アーユルヴェーダでは月食・日食を嫌い、「見てはいけない」と言われてきました。
そして日本でも古来では忌み嫌われる現象だったのです。
その理由とは?
「金環皆既月食」とは
2023年4月20日は、めずらしい「金環皆既月食(きんかんかいぎげっしょく)」が起きると言われています。
日食は、月が太陽と地球の間を通過することで起きるもので、太陽・月・地球が一直線になった際に月によって太陽が隠される現象。
部分日食は月が太陽の一部だけを隠すもので、太陽がまるで月のように丸く欠けていくこと。
でも太陽の光はとても強烈なので、一部が欠けただけでは気付く人も少ないのです。
そして金環皆既月食は、太陽のほぼ全体が月に隠れるものの、外側部分が月の周囲でわずかに輝き、まるできらりと輝く指輪のような姿を見せてくれます。
日食は見る場所によってどのくらい深く欠けるかも違い、日食が始まる時刻や一番大きく欠ける時刻、そして日食が終わる時刻も違います。
このリングは今回関東南部から沖縄地方まで見られると予測されています。
アーユルヴェーダでは日食・月食を見るのはNG
数千年前からアーユルヴェーダでは、月食や日食を見るのはよくないこととされてきました。
昔は厳重に家中のカーテンを閉め、動物を納屋にしまい、食材には布をかけ、家の中でじっとしている、あるいは瞑想をし、さらに断食をして過ごしたと言われています。
特に妊婦は悪影響があると言われ、月食や日食の影響が届かないよう守られて過ごしたと言われています。
それは何故なのでしょうか。
理由は通常と違う星の位置になることで地球の磁場が乱れ、いつもとは違う引力が働き、それが私たちの体調や心、自然界や動物にも影響を及ぼすと考えたから。
確かに陽が燦々(さんさん)と降り注ぐところから屋内に入ると、視界も気分も変わりますよね。
それが日食では、あの私たちを支配していると言っていいような大きな存在の太陽が、夕陽や曇空とはまったく違う理由で隠れてしまうわけですから、私たちに作用がないと考える方がおかしいのかもしれません。木陰に入ってくつろぐような気分にはとてもなれないですよね。
日食は消化不良をも引き起こす
アーユルヴェーダでは体内にあるまだきちんと消化されていない食物がそのままになっていると毒素に変わり、病気の元になると考えます。
太陽が隠れる日食のときは、動物たち私たちの体内もざわざわしています。
ざわついた体と心では消化がうまくできるはずはありません。だから昔の人は日食の9時間も前から断食をして、静かに過ごしていたのですね。
日本でも昔は「見てはいけないもの」だった
最近では日食は、なかなか見られない太陽の姿をこぞって見る機会ともなっていますが、日本でも昔は忌まわしいものとされていました。月食も月蝕(むしばむ)と表記されてたことからも、縁起の良いものではないと考えられていたことが伝わりますよね。
源氏物語の一節にも
「今は、入らせたまひね。月見るは忌みはべるものを。あさましく、はかなき御くだものをだに御覧じ入れねば、いかにならせたまはむ」
(もうおはいりあそばせ、月を長く見ますことはよくないことだと申しますのに。それにお菓子すら召し上がらないのですから、こんなことでどうおなりになりますでしょう。以前の悲しいことも私どもにお思い出させになりますのは困ります。おはいりあそばせ)とあり、さらにあの西行法師も皆既月食を和歌に読んでいたそうです。
“忌むといひて 影にあたらぬ 今宵しも
われて月みる 名や立ちぬらむ”
(忌むべきものと言われる月食の月の光にも当たらないようにする今宵、強いて月を見るのはおかしいという評判が立つだろうか?)
見たいけど人の目や噂にされるのが気になる!でも見たい!
といったところでしょうか。
現代の私たちも、穏やかに過ごすのがおすすめ
どんなに時代が流れても、太陽の光を喜び、月に想いを馳せるのは変わらないこと。
そしてその太陽と月の影響を受けて日々生きている私たちに、日食が及ぼす影響は計り知れません。
皆既日食の日は昔の人と自分の体に目を向けて、なるべく家で心静かに過ごしてみましょう。
元コピーライター。南インドやスリランカを数度訪れた後アーユルヴェーダ・ライフスタイルアドバイザーの資格を取得。コスメブランド「ARYURIVST」やレシピとスパイスがセットになった「整えごはん」を立ち上げる。ARYURVISTから、毎日のクレンジングで角質ケアまで叶う“オイルピール クレンズ”新発売!
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