体の様々な機能を維持していくために必要な5大栄養素と言えば、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル。タンパク質や糖質、ビタミンについては、摂取量を気にしている人も多いけれど、意外と盲点になりがちなのがミネラル。中でも体の代謝を助ける働きもあるマグネシウムが、どんな食材に含まれているのかは、知らない人も多いのでは?

さらに、一般的な栄養成分表示だと、100gあたりのマグネシウム含有量が表示されていることが多く、1食でどれだけの量を摂れるのかはわかりにくいという問題も。そこで今回は、マグネシウムの働きや、一日の推奨摂取量の他、一般的な食事で摂れるマグネシウムの分量が多く、誰でも入手しやすい食材をリストアップ! マグネシウムをしっかり摂りたい時に参考にしてみて。

マグネシウムの働き

マグネシウムは、リンやカルシウムとともに骨を形成するほか、体内のさまざまな代謝を助ける機能を持つ。成人では、体内に約20g~30gが存在し、その約6割はリン酸マグネシウムや炭酸水素マグネシウムとして骨や歯に含まれ、残りは筋肉や脳・神経に存在している。

300種類以上の酵素を活性化する働きがあり、骨の弾性維持、細胞のカリウム濃度調節、細胞核の形態維持に関与するとともに、細胞がエネルギーを蓄積、消費(=代謝)するときに必須の成分でもある。多くの生活習慣病やアルコール中毒の際に細胞内マグネシウムの低下が見られることがわかっており、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温・血圧の調整にも役立っている。


マグネシウムが不足すると?

マグネシウム が豊富な食材リスト
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マグネシウムは筋弛緩や血流を改善する働きがあるため、マグネシウムの不足によって生理痛や緊張性頭痛の悪化から筋肉疲労、便秘まで、あらゆる症状が現れることも。さらにマグネシウムは血糖値を調節したり、神経系を沈静させる働きもあり、欠乏状態に陥ると、大抵の場合はそれが甘いものに対する欲求の引き金となり、不安症や不眠症、抑うつ感につながる恐れもある。

また、マグネシウムが不足すると骨の形成に影響が出るほか、不整脈や虚血性心疾患、高血圧、筋肉のけいれんを引き起こす。

ただし、1日に350mg以上(成人女性の場合)の量を摂取すると、下痢を起こしやすくなることもわかっている。マグネシウムには、大さじ1当たり500mgのマグネシア乳(酸化マグネシウム)が含まれている。マグネシア乳とは、下剤にも使用されている化合物のこと。吐き気や嘔吐などの症状が現れることもある。

1日に必要な量のマグネシウムを摂取するには?

女性が1日に必要なマグネシウムの量は、18歳から29歳で270mg、30歳から64歳までが290mg、65歳から74歳が280mg(男性は340〜370mg)。

マグネシウム豊富な食材を日常的に摂取することでカバーすることは可能だが、不安がある場合にはミネラルウォーターやエプソムソルトの入浴剤を使用したり、サプリメントで補うのもひとつの方法。


マグネシウムを多く含む35の食材


ここからは、 一食で摂れるマグネシウムの量が多い順(一般的な献立の場合)に、マグネシウムを摂取しやすい食材を紹介していく。

玄米

マグネシウム が豊富な食材リスト
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100gあたり49mg(一膳160gあたり78.4mg)。一食で女性が1日に必要なマグネシウムの約4分の1を摂れるので、朝昼晩の3食を玄米にするだけでマグネシウム不足の心配は不要になるはず。玄米は、葉酸、カリウム、ビオチンなど、豊富な栄養が摂れるので、日常的な主食にすると多くのメリットが得られる。

とうもろこし

電子レンジで調理した状態で100gあたり42mgのマグネシウムを含有。とうもろこし1本あたりの可食部は175g程度なので、1本食べると73.5mgのマグネシウムを摂取でき、玄米ご飯に匹敵する量。ただし、エネルギーも1本食べると170kcal程度になるので、食べ過ぎには注意を。


納豆

100gあたり100mgのマグネシウム を含むので、1パックあたりのマグネシウム 量は約45mg。他にもタンパク質16.5g、ビオチン、葉酸、ビタミンKなど多くの栄養を含むので、玄米と組み合わせればかなり栄養価の高い食事が完成する。

豆腐
マグネシウム が豊富な食材リスト:豆腐
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絹ごし豆腐100gあたり50mgのマグネシウムを含有。豆腐製品である生揚げも55mg、油揚げも茹でた状態で59mgとマグネシウムを豊富に含む。豆腐は一丁あたり400g程度あることが多く(地域によって一丁のサイズは異なる)、容易に100gを食べることができるのでおすすめ。

そば

茹でたそば100gあたり27mgのマグネシウム を含有。そば一人前の目安が大体200g程度なので、一食で50mg程度のマグネシウムを摂れる計算に。

ひよこ豆

茹でた状態100gで51mgのマグネシウムを含有。スーパーなどで市販されている小さな缶詰で、大体100g程度なので、1缶食べればマグネシウムもたっぷり摂取できる。

湯葉

生湯葉100gあたり80mgのマグネシウムを含有。スーパーの豆腐売り場などに売っている生湯葉は、豆乳入りで100g程度のものが多い。湯葉部分が半量だとしても40mgのマグネシウムが摂れる。

亜麻仁(フラックスシード)
マグネシウム が豊富な食材リスト:亜麻仁
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炒ったフラックスシード100gあたり410mgのマグネシウムを含有。フラックスシードはスーパーフードとしても注目されており、食物繊維も豊富で便秘に悩む方にもおすすめ。そのままサラダやヨーグルトに振りかけたり、スムージーに入れたり、お手製グラノーラに加えてもおいしい。10gで41mgのマグネシウムを摂れるのは優秀。

昆布

水煮した状態の昆布100gあたり120mg。おでんの昆布で約37gなので、マグネシウム量は40mg程度となる。

あおさ

干した状態100gあたり、3200mgのマグネシウムを含有。味噌汁で食べる場合、1人前あたり約1gなので、味噌汁一杯で32mgのマグネシウムを摂ることができる。

わかめ

マグネシウム が豊富な食材リスト
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100gあたり 1100mg。わかめの味噌汁だと、一食あたり20〜30mg程度のマグネシウムを摂取できる。わかめの酢の物など、わかめをメインとした料理にすればもっと多くのマグネシウムを摂ることも可能。

じゃがいも

蒸したじゃがいも100gあたり24mgのマグネシウムを含有。標準サイズのじゃがいもがひとつあたり100gちょっと。ポテトサラダなどにすると1人でひとつは簡単に食べられるので、マグネシウムを意識するならおすすめの食材。ただし、調理法によってマグネシウムの量は変わり、水で煮ると16mgに減少する。逆に皮付きのまま生から揚げたフライドポテトは29mgのマグネシウム が摂れる。

カツオ

春のカツオで100gにつき42mg、(秋のカツオは38mg)。加工品である鰹節も100あたり70mgのマグネシウムを含む。カツオの刺身一切れが、大体20g前後なので、5切れ食べると42mgのマグネシウムが摂れる。

マグロ
マグネシウム が豊富な食材リスト:マグロ
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天然のマグロの赤身100gにつき45mg、養殖の場合は38mg。ツナ缶などの加工品でもマグネシウム を摂ることができる。

いくら

100gあたり95mgのマグネシウムを含有。筋子になると80mg。いくら丼に乗せる程度のいくらが大体50g程度なので、参考にしてみて。

からふとししゃも

焼いたからふとししゃも100gあたり65mg のマグネシウムを含有。10匹程度入っているパックが大体100gちょっとなので、参考にしてみて。

牡蠣

養殖の生牡蠣100gあたり65mgのマグネシウム を含有。一粒あたりの重さは15〜20g程度なので、3粒食べれば30〜40mgのマグネシウム が摂取できる。

ごま

いりごま100gあたり360mgのマグネシウムを含有。市販の袋入りのいりごまが、一袋90g程度のものが多いので、10分の1袋を使うだけでも36mgのマグネシウムが摂れる。スムージーなどにたっぷり入れるのもおすすめ。

アーモンド

炒った無塩のアーモンド100gに310mgのマグネシウムを含有。アーモンド一粒の重さは1〜1.2gなので、10粒を食べれば31mgのマグネシウムが摂れる計算。

大豆
マグネシウム が豊富な食材リスト:大豆
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茹でた大豆100gあたり66mgのマグネシウム を含有。蒸し大豆だと110mg。市販の缶詰や袋入りの蒸し大豆は、100g〜150g程度のものが多い。その半量を1人で食べたとして、30mg程度のマグネシウムが摂れる。

ルッコラ

生のルッコラ100gあたり46mgのマグネシウム を含有。スーパーで販売している服入りのルッコラの重量が約50g程度なので、1袋サラダで食べると23mg程度のマグネシウムが摂れる計算になる。

オクラ

茹でたオクラ100gあたり51mgのマグネシウム を含有。オクラは1本あたり約10g程度なので、5本食べれば25mgのマグネシウムを摂取できる。

ひじき

乾燥した状態のひじき100gあたりのマグネシウム量は620mg。
戻して煮物などにすると、100gあたり37mgになるので、一食あたりのマグネシウム量は、50g強食べたとして約20mg。食物繊維やカルシウムも豊富。

純ココア

100gあたり440mgのマグネシウムを含有。一杯あたり5g程度を飲んだとして、22mgのマグネシウム が摂れる。ミルクココアの場合は100gあたり130mgと大きく含有量が変わるので、注意して。

きな粉

全粒大豆から作ったきな粉100gあたり240mgのマグネシウムを含有。一般的に販売されている小袋のきな粉が100g程度なので、10分の1袋をスムージーなどに入れると24mgのマグネシウム を摂取できることになる。

南瓜

茹でた南瓜100gあたり24mgのマグネシウム を含有。煮物の南瓜3切で大体100gになる。

生のほうれん草

マグネシウム が豊富な食材リスト
ほうれん草
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100gで69mg、茹でると100gあたりのマグネシウム 量は40mgになる。一食で茹でたほうれん草を100gも食べることはなかなか難しいので、50g食べたとしてマグネシウムは20mg

しらす干し

100gあたり80mgのマグネシウム を含有。釜揚げしらすの場合48mg。市販品1パックが70〜100g程度なので、半パックを食べたとして40mg。4分の1gの場合は20mgのマグネシウム量となる。

干し芋

干したサツマイモ100gあたり45mgのマグネシウムを含有。一般的な干し芋の重さが一枚あたり20g前後なので、2枚食べれば18mgのマグネシウムが摂れる計算。

グリーンピース
マグネシウム が豊富な食材リスト:グリーンピース
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茹でたグリーンピース100gあたり39mgのマグネシウム を含有。冷凍食品を茹でた場合は32mg。参考に、4人分程度のグリーンピースご飯に使用するグリーンピースが100〜150mg。グリーンピースご飯一膳なら15〜20mg程度になる計算。スナップえんどうやさやえんどうなど、緑の豆類は総じてマグネシウム 含有量が多め。

そら豆

茹でたそら豆100gあたり36mg。そら豆1本あたりの可食部の重量は、豆の数によって異なり5〜10g程度。一般的にスーパーで売られている1パックのそら豆の可食部の重量は100g弱であることが多い。

きくらげ

乾燥きくらげ100gあたり210mg。水に戻した状態だと、100gあたり27mgのマグネシウムを含有。卵ときくらげの炒め物などきくらげをしっかり食べるメニューでも摂取できるマグネシウムは10mg程度が目安となりそう。

海苔

100gあたり300mgのマグネシウムを含有。焼きのり1枚が3gなので、1枚あたりのマグネシウムは9mg程度となる。

ケール

生のケール100gあたり44mgのマグネシウムを含有。ケール1枚あたりの重さは、約10g〜15g程度。

パセリ

100gあたり42mgのマグネシウムを含有。こんもり葉がついたパセリ1本で約5g程度なので、10mgのマグネシウムを摂るにはパセリを5本くらい食べる必要がある。

食品以外からマグネシウム を摂取する方法

①エプソムソルトの入浴剤を使う

硫酸マグネシウムが豊富に含まれるエプソムソルトを入れたお風呂に浸かるのも、マグネシウム補給のひとつの方法。週に2〜3回ペースで浴槽にお湯をため、エプソムソルトを1カップ入れて20〜30分浸かるといい。アメリカ・メリーランド大学メディカルセンターの研究によると、硫酸マグネシウム(別名エプソムソルト)をお風呂に入れると、ある程度のマグネシウムが皮膚から吸収されるそう。

②マグネシウム 豊富なミネラルウォーターを飲む

炭酸水やミネラルウォーターを選ぶときは、商品の成分表にマグネシウムの記載があるかをチェックしてみよう。例えば「ゲロルシュタイナー」の炭酸水1ℓには、天然のマグネシウムが100㎎が含まれている。これを飲めば、女性が1日に必要とするカルシウムとマグネシウムの3分の1、男性の場合は4分の1が摂取できてしまう。


参考文献:日本食品成分表2022


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Kiriko Kageyama
エル・グルメ編集長/ウイメンズヘルス編集長

『エル・オンライン(現エル・デジタル)』のファッションエディターを経て、フリーランスに。女性ランナーによる企画集団「ランガール」を設立。その後女性誌立ち上げやWebメディアの立ち上げを経て2017年にウィメンズヘルス』日本版ローンチ時から編集長に。2023年夏よりエル・グルメ編集長も兼務。趣味は料理を作って友人たちに振る舞うこと。