コミュニティ「 MAE Y」をスタート。https://mae-y.com/