ウエイトなしで毎日スクワットするくらい楽勝でしょう?
UK版ウィメンズヘルスのライターのキルスティが筋トレを始めて約7年。スクワットは一番やってきたエクササイズの1つと言える。ロックダウン前はヘビーなバーベル、宅トレになってからは8kgのダンベルでスクワットを繰り返すのが習慣だった。
でも、これは昨年の12月上旬に新型コロナウイルスに感染するまでの話。幸いにも自宅療養で回復したし、ちょっとした疲労感以外、長引く症状は出ていない。
コロナウイルス感染後のエクササイズに関する記事を書く中で、英国健康・ヒューマンパフォーマンスセンターのスポーツ・運動医学コンサルタント、レベッカ・ロビンソン医師と話をする機会があった。「エクササイズに戻るためのプレハビリテーションだと思ってください」という医師の言葉を心に留めて、1ヶ月は丸々休み、ウォーキング、ピラティス、ヨガで徐々に体を慣らしていった。
リカバリーの数週間で筋力が100から(ほぼ)0になったけれど、これは筋トレの基礎に戻るチャンス。そして、基礎と言えばスクワット。ということで今回はパーソナルトレーナーもイチ押しのスクワットを徹底解剖していこう。
パーソナルトレーナーがスクワットを愛してやまない理由
「スクワットが人気なのは、複数の筋肉と関節が同時に鍛えられるからです」と話すのは、パーソナルトレーナーのサム・マクガワン。「それが可能なコンパウンドエクササイズは、あまり多くありません」
通常のスクワットのメリット
サムによると、運動パフォーマンスの向上、ケガのリスクの低下、筋力の増強は氷山の一角に過ぎない。
「スクワットで上半身、下半身、体幹の筋肉を鍛えれば、歩いたり、階段を上ったり、物を持ち上げたり、運んだり、しゃがんだりという日常的な動作が楽になるだけでなく、パフォーマンスも向上します」
そこでキルスティは、ゆっくりと着実に筋トレを再開するため、スクワット10回x3セットを2週間続けてみることにした。全部で420回。バカにできる数字じゃない。
毎日のスクワットから私が学んだ5つのこと
1.筋肉痛は成功の証じゃない
初日は自重スクワットを3セット。数週間休んだ割に問題は少なかった。でも、翌朝の筋肉痛には驚いた。臀筋とハムストリングス、特に大腿四頭筋が痛くて痛くて。
これは昨日のスクワットが良かったから?
サムいわく必ずしもそうではない。「筋肉痛になったからといってワークアウトが成功したとは限りません。臀筋より大腿四頭筋が痛ければ、お尻の筋肉が使われていないということです」
本当に嫌なときもあるけれど、遅発性筋肉痛は満足感をくれるもの。でも、筋肉痛=結果じゃない。これまでの研究により、筋成長に筋肉痛は必要ないことが分かっている。また、定期的にワークアウトをしていれば、体が負荷に慣れてくるので筋肉痛は徐々に減る。
コロナ感染からのリハビリで感じたキルスティの筋肉痛は、成長というよりむしろ運動不足の証なのかも。実際に4~5日目から、筋肉痛にならなくなった。体の適応は実に早い。
2.深さのためにフォームを犠牲にしていた
股関節とヒザが柔らかいため、深くスクワットできることを自慢の種にしていたキルスティ。でも、それをサムに伝えると、返ってきたのは注意勧告。
「スクワットの深さはテクニックほど重要じゃありません。お尻を無理やり床に付け、可動域をマックスに使うことは可能です。でも、それではフォームが完全に崩れるでしょう。腰が丸まり、お尻が上体の下に入り込むことになります」
自分のフォームの動画を撮ると(ジムの鏡が懐かしい)、確かに腰が丸まって、スケボーのジャンプ台みたいになっている。
「浅くなってもいいですから、背中を真っすぐ伸ばしたままにしてください」とサム。「クオリティ・ファーストです。腰が少し高くても、背骨をニュートラルな状態に保てれば、それで十分OKです。
3.バリエーションは大事
4日目頃から同じスクワットを毎日するのに飽きてきたので、相撲スクワット、ナロースクワット、スプリットスクワットを混ぜてみた。
これにはサムも大賛成。「スクワットには無数のバリエーションがありますが、それぞれに固有のメリットがありますよ」
その一例としてナロースクワット(スタンスが狭めのスクワット)は大腿四頭筋に効きやすく、相撲スクワット(スタンスを広く取り、つま先を45度外に向けて行うスクワット)は臀筋と内ももに効きやすい。
でも、サムのイチ押しはスプリットスクワット(片足を大きく後ろに引いて、その足のかかと、または全体を浮かせた状態で行うスクワット)。よりダイナミックなランジとは似ているようで全然違い、サムいわく、どんな筋トレプランにも絶対マストのエクササイズ。
「スプリットスクワットはメリットが非常に多く、筋力の強化にも、バランスとモビリティの向上にもいいのに過小評価されています。脚を1本ずつ鍛えるエクササイズは、全身を強化して、左右の筋力の不均衡を減らす上で欠かせません」
なるほど。これからはスプリットスクワットを多めにしよう。
4.スクワットからは体の状態が良く分かる
スクワットチャレンジの中盤で、理学療法クリニック『TenClinical』のトレーナーでバイオキネティシストのナターシャ・キンタルに会い、コロナウイルス感染後の検査を受けた。心機能と肺機能が正常であることを確認してから、ナターシャは複数のアングルで私のスクワットの動画を撮った。
これは臨床評価の重要な一部で、このデータから体のバランスや衰弱具合が分かるそう。特別なソフトウェアで動画を分析したナターシャは、いくつかの発見をした。
まず、私の右足の土踏まずがなくなっていること。それほど大きな問題ではないけれど、ヒザに負担がかかる可能性はあるという。「土踏まずがないと、ヒザが自然と内側に回転します。スクワットをするときは、ヒザを外に押し出すことを意識してくださいね」
ナターシャは、サムに注意された背中のアーチも指摘した。「この姿勢で負荷やウエイトを増やしていくと、腰を痛めてしまうかもしれません」。これが5点目の学びにつながる。
5.スクワット成功のカギは体幹にある
どんなに意識しても背中のアーチが直らない。10日目になると、ナターシャが言った通り、腰が痛くなってきた。ナターシャいわく腰痛を治すには、体幹を鍛えるのが何よりも効果的。
クランチでは意味がない。体幹を強くするには、体幹の表層にある腹直筋(シックスパック筋)ではなく、深部にある腹横筋を鍛える必要がある。そこで私はサムの助言に従って、いつものメニューにデッドバグ12回x3セット(左右それぞれ6回ずつ)を加えることに。
もちろん、2週間で目に見える結果は出ない。でも、デッドバグを加えたことで“マインド・マッスル・コネクション”(使うべき筋肉に意識を向けること)が身に付いて、スクワットでも体幹が使えるようになってきた。14日目には、スケボーのジャンプ台みたいだった背中のアーチも収まってきた。これは大きな進歩と言える。
注記:サムによると、スクワットの恩恵は毎日しなくても受けられる。むしろ、スクワット中心のワークアウトのあとは筋肉を十分に(最低でも1日は)休ませて。その間は上半身や体幹といった他の筋肉群を鍛えよう。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Kirsti Buick Translation: Ai Igamoto