体のなかでも、おなかの脂肪はとくに減らすのが難しい。でも、アメリカのジョージ・メイソン大学の栄養・食品学部長で、ジョンズ・ホプキンス大学健康・行動・社会学助教授のローレンス・チェスキン医学博士によると、おなかは「脂肪が溜まると一番危険な」部位なので、努力してでも減らすべき。おなかの脂肪(臓器を取り巻く内臓脂肪)は、血流に乗って全身を駆け巡り、血中の脂質量を増やしてしまう。その結果、血糖値が上昇し、心疾患や2型糖尿病のリスクが高くなる。

クランチやプランクだけで内臓脂肪は減らせない。ACE(アメリカ運動評議会)認定パーソナルトレーナーのクリス・ガグリアルディがいうように、体脂肪を全体的に減らすためには、もっと包括的なアプローチが必要。

今回は、おなかの脂肪がつく理由と2週間で減らすための16のポイントを見ていこう。

おなかに脂肪がつく理由

「通常、おなかに脂肪がつくのは、カロリーのとりすぎで体重が増えたときです」と話すのは、著書に『The Small Change Diet』を持つ公認管理栄養士のケリ・ガンズ。「増えた分の体重が脂肪となって現れる部位を私たちが決めることはできません。でも、その人の遺伝子、性別、年齢次第で、おなか、お尻、太ももに現れることが多いです」

『The Little Book of Game-Changers』の著者で公認管理栄養士のジェシカ・コーディングによると、体重が一気に増えたときは、おなかに脂肪がつきやすい。「体質的に腹部に脂肪がつきやすい人もいます」

コーディングの話では、寝不足やストレスも腹部に脂肪が溜まる要因。「コルチゾール(ストレスホルモン)の量が増えると、腹部に脂肪が溜まりやすくなるという研究結果が出ています」

おなかの脂肪を減らすには

脂肪がつく部位と同様、脂肪が減る部位を決めるのは不可能に近い。

NASM(全アメリカスポーツ医学協会)の認定パーソナルトレーナーで、著書に『The 5 x 2 Method: Revealing the Power of Your Senses』を持つクリス・ディヴェッチオによると、これは「脂肪代謝を部分的に加速させるのが実質上不可能」だから。

「とはいえ、一度おなかに脂肪がついたら一生減らせないというわけではありません」とコーディング。「どこの脂肪を減らすかは選べないというだけです」。よって、おなかの脂肪を減らしたいなら、全身の脂肪を減らすしかない。

おなかの脂肪を2週間で減らす方法

コーディングがいうように、体重を減らすのには時間がかかる。長期にわたってリバウンドを防ぎたいなら、なおのこと辛抱が必要。でも、そのプロセスを早めるために今日からできることはある。16のポイントをご紹介。

1.行動を修正する

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ダイエットで重要なのは意識的に決断すること。例えば、楽しいハッピーアワーで食べた量と飲んだ量が分からなくなってしまっても、自分が軌道を逸れている事実に気づけば、そこから軌道を修正できる。「現状を認識して、いまの自分にできることを考える。それだけで、コンフォートフードを食べたときと同じくらい落ち着きます」とディヴェッチオ。

2.カロリー量を把握する

ダイエットの鉄則は、カロリーの摂取量より消費量を多くすること。ダイエットアプリ(または紙とペン)を使って、目標を達成するために食生活でカットするべき、または運動で燃やすべきカロリー量を算出しよう。ガグリアルディいわく、カロリーを1日500kcal消費すれば、1週間で3,500kcalが消費され、体重が0.5kg減る。

算出にあたり、アメリカの国立衛生研究所のオンラインツール『Body Weight Planner(体重プランナー)』は非常に便利。現在の体重、運動量、目標体重、タイムラインを入力すれば、1日に摂取するべきカロリー量が自動的に算出される。おなかの脂肪の減らし方を教えてくれるツールではないけれど、よいガイドラインになるのは確か。

カロリー計算が苦手な人は、もう少しざっくりしたアプローチを取ってみよう。「サンドイッチをランチタイムに丸ごと食べず、ランチとディナーで半分ずつ食べれば、摂取カロリーが半分になりますよ」とガグリアルディ。

3.食物繊維をもっととる

精製糖質と糖類が多いアイテムは、食べても空腹が満たされないので、食べすぎてしまいがち。おなかが空いたら、全粒パン、オーツ麦、野菜、フルーツ、豆類、チアシードなど、消化吸収を遅らせる食物繊維が豊富なものを。「そのほうが、おなかが満たされますからね」とチェスキン博士。

医学専門誌『The Annals of Internal Medicine』に掲載された2015年の論文によると、厳格なダイエットプランに従わなくても、食物繊維の摂取量を増やすだけで体重は減る。最新版のアメリカの食事指針によると、女性は1日に少なくとも25g(1日の摂取カロリーが2,000kcalの場合)の食物繊維を摂取するべき。

4.毎日歩く

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これといったフィットネスのルーティンがない人は、歩くことから始めてみよう。ガグリアルディによると、ウォーキングは「かなりよい出発点」。運動栄養学&生化学専門誌『The Journal of Exercise Nutrition & Biochemistry』掲載の研究結果によると、50~70分x週3回のウォーキングプログラムに参加した肥満女性の腹部は、12週間で、座りがちのグループとは比べものにならないくらいスリムになった。

「たとえ1日1分でも、それが昨日よりも多いなら健康によいといえます」とガグリアルディ。ダイエットを始めると、いきなりなにもかも頑張りすぎて燃え尽きてしまう人が多い。

「頑張りすぎて早々にあきらめるより、ゆっくり始めて徐々に力をつけたほうがいいですよ」とガグリアルディ。夕食後に10分歩くことから始め、それに体が慣れてきたら、少しずつ歩く時間を延ばせばいい。

5.筋トレを始める

おなかを凹ませてリバウンドも防ぎたいなら、全身の筋トレを始めよう。「筋トレはすべての人に必要です」とチェスキン博士。筋肉がつけば、そのぶん脂肪の量が減る。また、筋肉はエネルギー代謝が活発なので、筋肉がつけばワークアウト後もカロリーが燃え続け、体脂肪が全体的に減ってくる。チェンスキン博士の話では、筋肉がつくと基礎代謝率が高くなるので、食事内容に少しだけ融通を利かせることも可能になる。

まずは週2回のウエイトリフティングから始めてみよう。長期的な目標のために少しずつ筋肉をつけていると思えばいい。

決まった動き(デッドリフトやベンチプレス)をマスターしてレップ数を増やすためでもいいし、日常的な動作を楽にする(例:買いもの袋を楽に運ぶ)ためでもいい。

6.ヘルシーな脂質をとる

脂肪を減らしたいのなら、“正しい種類”の脂肪をとって。

一価不飽和脂肪と多価不飽和脂肪は、食後の満足感を高めてくれるヘルシーな脂肪。アメリカの栄養士会のスポークスパーソンで公認管理栄養士のヤシ・アンサリが勧めるのは、オリーブオイル、ナッツ、アボカド、脂の乗った魚、卵などに含まれる不飽和脂肪酸。「控えめに摂取すれば、さまざまな健康効果と満腹感が得られます」。刻んだアボカドをサラダに入れたり、サーモンを週2回食べたり、ワークアウト後のスナックやスムージーに少量のピーナッツバターを加えたりしてみよう。健康によいとはいえ非常に高カロリーなので、分量は控えめに。

7.タンパク質をもっととる

みんなが、くどくどタンパク質の話をするのにはワケがある。タンパク質は、満腹感を長持ちさせるだけでなく、トレーニングによる筋肉の微細損傷も修復する栄養素。修復された筋肉は大きく、強くなり、最終的に脂肪を追い出す。チェスキン博士いわくタンパク質は、1日に少なくとも70gとるといい。

タンパク質はワークアウト前にとるのがポイント。なぜ? ワークアウト後は、おなかが空いてガッツリ食べてしまいがち。その結果、カロリーの消費量より摂取量が多くなり、おなかに脂肪がついてしまう。

だから、ワークアウト前のスナックで少なくとも12gのタンパク質を摂取しよう。それでもワークアウト後の空腹に襲われたら、喉の渇きを空腹と勘違いしていないか確かめて。本当におなかが空いているときは、タンパク質と糖質を含むスナック(全粒穀物入りのプロテインバーなど)で燃料補給。

8.腹筋エクササイズをする

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部分痩せは不可能だけれど、筋肉をつけて脂肪を燃えやすくすることは可能。「お尻と肩の間には何十もの筋肉があり、あらゆる動作を支えています」とディヴェッチオ。「おなかをスリムにしたいなら、それに適したエクササイズを選ばなければなりません」

ガグリアルディは週3~4回の腹筋エクササイズを勧めている。セッションとセッションの間では少なくとも1日休んで。最初のうちは、クランチ、バイシクルクランチ、プランクといったシンプルなエクササイズを。腹筋に特化したエクササイズは週3~4回でも、それ以外の全エクササイズで体幹をアクティベートする(腹筋に力を入れる)のは忘れずに。

自宅でできる腹筋エクササイズは無限にある。シンプルなオプションに慣れてきたら、より複雑なオプション(メディシンボール・サイドスラムやウエイトつきロシアンツイストなど)にトライして。

9.ストレスを減らす

ストレスは全身に打撃を与えるけれど、それにどう対処するかで、ダイエットは成功もするし失敗もする。「ストレスの影響は、神経系統よりも行動に大きく出ます」とチェスキン博士。「ストレスを感じているときは食べる量が増えるのも、食べものでストレスを癒やそうとするからです」

ストレスに正面から立ち向かうより、食べて自分を癒やすほうが何倍もラク。「私たちは、他人を巻き込むことなく、ラクに満足感が得られるオプションに引き寄せられます。食べものの袋や箱を開けるだけなら、本当にラクですよね」とチェスキン博士。

ストレスから食べたところで、得られるのは1つ=おなかの脂肪だけ。ストレスから食べていることに気づいたら、手を止めて、ストレスの要因を考える。そして、チップスの袋を開けるかわりに、解決策を探したり、セラピストと話したりしてみよう。

10.睡眠を優先する

睡眠なくしてダイエットは語れない。なぜなら、寝すぎも寝なさすぎもダイエットの敵になるから。「寝すぎは体に悪いでしょうね」とチェスキン博士。「でも、寝なさすぎはそれ以上に悪いです」

事実、イギリスの論文レビューとメタ分析の結果は、1日の睡眠時間が5.5時間以下の人は、7~12時間の人に比べて、翌日の摂取カロリーが385kcal多くなることを示している。しかも、寝不足組は、エンプティカロリー(栄養ゼロのカロリー)だらけのチップスなど油っぽいアイテムを好んで食べた。

睡眠時間が短いと、そのぶん余計なスナックを食べる時間が長くなり、体に脂肪がつきやすくなる。ベストな睡眠時間は人によって異なるけれど、チェスキン博士いわく理想は7~8時間。

11.お酒を控える

体重を減らしたいなら、カロリーの摂取量を減らせばいい。でも、おなかがゴロゴロ鳴り出すと、なにか食べずにはいられない。だったら、エンプティカロリーの飲みものを減らして、浮いた分を食べものに充てればいい。代表例は砂糖たっぷりの炭酸飲料、そしてアルコール。

アンサリいわくアルコールの過剰摂取は摂食量を増加させる。「飲みすぎは肝臓に大きなストレスを与えます。肝臓は、ほかの栄養素よりアルコールの処理を優先するので、タンパク質、糖質、脂質は体内に蓄えられることになります」。アメリカの疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインによると、男性の場合、2時間で5杯以上、女性の場合、2時間で4杯以上は飲みすぎとなる。「アルコール飲料には、大抵砂糖たっぷりの飲みものが混ぜられています」とアンサリ。「飲みすぎれば、その分のカロリーがあっという間に蓄積します」

量が控えめでも頻繁に飲めば、余分な脂肪がついてくる。なぜ? 2016年の論文によると、アルコール飲料そのものが不必要に高カロリーなのはもちろん、飲酒が習慣になると自制心も弱くなるから。その結果、深夜のピザに手が出てしまう。飲むなら女性は1日1杯、男性は1日2杯まで。

12.自炊する

friends making a healthy meal
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2017年の論文によると、適切な食材で自炊する頻度を上げれば、おなかの脂肪が減りやすくなる。イギリスの調査チームが11,000人の男女のデータを分析したところ、週5回以上自炊する人は、週3回しか自炊しない人に比べて、BMI値の上昇率が28%、過剰な体脂肪の蓄積率が24%低かった。

自炊をするような人には、もともと運動といった健康的な習慣が多いだけなのかもしれない。でも、自炊する人は摂取する食品の幅が広く、野菜とフルーツの摂取量が多く、調理方法がヘルシーで、カロリーと砂糖が多い食品の摂取量も少なかった。

13.砂糖で甘いものを避ける

砂糖をとりすぎると内臓脂肪が増えることは、これまでの研究で実証されている。「添加糖類は、カロリーをとりすぎてしまう大きな原因の1つです」とコーディング。「そのカロリーをカットすれば、カロリーが健全な範囲で赤字になり、体重が自然と減ってくるでしょう」

コーディングいわく砂糖のとりすぎは、血糖値の急上昇と急降下(シュガークラッシュ)も引き起こす。シュガークラッシュは疲労感と空腹感をもたらすので、食べすぎのリスクが高くなる。

14.加工食品を使わない

コーディングによると、加工食品に含まれる砂糖のせいでカロリーをとりすぎることもある。「加工食品の多くは、腹部脂肪の要因となる体内の炎症を引き起こすことが分かっています」

自然食品を中心に摂取して、加工食品は最小限に抑えよう。

15.単純糖質を減らす

コーディングによると、朝食のシリアル、精白パン、クッキーなどに含まれる単純糖質は、体内で糖に変換されて、血糖値の変動や体内の炎症を引き起こす。「単純糖質のとりすぎで血糖値が安定しなくなると、おなかに脂肪がつきやすくなります」

16.炭酸飲料とジュースを減らす

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ガンズによると、炭酸飲料とジュースを飲んでも、カロリーの摂取量が増えるだけで空腹は収まらない。「余分なカロリーの供給源を減らせば、それがなんであれ、ダイエットが加速します」。コーディングいわく大半の炭酸飲料は液状の砂糖だし、健康効果を謳うジュースの宣伝には大抵語弊がある。「フルーツには食べものの消化吸収を遅らせるタイプの食物繊維が含まれていますが、ジュースには含まれていません。むしろジュースは猛スピードで血中に吸収されて、シュガークラッシュを引き起こします」。食生活からジュースを除けば、余分なカロリーの摂取量が減るだけでなく、血糖値も安定しやすくなる。

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Brielle Gregory Translation: Ai Igamoto