イギリスの平均的な成人は、起きている間、実に12分おきにスマホを手にしているそう。つまり、起きている時間が1日だいたい16時間だとすると(朝7時頃に起床、夜11時就寝の場合)、1日におよそ75回もスマホを見ているという計算になる。

もし、ジムでのワークアウト中にもスマホをチェックするのが習慣化しているとしたら、運動の効果や成果にも影響が出てくることを知っておいて。その3つの大きなデメリットを、以下で見ていこう。

1. ケガのリスクを高める可能性がある

    2017年の研究によると、ウォーキングやランニングなどの運動中にテキストメッセージを送ると、姿勢の安定性に最大で45%の影響を与え、つまずいたり転んだりしやすくなることがわかったという。

    筋力トレーニングにおいても同様のリスクがあり、2014年の別の研究では、ワークアウトの休憩時間にスマホを使用すると、神経系が脳と筋肉に直接接続されていないことを意味する「認知力の乱れ」が生じ、反応速度が遅くなることがわかった。その結果、休憩後のトレーニングの際に“調整”が難しくなり、たとえばバーベルを落としてしまう可能性などが出てくるそう。

    knee injury of woman lifting barbell in gym health problem, sprain ligament, stress and pain
    Oleg Breslavtsev//Getty Images

    もちろんこれは、ワークアウト中に限った話ではない。日常生活でスマホの使用が増えると、一般的な反応速度に累積的な影響を及ぼしてしまう。

    さまざまなフィットネス情報を発信している『BarBend』のコーチ、ブリー=アナ・ビュリックさんは、次のように説明している。「スマホを日々たくさん使用していると、全体的な反応速度が遅くなることがあります。ですから、たとえ休憩時間にスマホを使っていなくても、重いクリーン&ジャーク(ウエイトリフティングのトレーニング種目のひとつ)などをするときには、調整力が低下している可能性があります」

    2. トレーニングの強度を下げる可能性がある

    ワークアウト中にスマホを触ると、目の前のタスクに集中できず、最新のゴシップネタや、グループチャットなどに関心が向いてしまうのは当然のこと。これがワークアウトにどの程度影響を与えるかを知ると、驚くかもしれない。

    2016年の研究によると、20分間のワークアウト中にスマホでメッセージを送った人は、低強度トレーニングでは約10分間、高強度トレーニングではわずか7分間しか続かなかったそう。

    いっぽう、スマホを使わずにワークアウトをした人は、低強度トレーニングではわずか3分間、高強度トレーニングでは13分間続いたが、これは「デュアルタスク効果」によるものだという。つまり、脳が同時に2つのタスクを管理しようとするため、その能力が2つに分散されるということ。

    また、2015年の別の研究では、トレッドミルでのランニング中にメールや電話をした参加者の平均速度は、スマホを使わずにランニングした参加者よりも著しく低いことがわかった。また、スマホを触り続けた人の平均心拍数も、使わなかった人に比べてかなり低かったという。

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    Westend61//Getty Images

    ビュリックさんは、「ジムでの時間が限られている場合は、特に注意する必要があります」「HIIT(高強度インターバルトレーニング)をしに行ったのにスマホに時間を取られすぎると、結局普通のセッションになってしまうことがあります」「また、HIITの利点のひとつは短時間でより多くのトレーニングを行うことなので、その時間をスマホに費やしすぎてしまうと、上達やワークアウトの効果に影響が出ます」と語る。

    3. フォームが損なわれる可能性がある

    ランニングやウォーキングの最中と違って、スクワットやベンチプレスの最中にスマホを見ることはまずないだろうが、トレーニング中にスマホが目線に入るだけでも影響が出る可能性が。

    2006年には、参加者に約16キログラムのウエイトリフティングを30分間一定の速度で持ち上げることを求めるという、ある研究が行われた。その際、トレーニング中に「認知力の乱れ」を受けた場合、肘や肩の曲げ伸ばしの可動域が減少することがわかったという。

    この研究では、「認知力の乱れ」に携帯電話が含まれていたとは明示されていないが、ビュリックさんは、まさにそうした要素がワークアウトに影響を与えることが確認されたと説明している。

    「スマホを直接手にしていなくても、認知的な乱れは、メッセージの着信音を聞いたり、スマホ画面が通知で点灯するのを見たりすることで引き起こされます」「つまり、スマホの画面が点灯するのが目に入ることは、実際に携帯電話をチェックするのと同じくらい気が散る可能性があるということです」

    「一見無害に見えるこれらの妨害は、動きや可動域を減少させ、全体的に効率の悪いワークアウトにつながる可能性があり、ひいては、ワークアウトの成果にも影響するということなのです」

    over the shoulder view of young asian sports woman checking pulse on smartwatch and syncing her smartwatch with fitness app on smartphone
    d3sign//Getty Images

    とはいえ、もちろんスマホにも価値はある。歩数をカウントしたり、フィットネストラッカーに接続することで進捗状況を確認したり、またYouTubeでワークアウトの映像を見たり、トレーニングプランに従ったりするなど、スマホは今やフィットネスに欠かせないツールとなっているのも事実。

    しかも前述の2015年の研究では、スマホで音楽を聴くことで、トレッドミルでのランニング速度が速くなり、ランニング全体がより楽しくなることがわかっている。実際、ワークアウト中に音楽を聴く人もかなり多いので、スマホを手元に置いておきたいという人は、ワークアウト用のプレイリストを活用し、さらにスマホを機内モードに設定してメールや電話の着信を回避するのがおすすめ。

    ジムで過ごす時間を“自分の時間”にすれば、きっと成果もいいものが得られるはず。

    ※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

    Translation: Masayo Fukaya From Women's Health UK

    Lettermark
    Bridie Wilkins

    Bridie is Fitness Editor at Women's Health UK. She spends her days sweating over new workouts, fitness launches and the best home gym kit so you have all that you need to get fit done. Her work has been published in Stylist, Glamour, Cosmopolitan and more. She’s also a part-time yoga teacher with a habit of nodding off mid savasana (not when she’s teaching, promise).