ウィメンズヘルスのインスタアンケートで、セックスに関する悩みを募集したところ、トップ3が「痛い」「イケない」「セックスレス」だった。今回は、これらのお悩みに対し、クリニックで各種治療も行っている泌尿器科医で「女性医療クリニックLUNA」の院長でもある関口由紀先生に解決法を教えてもらった。

お悩み1「セックスが痛い」

いつから痛いかが重要で。セックスを始めた最初から痛いのか、昔は痛くなくて最近痛くなったのかで方法論が違ってくるそう。

「元々痛いという人たちは、性機能障害と言う病気の一つなので、ひどい場合は病院に行った方がいいですね。患者さんとお話をしていると、自分のクリトリスを触れないし、自分の腟に指も入れられないし、マスターベーションもできないと言う人が多いです。これは文化や教育の影響が大きいと思います。前提としてセックスは不自然。自分の体の内部に異物を入れられるということには、恐怖があって不快。でも生殖のためにその怖さを乗り越えていくんです。それを簡単に乗り越えられる人もいれば、そうじゃない人もいます。恐怖を乗り越えるためには練習することが大切です」

一方で、50歳前後で痛みが出てきた場合は、ホルモンの影響があるそう。

「女性ホルモンの量が下がったことで腟が萎縮し、痛みがあるのに無理やりセックスをしたりすると、セックス自体が嫌になってしまいます。その場合は、局所の保湿と骨盤底トレーニングをすることで改善できます。年齢を重ねるとフェムゾーンが乾いてくるので、潤滑ゼリーなどはたっぷり使う方がいいです。それでも治らない人は、良性の炎症生疾患のケースもあるので、病院でみてもらってください。腟周りの異変があったら、まずは運動と保湿とセックス時のジェルの使用。それでも治らなかったら病院へ行きましょう。最近は局所のホルモンも使いますし、レーザー、ハイフ、高周波などで直すこともできます。萎縮した腟をふっくらさせることもできますよ」

また、病院に行くほどではない場合、セルフマッサージも有効だそう。

「自分で触ってみて痛いかどうか、試してみるといいでしょう。痛いのに無理やりされているのを黙っていると、キュッと硬くなってしまうことがあります。ギュッと締めて大きく緩められるのがいい骨盤底の状態。痛い人は筋肉が凝り固まっているケースが多いです。恥骨直腸筋のあたりがしこっているので、フェムゾーンを保湿しながら指を入れて、肛門側の硬くなっている筋肉をマッサージして緩めてあげましょう」

お悩み2「オーガズムを得られない」
痛い、イケない、セックスレスの解消法を女医が解説
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いわゆる「イケない」と言うのは、オーガズムを感じられないと言うお悩み。悩んでいてもなかなか人に相談できないケースも多いのではないだろうか。関口先生によると、セルフプレジャー(マスターベーション)をやってはいけないとか、情報がないという人が多いそう。

「セックスでオーガズムを感じるためには、自分で気持ちがいいところを探して、自分が気持ちいいやり方を知る必要があります。男性は15、16歳でその感覚がわかりますが、女性は35歳とか40歳くらいまでわからない人も多いんですよ。クリトリスはどう触るといいとか、自分でマスターベーションを楽しめない人がセックスを楽しめるわけがないんです」

「クリトリス性感が90%、Gスポット性感が70%、ポルチオ性感は30%の人が感じられるといいます。個人差もありますし、年と共に進化する場合もあるので、まずはクリトリスでオーガズムを感じられるか試してみるといいでしょう。それで感じられればいいんです。尿道のGスポットで感じたい場合は、クリトリスでイキそうになってのからペニスを入れてもらうのを繰り返していると、中でイケるようになるケースもあります。腟の奥にあるポルチオ性感に関しては、イケなくてもいいのですが、女性上位になった方が感じやすいと思います。女性上位だと自分でコントロールしやすいので、上で奥の感覚がわかってくると下でもわかるようになります。ずっと下にいてもわからないかもしれません」

自分自身でどこが気持ちいいのかを研究してわかったら、次に大切なのが相手に伝えること。

「最初の1、2回は相手に任せてもいいと思いますが、慣れてきたら自分がどうしてほしいのかを伝えるべきですね。男性に比べて女性の方が、痛みなくセックスするために時間がかかるものです。時間をかけて前戯をしないと気持ちよくないし、痛みを伴って当然のこと。マスターベーションは肩こり対策にもなるしリラックスできるから、いろいろ試してみるといいと思いますよ」

そして実は、マスターベーションはそれ自体が骨盤体トレーニングになるのだとか。

「瞳孔が開くとか、脈拍が上がると、脳からオキシトシンが出るとか、オーガズムの兆候はいろいろありますが、骨盤底がギュッと閉まるというのもあるんです。マスターベーションをしている人は触っているし動かしているから、年齢を重ねた時に腟萎縮などのトラブルが起こりにくい傾向がありますね」


お悩み3「セックスレス」

特に結婚している夫婦に多いのが、セックスレスの問題。女性側はセックスしたいのに、パートナーが応じないケースも多い模様。

「関係性をなしにするならいいけれど、どちらかがしたい場合は、したいと言った方がいいですね。したくない理由が疲れているからという話をよく聞きますが、それなら疲れていない時にしましょうと、土日などに予定すればいいんです。あとは、どんなカップルでも交際して3年も経つと新鮮さがなくなってしまうので、イベントにするのもおすすめです。ご飯を食べるように毎日セックスする人もいるし、イベント的にしかセックスをしない人もいる。後者はセックスレスになりやすいので、2週間に1回はデートに行くとか、イベントを作る努力をしてみてほしいですね」

もうひとつ、セックスレスのきっかけとして多いのが妊娠出産だ。

「出産前後、子供を産んで2年目くらいまではプロラクチンという乳汁分泌ホルモンが高いので、性的意欲がわかなくても当たり前。子どもが小さいうちはセックスする気が起きないのも普通のこと。よくあるのは、産後に男性側から何回言っても応じなかったことでセックスレスになったという夫婦。でも産後時間が経てば性欲は復活するものなので、産後は性欲がなくなることを伝えた上で、半年ごとくらいに試してみてほしいですね。女性の方も半年前までしたくなくても最近したくなってきたなら言うべきです」

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関口由紀先生
女性医療クリニックLUNAグループ理事長・医学博士

横浜市立大学客員教授、日本泌尿器科学会専門医、日本東洋医学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本性機能学会専門医。女性の泌尿器科治療の第一人者。尿漏れなど相談しにくい部分の悩みを根本から治療するプログラムを提案している。『ちょびもれ女子のための「あ!」すっきり手帖』(主婦の友社)、『女性外来の骨盤底筋トレーニング』(宝島社)など著書も多数。LUNA骨盤底トータルサポートクリニック http://www.luna-clinic.jp

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Kiriko Kageyama
エル・グルメ編集長/ウイメンズヘルス編集長

『エル・オンライン(現エル・デジタル)』のファッションエディターを経て、フリーランスに。女性ランナーによる企画集団「ランガール」を設立。その後女性誌立ち上げやWebメディアの立ち上げを経て2017年にウィメンズヘルス』日本版ローンチ時から編集長に。2023年夏よりエル・グルメ編集長も兼務。趣味は料理を作って友人たちに振る舞うこと。