年末年始は油断しているとすぐに体重が増えてしまう。

新年を新たな気持ちと体で迎えたいと思いつつも、なかなか思い通りにいかない人も多いのではないだろうか。

「運動量の低下と食事量や飲酒量の増加は、当然体重増加に直結します。しかし、短期間で起こる体重の増減は生活リズムを戻して活動量を上げる程度で十分にリセットは可能です」

パーソナルトレーナーの林健太さん自身も、やはり年末年始は気の緩みから体重増加するけれど、短期的に無理な体重減少を狙ったダイエットは絶対にしないそう。

「体重を〇kgに制限するではなく、〇kg前後にコントロールするという意識をもっておくだけで、かなり気持ちが楽になります。制限をすると、できなかった時の罪悪感は大きくなりますが、コントロールという考え方をもっていればストレスも溜まりにくくなります」

何かを制限することと、コントロールをすることは全く違う。

年末年始はコントロールが上手くできなかったことを軌道修正するだけなので、過度なダイエットは不要。

そこで今回は、正月太りの焦りからついついやってしまいがちなダイエットの中でも、林さんが避けてほしいと思うものをピックアップしてもらった。

体重が増えてしまったと焦って手当たり次第に手を出す前に、生活リズムのコントロールを取り戻して。

①スムージー置き換え

midsection of woman holding smoothie
Julia Murray / EyeEm//Getty Images

女性に人気のスムージーダイエットは、林さんが最も避けてほしい方法だそう。

「生のフルーツをミキサーにかけて、フレッシュなスムージーで健康的に感じているかもしれませんが、咀嚼運動がない時点で食事とは大きくかけ離れてしまいます。見た目には消化が良さそうですが、実際は消化が悪くなる可能性も考えられます」

咀嚼は、人間にとって呼吸に次いで大切な運動。

でんぷんを消化するのは唾液中の消化酵素の働き。その最初の消化ステップを飛ばしてしまうということは、内臓への負担も大きくなりダイエットには逆効果。

見た目が細かくなっていることと、栄養の分子が細かくなっていることは全く異なるので、見た目に惑わされてはいけない。

「よく噛むことで消化活動が活発になり、エネルギー消費も多くなります。食べすぎの防止はもちろん、顔にある筋肉の筋トレでもあるので、体重だけでなく見た目の印象にも影響します」

ホルモン分泌を調整し、ダイエットを行っていく上で避けて通れない咀嚼運動。

噛むことは、ウォーキングやジョギングなどと同様に幸せホルモンであるセロトニンを分泌しやすいリズミカルな有酸素運動だと心得ておこう。

②プチ断食

太ったと感じた時や、食べ過ぎたと感じた時、最も手っ取り早く安直なダイエットが食事を抜くこと。

ファスティングというと数日間の断食行動になる為、ハードルが高く実践できないと感じる人も多いが、プチ断食は恐らく一度は経験したことがあるはず。

「ファスティングはダイエット目的でやるべきではありませんが、一時的に食べないことで体重が減るのは当然です。プチ断食も、16時間は食事を摂らないなど方法は様々ですが、一日の中で食べることができる時間が少なくなるので、結果的にカロリーが制限されているだけです」

もちろん空腹には様々なメリットがあり、空腹を感じてから食べることはダイエットにおいても非常に重要。

但し、過度な空腹は筋量の減少や基礎代謝の低下も招いてしまう。

「ダイエットのプロフェッショナルともいえるコンテスト選手も、食事を抜いて行う人は皆無と言えるでしょう。むやみに減らした体重は、さらなる悪影響を招くきっかけになりかねません」

年末年始の体重増加を逆手に取り、有り余ったエネルギーで運動量を増やしてダイエットを加速させるほうが賢明だ。

③糖質制限ダイエット

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armano777//Getty Images

前項でも触れているように、むやみに減らした体重はリバウンドのきっかけにもなる。その最たる例が糖質制限であることは、おそらく多くのダイエット経験者が薄々感じているはず。

「ダイエットに関するアンケート調査でも、糖質制限は成功を感じたダイエット方法の上位にあります。しかしその一方で、失敗を実感したダイエットでも上位に食い込んでいます。つまり、短期間で落とした体重が短期間で戻るということの証拠とも言えるでしょう」

糖質制限を実施すれば、おそらく年末年始で増えた体重以上に減ることが予想されるので、一時的な満足度としては非常に高くなる。

しかしその反面、エネルギー不足から集中力の低下や頭痛など意図しない不調を引き起こす可能性も十分に考えられる。

新年を不調の伴うダイエットでスタートしても福は訪れない。

④プロテイン、サプリメントの追加補助

ダイエット中は栄養が不足してしまうからと、サプリメント類に手を出す人も多い。

これは単独で行うというよりも、他のダイエットとの組み合わせが主流かもしれないが、これもお勧めしないと林さん。

「サプリメントは栄養補助食品なので、まずは食事を整えることが優先です。不足した栄養が手軽に摂取できることは間違いありませんが、吸収されて効率よく利用されているかは分かりません」

飲んだサプリメントは消化管からの吸収効率や、内臓代謝の影響を受けるため、全てが利用されているわけではない。

特に、最近では天然原料のサプリメントも少なく、多くが人工的に作られたもの。もちろん人工的な原料の中にも生体利用率が高いものもあるが、どこまでいっても人口化合物。

一粒のサプリメントよりも、一粒のプチトマトの方が栄養価は何倍も高いと考えておこう。

⑤〇〇だけダイエット

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Peter Dazeley//Getty Images

「このダイエットが前述したサプリメントの過剰摂取や糖質制限にも繋がる要素を含んでいるので、気を付けてほしいです。特に単品だけのダイエットは、プチ断食同様にただのカロリー制限による体重減少です」

〇〇だけダイエットは食事の準備や考える手間が省けるので、人によっては非常に続けやすいが、必ず栄養価が偏る。

さらにこのダイエットは無意識にやってしまっていることがあると林さん。

「朝は菓子パンとコーヒー、お昼はおにぎりなど、〇〇だけダイエットは、一つの食材だけを食べることを指すのではなく、栄養バランスに偏りのある食事を続けていることを指すと考えてください。ちゃんとバランスよく食べているつもりでも、実際に見てみると非常に偏りが目立つこともあります」

どれだけダイエットや健康に良い食材も、食べ過ぎれば必ず悪影響が出る。世の中に完全な食材はないということを改めて肝に銘じておこう。

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/