吸収型サニタリーショーツのブランド「Period.」の代表である寺尾彩加さんによる連載、今回は子宮頸がん撲滅のために知っておきたい、HPVワクチンについて。

 皆さんは子宮頚がんについてご存知でしょうか? 2020年11月17日には、WHOが子宮頸がんの撲滅に向け、15歳以下の女子のHPVワクチンの接種率を2030年までに90%にまで高める目標を設定しました。しかし、私たちの暮らす日本では年間約1万人が子宮頸がんを発症し、約3千人が死亡しています。

 他国では「防げるがん」とも言われ、撲滅可能と言われているがんである子宮頚がん、なぜ日本では未だに多くの発症者がいるのでしょうか?

日本においての子宮頚がん

 以前、こちらの連載「こんなに違う、日本と海外の女性の健康施策」でもご紹介した子宮頚がんの発症を防ぐHPVワクチンにより、イギリス、ドイツ、アメリカでは近年、死亡率は減少、発症率も減りつつあり、撲滅できる可能性があると言われています。

 しかし冒頭でご紹介した通り、日本では年間約1万人が発症する病気であり、そのうち約3千人が死亡しているのが現状です。その背景としてHPVワクチン接種の遅れが考えられます。

 2009年に2価、2011年に4価ワクチンが日本で承認され、2013年には予防接種法における定期接種に組み込まれていましたが、接種後の副反応の報道により、70%の接種率から0.6%にまで低下しました。今年7月には子宮頚がんを90%防げると言われる9価ワクチンが正式に日本でも承認され接種することができるようになりました。

子宮頚がんはどうして発症するの?

 子宮頚がんとは、子宮の入り口にできるがんで約95%がHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルス感染によるものです。主な感染経路は性的接触であり、性交渉経験のある女性の50〜80%は感染していると推測がされています。男女問わず感染するウイルスであり、そのうちの一部の女性が将来子宮頚がんなどを発症することになります。

 HPVウイルスに感染してから子宮頚がんに進行するまでは数年から数十年かかると言われており、20代〜40代での発症率が高く、幼い子供をもつ母親が亡くなるケースが多いことから「マザーキラー」とも呼ばれています。

HPVワクチン接種を考えてみる

 よく耳にするワクチン接種後の副反応について、日本産婦人科学会によると、HPVワクチンとの関連は否定されています。接種により一時的に注射部分の痛みや腫れなどの局所症状は約8割の方に生じると言われており、注射時の不安や痛みから失神を起こすなどの反応も報告されていますが、接種後30分程度安静にすることで対応が可能だと言われています。

 9価のワクチンを接種する場合、全3回の接種が必要です。初回接種の2ヶ月後から2回目の接種が可能となり、3回目の接種は初回接種から6ヶ月後から可能です。費用を見てみたところ、全3回で約10万円程度とかなり高額です。しかし、対象が2価か4価にはなりますが、高校一年生までは公費で接種することができます。

 接種ができるクリニックの数は増えており、レディースクリニックだけではなく様々な地域のクリニックで実施されています。

 以前は、性的接触がある前の年齢での接種が推奨されていましたが、9価ワクチンの登場により、アメリカでは9歳から45歳までの男女に推奨されるようになりました。女性だけではなく、男性の接種も一般化しつつあります。

 3回の接種が必要なこと、9価のワクチンにおいては費用も高額なのでなかなか気軽にできるものではありませんが、自分の身を子宮頚がんから守れると考えればどうでしょうか? 正しい知識を身につけて、自分の身を守る最善の選択をしていきましょう。

参考:公益社団法人日本産科婦人科学会「子宮頚がんとHPVワクチン」

http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

取材協力:メディカルパーク横浜院長
順天堂大学医学部産婦人科学教室客員准教授 菊地盤先生


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Kiriko Kageyama
エル・グルメ編集長/ウイメンズヘルス編集長

『エル・オンライン(現エル・デジタル)』のファッションエディターを経て、フリーランスに。女性ランナーによる企画集団「ランガール」を設立。その後女性誌立ち上げやWebメディアの立ち上げを経て2017年にウィメンズヘルス』日本版ローンチ時から編集長に。2023年夏よりエル・グルメ編集長も兼務。趣味は料理を作って友人たちに振る舞うこと。