フィットネスの世界には、「すべきこと」「すべきでないこと」について不確かなアドバイスをする“専門家”が数多く存在する。

そのため、インスタグラムの“有名トレーナー”があるアドバイスをし、ウェルネスの“第一人者”が別のアドバイスをするという状況下で、真実を見極めるのはなかなか難しいもの。これにはがっかりさせられるだけでなく、自身の健康に影響を及ぼす可能性もあるので注意が必要。

そこで、最大限の効果を得るために、エクササイズにまつわるよくある誤解をピックアップし、信頼できる専門家にその真相を聞いた。

beautiful young sports lady doing push ups while workout at home
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1. ウエイトトレーニングより有酸素運動の方が重要?

これは実は間違いで、どちらも同じくらい重要。有酸素運動は、心臓を鍛え、血圧を下げ、血糖値をコントロールし、頭脳を明晰にし、気分をよくし、安眠をもたらす。さらに、筋力トレーニングと組み合わせることでより効果が高まるとか。

また、シカゴの統合医療機関「Shift」の創設者兼CEOであるアリ・レヴィ医学博士によると、ウエイトリフティングは、骨を強化し、怪我のリスクを減らし、姿勢を守るのに役立つ。また、筋肉をつけることで代謝を高めることができると言う。

young female athlete lifting kettle bell while crouching in gym
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これには、研究者が「ゴルディロックス・ゾーン」と呼ぶエクササイズがおすすめ。中強度の有酸素運動(会話はできるが、歌は歌えないぐらいの強度)を週に150分、もしくは、強めの有酸素運動を週に75分と、週に2回以上の筋力強化エクササイズを組み合わせるのが効果的。

2. 腰痛があるときはトレーニングをしてはいけない?

エクササイズによって、慢性的な腰痛(または肩、腰、膝の痛み)が改善されることは多く、エクササイズをすることで血液や栄養、潤滑液が患部に行き渡り、凝りをほぐして治癒を早めることができる。

レヴィ博士いわく、「運動はローションになり、休息はサビになる」とのこと(米国リウマチ学会も、関節炎の痛みを和らげるために、定期的に体を動かすことを推奨している)。

midsection of woman suffering from backache while sitting in gym
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ただし、これは慢性的な痛みについての話で、急性の怪我の場合、専門医の診断を受けて重症ではないことを確認する必要がある。この場合は、1日程度の安静を求められることが多いが、通常の怪我であれば、内科医や理学療法士に相談し、安全で効果的な運動プランを立ててもらうのがおすすめ。

3. トレーニングは毎日行うべき?

怪我をせず、強い筋肉を作るためには回復が不可欠。筋トレ後の筋肉は、筋線維が破壊されて消耗した状態になっているため、週に1、2回の休息日を設け、筋線維を再構築することが大切なのだそう。

NYの高級ジム「パフォーミックス・ハウス」内にある「リロード・フィジカル・セラピー」でフィジカルセラピストを務めるジョセフ・リプスキーさんは、「このプロセスを長期にわたって繰り返すことで、筋肉はより多くのストレスに対応できるようになります」と言う。

woman drinking from water bottle
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しかし、ただボーッとしているだけではいけない。リプスキーさんによると「最高の回復とは、アクティブな回復です」。例えば、20分間の有酸素運動をすると、血流が促進され、筋線維の再構築が促されるそう。

一晩に8時間以上の睡眠をとり、体重1ポンド(約450g)につき約1オンス(約30ml)の水を飲み、目標に十分なカロリーを摂取することで、回復力も高まる。

4. エクササイズで食べすぎを相殺することができる?

残念ながら、ジムのマシンやトラッカーに表示されている数値とは裏腹に、エクササイズはカロリーを消費するものではない(これらはあくまでも推定値)。

ピッツバーグ大学のヘルシー・ライフスタイル研究所の准教授であるレニー・J・ロジャーズ博士は、「1人前のフライドポテト分を消費するには、時速3マイル(約4.8km)で2時間近くも歩かなければなりません」と説明する。

low section of woman exercising on treadmill
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また、エネルギーの摂取/消費の考えは、食事に関する偏った考えを助長する可能性がある。ロジャーズ博士は全体的な視点から、「『昨晩食べた夕食の分を消費する』というマインドから、『運動すると心身ともに元気になり、ストレスも軽減される』というマインドに切り替えましょう」とコメント。

確かに、運動は健康的な体重を維持するのに役立つが、それは運動によって得られる数多くの健康面でのメリットのひとつにすぎない。

5. エクササイズをすれば、一日中座っていることによるリスクを気にしなくていい?

テレワークなどで長時間座っていると、筋肉から動脈まですべてが硬くなってしまう。そのため、座りすぎは心臓病、糖尿病、うつ病、さらには記憶障害や認知症につながると言われている(脳への血液循環が悪くなるためと考えられている)。

定期的な運動が、座りすぎの影響を多少なりとも和らげるという研究結果もあるが、「確実にそうだと言える証拠はありません」とロジャーズ博士は語る。

「エリプティカル(有酸素運動をするためのマシン)で45分運動しても、残りの時間をデスクの前でZoom会議をしながら過ごしているとしたら、あらゆる原因による死亡率の増加を含め、座っていることによるリスクは依然として存在します」。

pregnant woman and puppy practicing dog yoga pose at home
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そこで、通常のエクササイズに加え1時間ごとに2分間の運動を行い、座っている状態を解消しよう。足を伸ばしたり、室内を歩いたり、ダウンドッグ(ヨガのポーズ)をしたりするのもおすすめ。

また、スタンディングデスクを使うことや、掃除機をかけたり、洗濯をしたりといった家事も効果的だそう。

Photos: Getty Images Translation: Masayo Fukaya From Prevention

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Leslie Goldman

Leslie Goldman, MPH, is a freelance writer specializing in health, women's issues, and parenting. She is a regular contributor to Cosmopolitan, O, The Oprah Magazine, Women’s Health, Parents, and more. Follow her on Twitter @lesliegoldman.