とにかく痩せたいけれど、なるべくなら効率の良い方法で近道をしたいのは皆同じ。運動の種類や強度は体力レベルにより人それぞれで、急に増大させることは難しいが栄養からのアプローチであれば誰でも改善できる。

「有酸素運動と筋トレはどちらも一長一短ですので、どちらが痩せるのかという論争はおそらく終わることはありません。それよりもまずは続けやすい好きな運動でダイエットをスタートしましょう。栄養面では脂肪燃焼効率を上げる方法がいくつもありますので、好きな運動で最大限の効果を引き出すことを目的にするといいでしょう」

まずは運動の種類に悩まず、その運動効率を上げる食事や栄養面に目を向けるとダイエットがスムーズにスタートできると林さん。

「最初はウォーキングだけだった人がどんどん新しい運動やスポーツに挑戦することはよく聞く話です。ダイエットへの近道は運動の種類ではなく、食事を含めた私生活のクオリティにあるものです。脂肪燃焼は目に見えない小さな心がけの積み重ねですぐに大きな結果として現れるわけではありませんが、いつでも効率化できるようにしておくことは大切です」

今回は林さんに脂肪燃焼効率を上げる5つの方法を教えてもらったが、どれも大きな効果を生み出すわけではない。決して無理はせず実践できた日はいつもよりちょっと運動を頑張ってみると、振り返った時に大きな近道をしていたことに気付くはず。

①トレーニング前の食事は辛い料理を

grilled chicken wings
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「唐辛子の辛味成分であるカプサイシンは体脂肪の分解を促進するアドレナリンというホルモンを分泌させます。運動の初期段階から脂肪をエネルギーにするためには運動前に分解しておくことが大切です」

運動を始めたからと言って急にたくさんの脂肪がエネルギーに変わるわけではない。分解、運搬というステップを差し置いて燃焼は始まらないので、運動前からの準備も大切。

カプサイシンと並んで有名な牛肉などに多く含まれるカルニチンは、分解された脂肪をミトコンドリアへ運搬する際に必要な栄養素で、反対に脂肪分解を抑制するホルモンは血糖値が上がった時に分泌されるインスリン。

つまり、血糖値の上昇を極力抑えつつもしっかりと動けるエネルギーを確保することがポイント。そのためには食物繊維が豊富な炭水化物と、メインに唐辛子と牛肉を使った料理が理想。

もちろん野菜などの副菜もバランスよく食べることが、血糖値上昇を抑えることにも繋がるので忘れずに。

②トレーニング前にチョコレートで栄養補給

close up of african american woman eating square of chocolate
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運動前に栄養補給したいときは、カカオ60~70%以上のダークチョコレートをほんの少量だけ口にするのがおすすめだと林さん。

「チョコレートに含まれるカフェインやテオブロミンが、カプサイシン同様にアドレナリン分泌に働きかけてくれます。またこれらには興奮作用や覚醒作用を持つ成分が含まれていますので、運動前に集中力を高めることにも繋がります」

原材料のトップに砂糖が書かれているものはカカオ含有量も少なく、ポリフェノールなど他の栄養からの恩恵も受けられないので絶対に避けたい。

一方で高カカオのチョコレートは普通のチョコレートよりも脂質を含む場合が多いので、度を越えた摂取はダイエットに逆効果。効率よく脂肪燃焼をさせるには板チョコ2~3かけ程度で十分だそう。

「カフェインは依存性が強く、睡眠時間の短縮を引き起こすなどのデメリットもあります。運動前にブラックコーヒーを飲む人も多いですが、お茶や清涼飲料など日常生活でも摂取機会は多いので、量が多くならないよう注意しましょう」

様々な栄養成分がもたらすメリットを最大限に引き出しつつ、デメリットは最小限に抑える。効率の良い方法だけに目を向けず、いろいろな側面を知って取り入れていこう。

③クエン酸入りドリンクはトレーニング中の必須アイテム

lemon soda glasses with ice on a table at an outdoor picnic in nature
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柑橘類やお酢の酸味であるクエン酸は、糖をエネルギーに変える酵素の活性を阻害することで脂肪燃焼効率を高めてくれる効果がある。

「体は糖と脂肪の両方をエネルギーとして使っています。クエン酸により糖がエネルギーに変わりにくくなると、その分脂肪をエネルギーに変える働きが亢進しますので、脂肪燃焼を狙ったトレーニング中の栄養補給にクエン酸はおすすめです」

また、クエン酸は乳酸生成も阻害するので、疲労回復効果も期待できる。乳酸自体は疲労物質ではないものの、大量の乳酸が一時的に蓄積し酸性状態を作ることは疲労を招く原因。

特に長時間のランニングや高強度のトレーニングを習慣にしている人は、疲労を溜めないことが運動頻度を落とさず継続した脂肪燃焼を続けること繋がる。

実際に林さん自身も運動中のクエン酸は欠かさず摂るそうで、体脂肪率の低下や疲労感の軽減を感じているそう。

脂肪を燃焼させて行うダイエットは一朝一夕では終わらない地道な作業なので、日頃の運動から起こる疲労や筋肉痛のケアも忘れずに行おう。


④トレーニング後は糖質で回復させる

運動後にプロテインを飲む人は多いが、それ以上に必要な栄養が糖質。だいぶ周知されてきたものの、まだまだ糖質=悪、太るというイメージからか、積極的に摂取する人が少なく感じると林さん。

「吸収までの時間を考えると、運動後のプロテインはあまり効率よくありません。それよりも、枯渇したエネルギー源を補給するとともに血糖値を上げて、インスリン分泌を促すことで筋合成を促進することが大切です」

この時には筋肉の材料であるタンパク質がしっかり補給されていることが重要なので、トレーニング後にプロテインを飲んでいては間に合わない。

インスリンは体脂肪合成を高め、分解を抑制する働きもあるが、糖質を過剰に摂らなければ使った分のエネルギーが筋肉に取り込まれるだけなので、回復促進にも繋がる。

ダイエットを長期的な目で見ると、脂肪燃焼と筋肉合成は表裏一体で甲乙つけがたい。常に脂肪を減らすことだけに目を向けず、タイミングによっては栄養をしっかり摂って筋肉を増やすことも忘れずに。

⑤就寝前の水分補給をお忘れなく

脂肪燃焼を促進する方法
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体内で起こる様々な反応に必要なものが水。ダイエット中は水分補給を怠らないようにと言われることも多いと思うが、水がなければ脂肪は燃えない。

細胞内に十分な水分があることで脂肪燃焼効率は大幅に上がるので、運動中はもちろんのこと、それ以外の時間もこまめに水分補給をしてほしいと林さん。

「特に気を付けてほしいのが就寝中です。冬でも寝ている間に200~300mlの汗をかきますので、寝る前に十分に水分を摂っておくことが大切です。ダイエット中で夕食を食べる時間が早く、量も少なく済ませているという人は、寝るまでの間にこまめに水分補給をしてください」

また、体の中で最も多くの水を含むのが筋肉。運動で筋肉量を維持することは脂肪燃焼だけでなく、見た目年齢の若さにも繋がる。

水分量は加齢と共に低下するため、脂肪燃焼効率を下げないためにも筋肉をつける筋力トレーニングは重要。

「睡眠中に血流を滞らせないことは疲労回復や筋肉合成にも影響します。これからは寝起きだけでなく寝る前の水分補給も習慣化していきましょう」

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/