ホルモンという言葉の語源は、“刺激する/興奮させる”ことを意味する”ギリシャ語の“horman”にある。だから、健康上の問題が生じるたびにホルモンの話になるのも頷ける。

体の一部で作られて他の部位に作用ホルモンは、事実上、伝達係の役目を果たすタンパク質。体内で作られるホルモンは全部で200種類以上あり、私たちの食欲、体液バランス、髪の成長から、性欲、受胎能力、気分に至るまで、ありとあらゆるものを調節している。

このホルモンのバランスが閉経や甲状腺機能低下症で乱れると、さまざまな症状が現れる。例えば、抜け毛。今回は、ホルモンバランスの乱れが原因で髪が抜ける5つのケースを見ていきたい。

1.更年期

閉経前の女性の体内では、テストステロンとエストロゲンのバランスが取れている。でも、閉経によってエストロゲンの量が減ると、テストステロンの相対的効力が増してくる。

テストステロンは、毛包内でジヒドロテストステロン(DHT)という強力なホルモンに変換される。DHTは毛包を不活発にしてしまうので、更年期では髪が細くなったり、抜けたりするという仕組み。

2.ストレス

毛包には、体内でもっとも活発な細胞がある。この細胞は元気な分、酸素、タンパク質、ビタミン、ミネラルをノンストップで必要とする。でも、あなたがストレスを感じると、“戦うか逃げるか”反応の一環として毛包につながる毛細血管が収縮し、本来皮膚に送られるはずの血液が筋肉と脳に送られてしまう。

その結果、頭皮に送られる養分が不足して髪がパサつき、輝きを失うばかりか、ストレス下では毛周期まで変わってしまい、髪が抜けやすくなるというわけ。しかも、メラニン色素の濃い古い毛が先に抜け、メラニン色素の薄い若い毛が残るため、いきなり白髪が増えたような印象に(大きなショックを受けると一瞬で髪が白くなるという逸話も、ここから来ている)。

3.妊娠

妊娠中は成長因子、ホルモン、血流の増加に伴って、髪が増えたり早く伸びたりする人も少なくない。

逆に出産後は、成長因子とホルモンが激減し、毛周期が休止期に入るため、大量の髪が抜けて見るからに薄くなる。

4.甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンは、代謝率と細胞(毛包の細胞も含め)が働くスピードを調節する。そのため、このホルモンの分泌量が少なすぎると髪が乾燥して切れやすくなり、明らかに細くなる。

また、甲状腺ホルモンが不足すると体重も増えやすくなり、体が冷えて気だるくなる。

5.多嚢胞性卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣の中に小さな嚢胞が生じる一般的な女性疾患。嚢胞が生じる理由は解明されていないけれど、その結果ホルモンバランスが乱れて、卵巣で通常以上のテストステロンが分泌される。

テストステロンの量が増えると、オイリー肌になったり、ニキビができたり、顔が毛深くなったり、髪が薄くなったり(女性型脱毛症)するだけでなく、生理が軽くなったり、不順になったり、完全に止まったりすることもある。

どうすればいい?

ホルモンバランスの乱れが原因で髪が抜けているときは、カフェイン配合のヘアケア商品を頭皮に使って。カフェインは毛包に送られる血液の量を増やすばかりか、テストステロンが毛包内でDHTに変わるのも防ぐため、髪が抜けにくくなる。

でも、ホルモンバランスが乱れていると思うなら、まずは医師に相談を。

※この記事は、『Netdoctor』から翻訳されました。

Text: Dr Sarah Brewer Translation: Ai Igamoto