ご質問ありがとうございます。そして、生きづらさを感じているとのこと。辛い中でも、こうしてめげずに新しい糸口を探してくださりありがとうございます。
間接的に聞こえるかもしれませんが、私がヨガや瞑想のトレーニングで学んできた「意識の法則」と「五感の感覚」についてシェアさせてください。まずは2つのパートに分けて解説し、後に合わせていきたいと思います。
① 意識のフォーカスを当てたものが強調される
瞑想やマインドフルネスなどで心の働きを研究していると浮き彫りになる、意識の働きのルールがあります。それは、「意識のフォーカスを当てたものが強調される」ということです。
つまり、人は自分が注意力を向けたものに意識のスポットライトを当てているようなものだ、ということです。意識の焦点を定めたものが大きく見えたり、最も大切なものとして捉えられるのです。この働きを説明する時、私はよく一眼レフカメラを例に挙げます。カメラのレンズを目の前の手に向け、指先にピント(フォーカス)を合わせたら、指や爪、関節の細かな皺や線などがよく見えるでしょう。この時、背景にあるテーブルや床。部屋にある観葉植物などはなくなった訳ではないけれど、ぼやけていて、無いに等しく、大して認知されません。
カメラの向きを変えずに、そのままレンズのピントだけを変えてみたらどうでしょう。そこに映し出されるものは変わらないはずですが、フォーカスの焦点を背景にある植物に当てたら、今度は近くにある手の方がぼやけ、スルーされるように、植物の方が鮮明に認知されます。似たように、人の意識においても、注意力を向け、フォーカスを当て続けたものが強調されるように捉えられるものなのです。
また、意識の作用には「否定形」はありません。だから「そのほくろのことを考えないでね」と言うと、「考えないで」と否定形で言ったにも関わらず、むしろほくろに注意力を向けてしまったことでフォーカスを当て、ついほくろのことを考えてしまうというものなのです。
② 五感には得意・不得意がある
①で挙げたフォーカスの点も踏まえ、私が瞑想やマインドフルネスのプログラムで時折活用する五感についての認識を深めるエクササイズをやってみましょう。読者の皆さんも質問を読んだら目を閉じて想像し、一緒にやってみてください。
まず、あなたが引っ越しを考えているとしましょう。大切な住まいを決める時、間取り図を見て条件的にいいな、と思ったお部屋を初めて内覧しに行きます。
そっと扉を開け、その部屋に一歩踏み入れた時。あなたが真っ先に受け取る印象は、次のうちどれでしょう?
【一緒にイメージしてやってみてください】
- 光と影の様子
- うっすら漂う部屋の匂い
- 部屋の中で聞こえる物音や騒音
- 全般的な空間の雰囲気や空気感
良かったら、パッと入ってくるもの(一番目)とその次(二番目)のものに印をつけましょう。
聴覚がとても敏感だという 相談者さんは、3番の音が優先的に入ってくるのではないかと思います。音の次に自分が注目しやすい感覚は何だかわかりますか? 私は、4の雰囲気や空気感といった、目には見えないけれど肌で感じることのできるものが最も敏感なポイントです。次に、3の聴覚が気になります。
このエクササイズの4つの選択肢は、口に物を入れないとわからない「味覚」以外の五感を表しています。このような質問を検討すると、人は五つの感覚すべてを均等にキャッチしていないということが分かるでしょう。どの感覚が得意で、どれが比較的苦手かには、実は大幅な個人差があるのです。
自分の中でどれに最も敏感か(相談者さんの場合の聴覚や私にとっての触覚)には生まれながらに持っているものがありますから、それを変えようとすることは自分にとって自然な状態と反してしまい難しいでしょう。
しかし、①で挙げたフォーカスの向け方について考慮すると、重心のかけ方を右足から左足に変えてみるように、意識の注意力を向ける比重について舵を握り、そこをシフトすることは今すぐできることなのです。
この時、あなたにとって3番手や4番手だった比較的苦手なところへ変えようとするのではなく、2番目に得意だった五感に注目してみることをおすすめします。それも不快な場合は、他の感覚にシフトするのでも良いでしょう。また、シフトすることが難しい場合は、レンズを思いっきり広角に開くように、思いっきり意識をバックさせて、自分の今いる環境や心持ち。そして時の一コマについても遠目で見るように、意識のフォーカスを一点集中(音ばかりが気になる)から「全体を認知する」に変えてみることは非常に有効な知恵です。
私の場合なら、肌感覚が合わず、心地いいと感じられない空間においては、少しでも和める音はないか、聴覚の方へ意識をシフトしてみるということになります。
実はこれって簡単そうに聞こえて、妙に不慣れに感じることがあるのではないかと思います。人って本当に癖のある生き物で、耳ばかりを気にすることに慣れている人にとって、その注意力を嗅覚にシフトしようとすることは、まったく親しみのない自分にならないといけないことでもあるのです。
食べたくないものを食べないように口を閉じたり、目を閉じたりすることはできるけど、耳や鼻や肌を「閉じる」ことはできません。敏感な方にとっては、これらの五感から入ってくる情報に襲われるように感じられることもあるでしょう。そんな時、もちろんできる限り心地よく過ごせるように、あなたの耳や肌に合った環境を選んでいくことは大切だと私は思います。ですが、どうしようもならない時には、こうして自分が舵を握れることについて選び直すことで、少しでも改善のヒントになったら嬉しいです。
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MAE Y主宰、ウェルネスメンター。日本で生まれ育ちながら、幼少期より英語圏の文化にも精通する。母の看取りや夫との死別、2人の息子の育児などを経験する中で、13年間インドに通い続けて得た伝統的な学びを日々の生活で活かせるメソッドに落とし込み、自分の中で成熟させた。ヨガ歴22年、日本人女性初のアシュタンガヨガ正式指導資格者であり『Yoga People Award 2016』ベスト・オブ・ヨギーニ受賞。adidasグローバル・ヨガアンバサダー。2024年4月より、本心から自分を生きることを実現する人のための会員制コミュニティ「 MAE Y」をスタート。https://mae-y.com/