ダイエットと聞くと、真っ先に思い浮かぶのが糖質制限ダイエット。それと共にもう一つポピュラーな方法が脂質制限ダイエット。どちらもエネルギー産生栄養素(三大栄養素)の一つなので、大きな括りで言えばカロリー制限をするダイエットになる。

「大幅なカロリー制限を長期的に続けることは不可能と言ってもいいでしょう。ダイエットとは長期間にわたるライフスタイルの確立です。糖質制限ダイエットや脂質制限ダイエットを一度試してみて、体や体調の変化、向き不向きを知ることで、ライフスタイルを作り上げるヒントは得られるはずです」

短期間にできる減量には腎機能障害や摂食障害、骨や関節のトラブルなど、長期にわたる苦痛を伴う可能性もあると警笛を鳴らすのはパーソナルトレーナーの林健太さん。

少し前までは2ヵ月でどれだけ痩せることができるかが主流になっていたダイエットも、現在では少し視点も変わり、習慣化や継続と言ったワードもよく聞くようになってきた。

しかしながら、短期的に得られる結果も気になってしまうのは当然のこと。

そこで今回は、糖質制限ダイエットと脂質制限のダイエット、それぞれのメリットや効果を比較して教えてもらった。

「どちらのダイエットを選択するにしても、ダラダラ中途半端に行うよりも期間を決めて行うことをおすすめします。そこで得られた結果を無駄にしないようなライフスタイルに切り替えていくことこそが、その先のダイエット生活を左右するポイントになるでしょう」

①即効性
calorie counting apps showing nutrition fact meal,
Rudzhan Nagiev//Getty Images

「短期で痩せると短期でリバウンドするというのは、多くのダイエッターが経験したことのあることかもしれません。即効性という言葉は、痩せることとリバウンドすることが表裏一体になっています」

ダイエットを行っていく上で、この即効性は大きなモチベーションになるので、どうしても一番に気になってしまう。ダイエットを行う真の目的は、体形やライフスタイルを変えることであるはずなのにも関わらず、体重減少の即効性がなければ続かないというのも事実。

「糖質制限ダイエットを行うほうが体重は早く落ちます。しかし、それは体脂肪が落ちたわけではなく、体のエネルギーが枯渇した状態なので、食べれば元に戻ります。それに比べると脂質制限ダイエットは、数字の結果に繋がるまでには少し時間を要しますので即効性には劣ります」

糖質制限ダイエットを車で例えるならば、ガソリンが空になった状態を早く作り出すこと。給油すれば元に戻るのは当然で、車体の重さは何ら変わっていない。

もちろん1~2ヵ月程度続けていれば体脂肪も燃えていくが、多くの人は数日で体重という数字に結果が表れるので止めてしまうことがほとんど。

糖質制限ダイエットは短期で数字の結果が出やすいが、短期で戻るということをしっかり抑えておこう。

②持続性

短期で戻るということは持続性に欠けるということの裏返し。

脂質制限ダイエットでは、すぐにガソリンが枯渇した状態にはならないので、一度食事を摂りすぎたとしても大きな反動が目に見えて現れることは少ない。

「糖質制限ダイエットと比べると、脂質制限ダイエットは見た目の数字に変化が現れるまでに少し時間がかかるので、モチベーションを維持するという点では劣るかもしれません。しかし、その苦しい時期を乗り越えれば、太りにくい体質や習慣を作り上げることにも繋がってきます」

現代人は普段から揚げ物やジャンクフード、菓子パンなどで脂質を摂りすぎているだけ。実際は制限というよりも、度を越さないよう適度に慎む脂質節制ダイエットと呼ぶべきだと林さん。

「間違った糖質制限ダイエットは、根菜類や食物繊維豊富な食材までをカットさせられ、便秘や低血糖などを引き起こすこともあります。もちろん脂質も極端なカットをしてしまうと肌荒れやホルモンのアンバランスを引き起こすので注意が必要です」

決して良質な脂質が十分に摂れているとは言えないのが現代の食事。それならば、脂質を節制し、足りない分をナッツや良質な脂質を原料にしたドレッシングなどで、プラスの方向に修正することが重要になる。

糖質や脂質をはじめとした栄養は、摂取に関しても制限に関しても度を越さないための節制が、持続性をアップさせるコツだ。

③コストパフォーマンス

young male and female characters are on keto diet
Rudzhan Nagiev//Getty Images

ある程度の日数を続けるために気になるのはコスト。

糖質制限ダイエットを行うにしても、脂質制限ダイエットを行うにしても、今まで日常的に食べていたものを控える必要が出てくる。

「糖質制限ダイエットになると、食事の選択肢がかなり狭くなるので意外にお金がかかります。糖質を摂らない分、おかずなどがたくさん食べられるのは魅力的かもしれませんが、コンビニや外食になるとコストがかかり、なかなか難しいと感じます」

一方の脂質制限ダイエットは、極端に言えばいつも菓子パンを食べていた人がおにぎりに変えるだけでも成立する。特に普段から自炊を心がけている人にはおすすめだと林さん。

「おかずも今まで通りの量を食べることが可能です。もちろん揚げるといった調理方法の選択肢はなくなりますが、から揚げを蒸し鶏にするだけでも十分な脂質制限ダイエットです」

脂質制限ダイエットの魅力の一つは、食材は変わらず調理方法の工夫で成立すること。外食でも正しいメニュー選択ができれば、いつも通り家族や友人と食事を楽しむことができる。

④継続率

ダイエットを行い理想的な体になるためには、運動も食生活も長期的な習慣化が必須。そのためにも続けやすさは大きなポイントになってくると林さん。

「糖質制限ダイエットと脂質制限ダイエットも、どこまで摂取量を制限するかはそれぞれのやり方次第です。しかし、ここまでのポイントを踏まえても一般的に続けやすいのは圧倒的に脂質制限ダイエットでしょう。おかずのから揚げを蒸し鶏にすることで、健康被害が起こることはなくても、主食のお米を抜けば何かしらの不調が起こることは目に見えています」

今までの食生活から急変するような糖質制限ダイエットは、過度な空腹感や体調の変化でついていくことができなくなる人も多い。

そのため、パーソナルトレーナーなど、第三者の監視の目が無くなった途端にリバウンドする人も糖質制限ダイエット経験者の特徴。

継続率は習慣化。

どちらのダイエットを行うにしても、結局は誰かを頼りにしていては本質的な継続には繋がらない。

⑤総評

体重という数字の即効性以外に、糖質制限ダイエットにメリットはないと断言する林さん。

「糖質制限は植物性食品を制限することにも繋がります。すなわち第六の栄養素とも言われる食物繊維や、第七の栄養素と言われるフィトケミカルも摂れません。糖質摂取量は年々減っているものの、生活習慣病は減るどころか増える一方なのは、脂質摂取量の増加が伴っているからです。糖尿病や脂質異常症の原因が動物性脂肪の過剰摂取であることは既に証明されています」

しかし、これらの栄養素は精製穀物や精製糖には存在しないので、糖質を一括りにせず未精製穀物を積極的に摂ることが大切。

白米に少しの押し麦を混ぜる、うどんをそばに変える、食パンをライ麦パンに変えるなど、ちょっとした心掛けで糖質の質は大きく変わる。

「食べないのではなく、食べるものの選択肢を増やすことで、食事がより豊かに変化します。糖質も脂質もどんなものから摂取しているのかを今一度振り返り、より良い摂取源から摂るように心がけましょう」

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/