ダイエット目的で運動を始めるときに水泳を一番に思い浮かべる人は少ない。みんな大抵ランニングや筋力トレーニングを選ぶから。でも、赤十字の水上安全インストラクターで元水泳コーチのステイシー・カプリオいわく「水泳は全身の引き締めやスリムアップにもっとも適した運動の1つ」。確かに水泳では腕と脚を使わないと水面に浮いていられないし、背中の筋肉を使わないと前に進めない。他の種類の有酸素運動(ウォーキングやジョギング)に飽きている人にとっては、ちょうどいい気分転換。

しかも、水泳の恩恵はマイケル・フェルプス級のトレーニングを積まなくても受けられる。ここからは、水泳がダイエットに向いていると言われる所以と泳ぎ方のコツを見ていこう。

水泳がダイエットに役立つ理由

他の有酸素運動と同じく、水泳でカロリーを消費すれば体重が減りやすくなる。また、水の抵抗に逆らって動くためには、地上で行うウォーキングやジョギングよりも筋肉を使う必要がある。

「水泳は上半身、下半身、体幹を同時に引き締める全身運動。ランニングのような有酸素運動よりも筋肉がまんべんなく鍛えられます」とカプリオ。平泳ぎとバタフライでは肩、腕、胸の筋肉が使われて、背泳ぎでは背中、腹筋、大腿四頭筋が使われる。

カロリーの消費量は、筋肉が付けば付くほど増える。同じ30分でも、ブリスクウォーキングでは100kcal、1時間に10kmペースのランニングでは300kcalしか消費されないのに対し、平泳ぎでは約367kcal、クロールでは約404kcalのカロリーが消費されるというから悪くない。

しかも、水泳の脂肪燃焼効果は意外と早く現れる。中年女性が60分の水泳を週3回続けたところ、たった12週間で体脂肪が大幅に減少し、持久力と柔軟性が高くなり、コレステロール値が下がったという研究結果もあるくらい。

水泳でおなか周りの脂肪は減る?

カロリーを消費する運動は、どれも体脂肪の削減に効果的。これには当然おなか周りの脂肪も含まれる。一部の泳法は体幹に特に効き、とりわけクロールのバタ足は下腹部、バタフライキックは腹斜筋を狙い撃ち。運動リハビリテーション誌『Journal of Exercise Rehabilitation』に掲載された2015年の研究結果も、週に3回泳いだ女性は、週に3回歩いた女性より、おなか周りとお尻の脂肪が多く減ったことを示している。

また、水中のワークアウトは衝撃が少ないので、股関節やヒザ、足にやさしい。「水泳は有酸素運動にも筋力トレーニングにもなりますが、ランニングのような地上で行う運動ほど体に大きなダメージを与えません」とカプリオは説明する。

体重を減らすためには、どのくらい泳ぐべき?

これはワークアウトの強度次第。激しく泳げば、1時間で約800kcalのカロリーが消費される。このワークアウトを週4回行えば、1カ月で体重が1.3〜1.8kg減るかもしれない(カロリーを3500kcal燃やせば体重が0.5kg減る計算)。

適度なペースで泳いだ場合は、30分で約250kcalのカロリーが消費される。このワークアウトを週4回行えば、1カ月で体重が0.5kg強減ることになる。

とはいえ、人の体は1つひとつ異なるし、体重が減りやすい人もいれば減りにくい人もいる。運動量が同じだからといって、みんなの体重が同じように減るわけではないけれど、日頃から水泳のような運動をしていれば、健康的な体重を手に入れて維持するのが楽になる。体重を減らしたいなら、1日に1時間ほど中等度~高強度の運動をするようにしてみよう。

水泳ワークアウトとは?

水泳ワークアウトにはレベルがいろいろあるけれど、初心者向けの内容はこんな感じ。

初心者向け水泳ワークアウト:500m

ウォームアップ
25mx4回:25mごとに40秒休む 
片手バタフライで25mx2回:右腕と左腕で2ストロークずつ 
背泳ぎで25mx2回:右腕と左腕で2ストロークずつ 
平泳ぎで25mx2回:1ストロークでキック2回 
クロールで25mx2回 

続いて以下を2セットずつ。2セット目は1セット目よりもペースを上げる(あるいは休憩を短くする)。

50mx1回
25mx2回

水泳ワークアウトの効果を最大限に引き出す方法

本格的に運動を始めるのは少し気が引けるかもしれないけれど、水泳を始めるのは意外と簡単。専門家のアドバイスを参考に、水泳を新しい習慣にしてみよう。

シンプルな泳法から入る。元アメリカ代表の水泳選手ステラ・メツォヴァスによると、平泳ぎとクロールは習得しやすく初心者にも向いている。この2つをマスターしたら、より難易度の高い泳法(背泳ぎやバタフライ)にトライして。

キックボードを使う。股関節が硬い人はキックが大変。水を蹴るたびに痛みが出ることもあるけれど、メツォヴァスいわくキックボードがあれば、ゆっくりと股関節の可動域を広げていける。

ペースを上げる。メツォヴァスによると、ワークアウトの強度を高めてカロリーの消費量を増やしたい人にはインターバルトレーニングがオススメ。最初の25mは全力で速く泳ぎ、次の25mはペースを落としてリカバリー。これを好きなだけ繰り返そう。

息継ぎを意識する。息継ぎの仕方が悪いとリズムに乗れず、あっという間に疲れてしまう。「息継ぎで頭を高く上げすぎると、スムーズに泳げません」とカプリオ。頭を持ち上げるのではなく、口で息が吸えるだけ頭を回す練習を。

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Marygrace Taylor Translation: Ai Igamoto

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Marygrace Taylor
Marygrace Taylor is a health and wellness writer for Prevention, Parade, Women’s Health, Redbook, and others. She’s also the co-author of Prevention’s Eat Clean, Stay Lean: The Diet and Prevention’s Mediterranean Kitchen. Visit her at marygracetaylor.com.
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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。