女性の悩み代表にも挙げられる冷え性。

ある調査によると、女性の約7割が冷え性の自覚症状があるという。特に若い世代に多く、夏場でも1割程度の人が冷えを感じるそう。

「冷え性の原因の一つである血流の悪化は末端だけでなく全身で起こり、肩こりや腰痛など様々な不調の原因になります。冷やさない、温めるなど表面的な改善策はもちろん大切なことですが、内側の栄養からその改善に取り組んでいる人は少ないのではないでしょうか」

特に若年層で冷え性に悩む女性はダイエットでカロリーを気にしがち。カロリーは体にとって熱を生み出すエネルギー源なので、その摂取量が少なくなれば体を温める作用が低下するのは当然のこと。

エネルギーを消費する筋肉が少ない上に、噛む回数が少ない糖質に偏った食事。さらには早食いと、冷え性を促進してしまうような三拍子揃った食生活から、まずはタンパク質を十分に摂る食生活に見直してみてほしいと語るのは、パーソナルトレーナーの林健太さん。

「高糖質や高脂質の食事と比べて、高タンパク質な食事は消化吸収などのプロセスで生じる熱である食事誘発性熱産生(DIT)が高くなります。それだけではなくタンパク質は体内で分解されてアミノ酸となり、血液の構成成分となったり水分量の調整を行ったりする重要な栄養素です」

まさに気にするべきは食事に含まれる栄養素。

高タンパク質な食事という習慣的な改善を心がけながら、組み合わせることでさらに冷え性改善に効果を発揮してくれるものを林さんに聞いてみた。

① ビタミンB群

ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換する上で特に大切な栄養素。食事を摂ってもそれがしっかりエネルギーに変換されなければ体も温まらない。ビタミンB2も、糖質はもちろん、タンパク質や脂質にも作用する。

他にもビタミンB12は造血の働きがあり、葉酸は赤血球の生成にも影響するので血流を良くして全身でエネルギーを生み出すためには重要。

ビタミンB群は体内で起こる様々な酵素活性に関わる補酵素として働くため、どれも欠かせない。

「体の中で多くのエネルギーを作り出すことは冷えの改善に直結します。食事量を減らすのではなく、エネルギーに変換されやすい状態を作り出すことが大切です」

まずは手始めにタンパク質が豊富な上にビタミンB1が豊富な脂身の少ない豚肉ビタミンB12が豊富な魚介類を食事の主菜として食事を組み立ててみてはいかがだろうか。

② ミネラル(亜鉛・マグネシウム)

亜鉛やマグネシウムなどのミネラル不足は、ホルモンバランスや生理の関係で男性よりも女性に多い。

貧血なども相まって鉄不足には敏感な女性も多いだろうが、亜鉛やマグネシウムまで注意できている人はどれくらいいるだろうか。

「亜鉛は体温調節にも重要な役割を果たし、鉄と共に不足すると甲状腺ホルモンの分泌低下や腸の温度低下を招きます。マグネシウムは生体内で最も多くの反応に関わる最重要栄養素と言っても過言ではありません。筋肉を弛緩させる働きもあるので、血流にも大きく関係しています」

ミネラルはナトリウムとカリウム、カルシウムとマグネシウムなど対になって体内濃度の均衡を保つようになっているので、何か一つだけを集中的に摂るのではなく、バランスよく摂取できるように注意しておこう。


③ 有酸素運動

当然のことながら運動不足は冷えの大敵。

筋肉量が少ないとエネルギー産生も小さくなるので、タンパク質豊富な食事を摂りながらの筋トレは冷え改善への近道にもなる。

さらには筋トレなどの無酸素運動と合わせて有酸素運動も積極的に取り入れてほしいと林さん。

「筋トレで優先的に使う速筋繊維(白色筋)とは対照的に、有酸素運動で優先的に働く遅筋繊維(赤色筋)は、その色からも分かるように速筋繊維よりも毛細血管が発達しておりミトコンドリアがたくさん存在します」

ミトコンドリアは体の熱産生工場。体温が上がると免疫が上がるのと反対に、体温が下がると免疫も下がるので、ミトコンドリアの働き低下は避けたいところ。

酸素を多く取り込みながら運動を行うことで全身の代謝も向上し、血流アップと共に冷えの改善に一役買ってくれる。

④ オメガ3

オメガ3脂肪酸は血中脂質のバランスや血流を改善すると共に、褐色脂肪細胞の活性化を介して熱の発生を促進する。

脂肪を燃やす脂肪でもあり、他の脂質と比べても食事誘発性熱産生も高く、エネルギー代謝もアップするため、タンパク質との組み合わせは有効だと言える。

「魚介類の摂取量減少によるミネラルやオメガ3脂肪酸の不足は、冷え性の原因の一つではないでしょうか。青魚は豊富なタンパク質に加え、オメガ3も摂取できます。ビタミンB群やミネラルのバランスも加味すると、魚介類全体の摂取は冷えの改善に大きく貢献すると考えられるでしょう」

冷え性は昔からあったものの、冷えで悩む人の増加と低年齢化は、まさに現代病の一種と言っても過言ではないかもしれない。

「冷えは万病のもと」であることを理解して食生活を改善すれば、様々な不調から解放されるだろう。

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/