おなかに脂肪がまったくない人なんて存在しない。でも、食生活や睡眠パターン、運動習慣を変えた記憶が一切ないのに、おなかが突然ぷよぷよになってしまったときは、俗に言う“ホルモン太り”を疑って。ホルモン太りは医学用語じゃないけれど、ホルモンバランスの乱れのせいで腹部の脂肪が増えるのは、医学的にあり得ること。

「ホルモンは、正常な身体機能を維持するために体内を駆け巡るシグナルです」と説明するのは、米ラトガーズ大学ロバート・ウッド・ジョンソン・メディカルスクール内分泌学・代謝学・栄養学部助教授のアヴィヴァ・コーン医学博士。「私たちの体には、あらゆる面(食欲、満腹感、基礎代謝、生殖機能など)で健康を維持するために働くホルモンが備わっています。そのホルモンが多すぎたり少なすぎたりすると、体にさまざまな影響が出て、結果的におなかの脂肪が増えてしまうこともあります」

でも、米オレンジコースト・メディカルセンター付属メモリアルケア外科的ダイエットセンターのメディカルディレクターで肥満外科医のミール・アリ医学博士によると、通常、体重の増加にはホルモン以外の複数の要素が絡んでいる。「どの部位に脂肪が付きやすいかも大きく関係しています。他の部位より腹部に付きやすい人もいますからね」

アリ医師によると、一般的に男性はおなかに脂肪が付きやすいのに対し、女性はお尻や太ももに脂肪が付きやすい。でも、ホルモンバランスの乱れを引き起こす疾患が原因で、意外に女性もおなかに脂肪が付くこともある。

今回はアメリカ版ウィメンズヘルスから、ホルモン太りの4つの原因とおなかの脂肪に対してできるアクションについて見ていこう。

ホルモン太りの要因は?

ホルモンバランスの乱れと、それに伴う体重増加を引き起こす要因は1つじゃない。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、体のニーズを満たすだけの甲状腺ホルモンが甲状腺から分泌されなくなる疾患で、米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)によると以下の症状を引き起こす。

・疲労
・体重の増加
・寒冷不耐

・関節・筋肉痛

・皮膚や髪の乾燥、抜け毛
・生理が重くなる/不順になる
・生殖(受胎)機能の問題

・心拍数の低下

・うつ

コーン博士によると、甲状腺機能の低下は男性よりも女性に多く、代謝率の低下や若干の体重増加を伴うこともある。

クッシング症候群

NIDDKによると、クッシング症候群はストレスホルモンのコルチゾールが過剰に分泌される状態が長く続くことで引き起こされるホルモン障害。100万人に40~70人という非常に稀な疾患で、症状は以下の通り。

・体重の増加
・四肢の痩せ細り

・顔が丸く、膨らんだようになる

・首の付け根の脂肪が増える
・左右の肩の間に脂肪質のこぶができる(野牛肩)

・アザになりやすい

・おなか、胸、お尻、ワキの下に紫色の長い皮膚線条が現れる

・筋肉の衰弱

    閉経

    米国産科婦人科学会(ACOG)によると、閉経は生理が止まり、卵巣でエストロゲンが産生されなくなるライフイベント。「加齢によって女性ホルモンのエストロゲンが枯渇すると、脂肪の代謝が滞り、おなか周りに脂肪が付きやすくなります」とコーン博士。

    米メイヨー・クリニックによると、閉経前後の症状には以下のものが挙げられる。

    ・ホットフラッシュ
    ・睡眠障害

    ・膣の乾燥

    ・生理不順

    ・寝汗

    ・気分のむら

      多嚢胞性卵巣症候群

      ACOGによると、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は生理不順、不妊、肥満、体毛の増加といった症状を引き起こす。アリ医師いわくPCOSはインスリン抵抗性、アンドロゲンというホルモンの増加、生理不順に起因する言われており、腹部脂肪の蓄積の一因となる。

      でも、これだけは覚えておいて。コーン博士が言うように、体重の増加は単一の要因(例:特定のホルモン)で起こることもあるけれど、大抵は食べる量や運動量など多数の要因が組み合わさって起こるもの。

      体重増加の原因がホルモンにあることを確かめるには?

      突然の体重増加がホルモンの仕業かなんて、簡単には分からない。でも、その答えを見つけるための手がかりは身近なところにあるかもしれない。

      例えば、体重の増加に付随するほかの症状。「体重が増えた背景を理解して、場合によっては血液検査を受けてみましょう」とコーン博士。「その結果から、原因と最善の治療法が見えてくることもありますよ」

      一例として、腹部脂肪の増加が甲状腺機能低下症によるものならば、冷えや便秘などの症状も現れる可能性が高い。

      おなか周りに脂肪が付いてしまったら?

      size plus woman looking by reflection in mirror feels frustrated and dissatisfied by overweight
      Photo by Alex Tihonov//Getty Images

      ホルモンだけが原因で腹部の脂肪が増えることは滅多にない。「腹部脂肪の増加は複数の要素が組み合わさって起こるケースがほとんど」とコーン博士。「特定のホルモンが原因のケースは少ないです」

      アリ医師が言うように「おなかの脂肪だけを減らすことは不可能」。おなかの脂肪が増えたからといって、その脂肪だけを減らすことは基本的にできないと思っておこう。

      でも、おなかに脂肪が付いてしまい、その原因がホルモンにあると思うなら、次のアクションを取ってみて。


      医師に相談する
      「腹部に疾患がある場合は、評価と治療が必要です」とアリ医師。ホルモンのせいで増えた脂肪は、治療によってホルモンバランスを整えてからのほうが減らしやすい。

      ・食物繊維の摂取量を増やす
      アリ医師いわく食物繊維は、満腹感の維持とお通じの改善に役立つ。

      ・加工食品を極力控える
      アリ医師によると、カロリーが高い割に栄養価が低い加工食品の食べすぎは、体重増加のもとになる。

      ・カロリー計算をする
      コーン博士によると、カロリー計算は体重を減らすうえで大いに役立つ。「おなか周りに脂肪が付くのは、ほとんどの場合カロリーの摂取量が増えたからです」

      ・定期的に体を動かす
      アリ医師の話では、おなかの脂肪を減らしたいなら、週に少なくとも150分は中等度~高強度のエクササイズを行って、週に2回は筋トレに励むべき。

        腹部脂肪の原因がホルモンバランスの乱れにある可能性はゼロじゃない。でも、それだけが原因であるケースは極めて少ない。「ホルモンが体重増加の一因になることは間違いなくありますが、体重増加の要因はホルモンだけじゃありません」とアリ医師。体重の増加には「食生活と運動も大きく関係しています」

        それでもやはりホルモンが怪しいと思うなら、医師に相談してみよう。

        ※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。  

        Text: Korin Miller Translation: Ai Igamoto

        Headshot of Korin Miller
        Korin Miller
        Korin Miller is a freelance writer specializing in general wellness, sexual health and relationships, and lifestyle trends, with work appearing in Men’s Health, Women’s Health, Self, Glamour, and more. She has a master’s degree from American University, lives by the beach, and hopes to own a teacup pig and taco truck one day.