ヴィーガンにありがちな栄養不足を防ぐには?
ヴィーガンにトライしてみたい全ての人へ。
動物性食品をカットするヴィーガン月間は、欧米で人気のイベント。2021年には英国だけで40万人以上が参加した。乳製品、肉、魚を食生活から排除すれば、1カ月で41,200トン(ロンドンからベルリンまでの飛行機に45,000回乗ったのと同じだけ)の二酸化炭素が削減できるだけでなく、無数の健康効果も得られる。
世界保健機関(WHO)の現在のガイドラインは、「動物性ではなく植物性の幅広い食品をベースとした栄養価の高い食生活」を勧めている。また、プラントベースの食生活は、2型糖尿病の管理を楽にする。今回はイギリス版ウィメンズヘルスより、ヴィーガン生活で起こりがちな栄養不足の予防策についてご紹介。
英国健康・栄養補助食品情報サービス(HSIS)アドバイザーのキャリー・ラクストン博士によると、ヴィーガンの食生活にも危険は伴うという。
「何も調べずにヴィーガンを始める人は多いですが、ただ無計画に特定の食品群をカットするのは理想的ではありません。動物性食品やシーフードのほとんどは、必須栄養素の優秀な供給源ですからね」ラクストン博士。
「ヴィーガン生活を始めた頃は、とても気分が良かったです」と話すのは、栄養士のメイズ・アル=アリ。
「ビタミンとミネラルは最長で1年間体内に貯蔵されるので、ヴィーガンに転向しても支障はないかもしれません。でも、正しい知識を身に付けておかないと、栄養不足になる可能性はありますよ。慢性的な疲労感、めまい、抜け毛をヴィーガンとひもづけて考えたことはありませんでしたが、あとになって、私の体内には鉄、亜鉛、セレン、ヨウ素、オメガ3の量が非常に少ないことを知りました」
もちろん、食事内容を変えたり、サプリメントを飲んだりすれば、デメリットのないヴィーガン生活は続けられる。
ヴィーガン月間を問題なく終えるため、ヴィーガンに不足しがちな10種類の栄養素と、それを不足させないための方法を見ていこう。
1.カルシウム
乳製品がカルシウムの優秀な供給源であることを考えれば当然。カルシウムは健康で丈夫な骨をつくるだけでなく、筋収縮の調節、つまり心拍数のコントロールも容易にする。
対策:野菜専門情報サイト『Discover Great Veg』の栄養士、ピクシー・ターナーによると、カルシウムを豊富に含む植物性食品には、ケール、カーボロネロ(黒キャベツ)、アーモンド、オレンジ、赤インゲン豆、ヒヨコ豆、タヒニなどが含まれる。また、サプリメントメーカー『BetterYou』の栄養エキスパート、キーリー・ベリーいわく、代替ミルクの成分表示は一見に値する。
「カルシウムが強化されたプラントベースのミルクには、カルシウムはもちろん、ビタミンDとビタミンB12も含まれており、コップ1杯で1日の基準値の約35%が摂取できます」
2.ビタミンA
ここのところ体調が悪いのは、免疫力と肌ツヤを支えるビタミンAが不足しているからかも。ビタミンAの主要な供給源は卵、脂の多い魚、ヨーグルト。どれもヴィーガンではNGとされる食材。
対策:ベータカロチンたっぷりの食材を使えばいい。「ベータカロチンは体内でビタミンAに変換されます。植物性の供給源には、緑の葉物野菜、オレンジ色の野菜(ニンジンやサツマイモ)、赤い野菜(パプリカなど)、黄色いフルーツ(マンゴー、パパイヤ、アプリコットなど)があります」とターナー。
3.鉄
鉄は健康な赤血球の産生に欠かせない。でも、英国民食事栄養調査の結果、女性の27%は鉄不足で、貧血のリスクが高い(慢性的な疲労などの症状が出る)。
鉄には、肉や魚に含まれるヘム鉄と、植物性食品に含まれる非ヘム鉄の2種類があるけれど、これまでの研究により、非ヘム鉄は体に吸収されにくいことが分かっている。
対策:ガッカリする必要はない。「鉄を含む植物性の供給源を1食あたり1種類は使ってください」と話すのは、サプリメント販売サイト『Healthspan』認定栄養士のロブ・ホブソン。
「例えば豆類、ナッツ、シード、鉄が強化されたシリアル、豆腐、テンペ、濃い緑色の葉物野菜、ドライフルーツ、乾燥スパイス。ビタミンCの供給源(フルーツ、フルーツジュース、赤パプリカ、ブロッコリー)と一緒に摂れば、体に吸収されやすくなります。お茶を飲みながら食べるのは、鉄の吸収を妨げるのでやめましょう」
4.ビタミンB12
このビタミン不足には自覚症状が伴う。1日に必要な量は、たった2.4mcg。でも、それを下回ると気分の落ち込みや疲労、体の衰弱といった症状が現れる。
「ビタミンB12は神経と血球を健康な状態に保ち、貧血を防ぎます」と話すのは、総合診療医でオンライン血液検査サービス『Medichecks』クリニカル・エクセレンス部門長のナターシャ・フェルナンド医師。
「ヴィーガンのビタミンB12摂取量は、推奨量を7%下回ると言われているので注意しましょう」
対策:「ビタミンB12はサプリメントで補ったほうがいいでしょう。このビタミンを十分に含むヴィーガンの食品は、ビタミンB12が強化された植物性の代替ミルク、一部の大豆製品、シリアルくらいですからね。ニュートリショナル・イーストもビタミンB12を補ってくれますよ」とフェルナンド医師。
5.オメガ3
体内の炎症を減らすオメガ3が“必須”と言われるのは、体内で作られないから。ホブソンいわく一番大事なオメガ3は、脂ののった魚(サーモンなど)に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)。
対策:オメガ3は、栄養士の大半がサプリメントで補うことを勧める成分。
「濃い緑色の葉物野菜、シード、シードオイル、キヌア、ナッツなどの植物性食品には、体内でEPAとDHAに変換されるαリノレン酸が含まれています。こういった食品はオメガ3の優秀な供給源ですが、EPAとDHAに変換されにくいため、ヴィーガン向けのオメガ3サプリメントを摂取したほうがいいかもしれません」とホブソン。
6.亜鉛
ホブソンによると、亜鉛を一番多く含むのは、ヴィーガンが食べられない貝、肉、乳製品。
対策:でも、亜鉛の補給は極めて簡単。シード(種入り)サワードウのアボカドトーストが好きな人なら特に楽勝。「亜鉛を含む植物性の食材は、サワードウ、オーツ、濃い緑色の葉物野菜、レンズ豆、シード、豆腐です」とホブソン。そして、もちろんアボカドも。
「シードはキッチンにストックしておきたいアイテムです。サラダやココナッツヨーグルトにパラパラかければ、それだけで亜鉛の摂取量が増えますからね」
7.コリン
聞いたことがない栄養素?
「コリンは神経系の健康に欠かせません。肝臓は少量のコリンを産生しますが、これだけでは体のニーズを満たせないので、大部分は食事から摂取する必要がありますよ」とターナー。
対策:幸いにも、アブラナ科の野菜(ケール、カーボロネロ、ブロッコリーなど)はヴィーガンでコリンもたっぷり。
8.ヨウ素
前述のHSISの調査結果を見る限り、ヨウ素不足なんて考えたこともない人は多いはず。この栄養素は、正常な甲状腺機能、成長、代謝に必要不可欠。でも、摂りすぎは甲状腺機能障害につながるので要注意。
対策:海藻にはヨウ素が豊富に含まれているけれど、摂取するのは週1回までにしておこう。マルチビタミンか昆布のサプリメントを使うのも◎。
9.ビタミンD
冬のイギリスでは国民の40%に“太陽ビタミン””と呼ばれるビタミンDが不足する。ビタミンDは、たぶん最も過小評価されている栄養素。筋力の維持、体脂肪の削減、免疫力の強化、うつ病リスクの低減に欠かせないだけでなく、2型糖尿病、ぜんそく、多発性硬化症、乳がんの人にも有益だ。
対策:ビタミンDが強化された食品とマッシュルームから、1日に少なくとも10mcgのビタミンDを摂取して。ラクストン博士が言うように、秋冬はサプリメントの摂取も検討しよう。
10.タンパク質
「肉、魚、卵を食べる人には不足する心配がありません。ヴィーガンの食生活では、幅広いタンパク質の供給源から全種類の必須アミノ酸を摂取することが大切です。豆類、ナッツ、シードには、一部のアミノ酸が欠けていますから」とホブソン。
対策:どうすれば全種類のアミノ酸が摂取できるの? ホブソンいわくポイントは、毎食必ず、ナッツ、ナッツバター、シード、豆類といった植物性のタンパク源を摂取すること。
9種類の必須アミノ酸を全て含む食品には、キヌア、そばの実、ヘンプシード、チアシード、豆腐、テンペ、枝豆、クォーン、エゼキエルパン(豆と穀物から作られたエルサレム発祥のパン)などがある。
食事を抜くことに関して
HSISによると、ヴィーガンは食事を週に2.3回抜く傾向にある(ベジタリアンは1.9回)。
「食事を抜くと、栄養不足に陥るリスクが高くなります。ビタミンD、ヨウ素、ビタミンB12、セレン、オメガ3脂肪酸については特に、専門家が注意喚起をしています。それにも関わらずヴィーガンの29%は、マルチビタミンやミネラルのサプリメントを一切飲んでいないことが前述の調査によって分かりました。ヴィーガンの食生活を送るなら、栄養不足の可能性と防ぎ方を理解しておくべきでしょう」とラクストン博士。
ラクストン博士によると、栄養不足を防ぐためには前述のアドバイスに加えて、以下のポイントを抑えておくことが大切。
ヴィーガンに転向するのは、事前調査をしっかりしてから。ヴィーガン向けのウェブサイトで、バランスの良い食生活に向けた食品の選び方を学んでおこう。
ヴィーガンのレシピ本を入手して、新しい料理を試してみよう。
ヴィーガンの定番アイテム(ナッツ、シード、ナッツバター、豆類、ビタミン・ミネラルが強化されたシリアル、スプレッド、代替ミルク)をストックしよう。
「そして、体調不良や極度の疲労を感じたときは、必ず医師か栄養士に相談しましょう」
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。