あなたは正しい肌ケアができている? 今回は、いま人気急上昇中のコスメブランド「OSAJI(オサジ)」のディレクターを務める茂田正和さんの著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』から、「知らずのうちに肌の健康を害しているかもしれない、やめるべき美容」と「心地よさを味わいながら肌と心の元気を保つ、はじめるべき美容」をご紹介!

(「」内茂田正和さん)

 

知らずのうちに肌の健康を害しているかもしれない! 「やめるべき美容5」

①高浸透を謳っている化粧品の使用

「美容成分を高浸透させるには、ソフトな言い方をすれば『ゆるめる』、ハードに言ってしまうと『壊す』というアプローチが必要になってくるのです。もちろん、若い頃の健康な肌状態であればバリア機能の修復力が高いのでそこまで問題視する必要がないのですが、年齢を重ねると壊れたバリア機能の修復に非常に時間がかかります。美容効果を求める一方で、バリアが弱まることで、肌の水分が逃げやすくなったり、外部の刺激に弱くなったりすることもあるのです。このような理由から、化粧品でアプローチするべき領域は角質層レベルのケアに留めるべき、と僕は思っています。メラニンに対する美白ケアも然り、角質層より下の領域については、やはり食べるもの、体の中に取り入れるインナーケアで改善を目指すのが最も安心です。なぜなら、食事でエイジングケアに励むことには、肌のバリア機能にとっては副作用的リスクがないからです」

②油分の弊害を招くオイル美容

「年齢とともに皮脂の量が減少すると→皮膚常在菌による酸がつくられにくくなる→肌のPHが上がる→不要な角質層の細胞が剥がれにくくなる→ターンオーバーが遅くなる→キメが乱れ、透明感が失われる、というプロセスを辿ることになります。『そうならないためにも、オイルで補ったほうが良いんですよね?』というのはよくいただくご質問ですが、それはYesでもありNoでもあるのです。化粧水での保湿をしっかりした後に、美容液の要領で3~4滴補給するぶんには、不足した皮脂の助けとなってくれるのでYesです。でもここで間違えて欲しくないのは、皮脂はあくまで皮膚常在菌のエサであり、不足したエサを補う意味合いで足す、ということです。オイル美容の定番ともいえる、洗顔後の肌にオイルをたっぷり馴染ませるブースター的な使い方は、油分の過剰摂取となり、おすすめできないのでNoです」

③帰宅してすぐのメイク落とし

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「家に帰ったら、すぐにメイクを落とすこと自体は良いことです。ただ、落とす際にやってはいけないことがあります。帰宅したばかりの肌は、外に出ている時に浴びた排気ガス中のPM2.5や、春先なら花粉など、外的刺激となるさまざまな物質が付着した状態です。そしてメイクを落とすためのクレンジングというのは、かなり多くのものがドライな肌状態にのせて使う仕様になっています。メイクは油をベースとする油性のものが多いので、クレンジングは油汚れを落とす力が強く設計されています。そのため、同じく油性の成分である細胞間脂質も一部は溶かし、バリア機能を弱めてしまいやすいのです。つまり帰宅してすぐの肌にクレンジングをのせてクルクルと馴染ませることは、肌のバリア機能をゆるめながら外的刺激となる物質をすり込んで侵入を助けていることになります。これは肌にとって非常にストレスなことで、活性酸素の発生、炎症のきっかけとなります。ちょっと手間に感じても、帰ってきたらクレンジングを肌にのせる前に水でよく顔をすすいで、やさしくタオルで水気を押さえてからクレンジングに入ります。『帰ってきていきなりクレンジング』をやめて、『クレンジングの前に水ですすぎ洗い』をはじめると、肌状態の不安定さやくすみやすさが軽減されてくると思います」

④朝の洗顔に洗顔料を使うこと

「やはり洗いすぎというのは肌のバリア機能に最もダメージを与えます。夜はW洗顔をしても構いませんが、朝も洗顔料を使うことが当たり前になっている方には、ちょっとストップをかけたいのです。まず30代後半あたりから皮脂量が不足してくるので、その皮脂をエサにして肌表面を健やかな弱酸性に保つ皮膚常在菌の働きが弱くなります。さらにクレンジングや洗顔料を使って洗顔すると、皮膚常在菌は一旦流れ落ちてしまいます。その後、再び皮膚常在菌のバランスが整うには約12時間かかるといわれています。夜のクレンジングや洗顔をして数時間後の翌朝に、また洗顔料を使ってしまうと、戻りはじめていた皮膚常在菌がまた流れてしまうわけです。これでは肌を弱酸性に保ちにくく、その状況が続くとバリア機能が脆くなって、肌は乾きやすくなります。年齢を重ねたら朝は水やぬるま湯でのすすぎ洗いで十分なのです」

⑤肌を擦る&叩くような美容術

「鍼灸治療は局所的に傷や刺激を与えることで、そこを修復しようと細胞が活性化して再生が促されるというのがひとつの考え方にあります。美容器具や美容術といったものの中には、これと同じような考えのものが多くありますが、その場合、頻度に気をつけなければなりません。あまり頻度を多くやりすぎてしまうと刺激に対する活性酸素の発生が増大してしまい、修復が追いつかなくなってしまうことがあるのです。総じて肌を擦る、叩くという行為に肌はとても弱く、ターンオーバーの周期を乱してしまい、メラニンの過剰生成を招いてしまいます。例えば、ピーリングはターンオーバーの速度を早め、表皮の中のメラニンの排出を促すものですが、ターンオーバーが早まることで角質層は本来の機能を果たさなくなり、肌の水分が失われるだけでなく、外部の刺激にとても弱い状態になってしまいます。ピーリングを試したい場合は、美容クリニックでプロにやってもらうことをおすすめします」

心地よさを味わいながら肌と心の元気を保つ! 「はじめるべき美容5」

①化粧水は手に水分が残るくらいまで

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「年齢を重ねて皮脂や汗の分泌が減り、肌がカサつきはじめると『これまでは化粧水と乳液だけで終わらせていたけど、クリームも使ったほうが良いのかな』といった方向へ意識が向きがちです。しかし、油分を含んだ乳液やクリームというのは、あくまでも与えた水分の蒸散を防ぐフタの役割を果たすもの。水分を抱え込む力の高い保湿成分が配合された美容液を足すのも一案ではあるのですが、その前にいつも使っている化粧水をよりたっぷりつけてみることからはじめてみましょう。化粧水の説明書通りの量をつけても肌にすぐ浸透してしまうのは、角質層の水分が不足し、バリア機能の働きが低下していることが原因です。その場合は、2度、3度とハンドプレスしながら馴染ませて、手に水分が残るようになったら角質層が満たされたサインと思ってください。また、『化粧水が浸透する』=『バリアが低下している』ということは、肌が化粧品や大気中の物質によって刺激を受けやすい状態と考えられます。こういうタイミングでは刺激の強い化粧品は使わない、外出後すぐに肌に付着した汚れを水で洗い流すなど、普段より少し注意するようにしてください。キメの粗さや毛穴の目立ちが気になる場合も、化粧水で水分をたっぷり補ってあげることが基本となります。化粧水で水分を与えると、乾いていた角質細胞はふっくらと盛り上がって透明感が出ます」

②加湿器や湿度計を寝室に置く

「人間が快適に過ごせる目安の湿度は40~50%といわれています。40%を切ると、肌はもちろん、粘膜にも乾燥を感じるようになります。湿度が下がる、すなわち空気中の水分量が減ると、肌から蒸散する水分の量は増え、なおかつ、気温の低下で汗の再吸収もなくなり、その結果バリア機能が低下します。加湿器は各部屋に置けるとベストではあるものの、とくに置くべき場所は寝室です。なぜなら、睡眠中は皮膚の再生が行われる時間だからです。さらに、肌表面の善玉菌も湿度によって活性化されます。この一連の働きで、日中の紫外線や環境からの外的刺激によるダメージを受けた分をここでリカバリできると、『壊れるスピード<修復スピード』となり、トラブルを起こしにくい健康な肌をキープできるのです。加湿器を導入すると、肌が乾きにくくなるだけでなく、ウイルスも死滅しやすくなります。ただし、加湿が過ぎて60%以上になるとアレルギーの原因となるカビやダニの発生リスクが高まるので、加湿器を置く部屋には湿度計を設置するのを忘れないようにしましょう。オフィスなど、自宅以外の場所ではミニ加湿器や沸かしたお湯をコップに入れてデスクに置くなどしても、簡易的な加湿になります。もちろん、自身が水分をしっかり摂る、内側からの加湿も心がけてくださいね」

③頭皮のマッサージ

「現代生活はパソコンやスマートフォンの使用で眼精疲労から頭皮が硬くなっている方がほとんど。頭蓋骨をぐるりと包んでいる頭皮は、顔の皮膚とも繋がっています。頭皮の下の筋肉や筋膜がこりによって硬くなっていると、顔への血流が滞って肌の修復スピードが遅れる原因となります。頭皮を両手で包み込むように触って、前後や左右に動かしてみてください。動きが悪かったり、引き攣れるような痛さがあったりする場合は、頭皮が硬くなっているサインです。毎日のシャンプー時には、指のはらで頭皮をジグザグと動かすように洗いましょう。また、頭皮や髪に良い毛質のブラシをひとつ買ってマッサージするようにブラッシングするのも良いと思います。眼精疲労が強かったり、首や肩のこりが重かったりしてセルフでの頭皮マッサージでは簡単にほぐれそうもない場合は、定期的にヘッドスパに通うのも良いでしょう」

④お風呂上がりに体の末端に冷水を

「女性は、冬はもちろん夏も冷房や冷たい飲み物、食べ物による冷えを感じやすく、血流が滞った状態が続くと自律神経のバランスが乱れます。また、冷え以外にも日常生活の中で強いストレスがかかると交感神経優位な戦闘モードとなり、手先や足先の末端の血管が収縮して血流が悪くなります。こうした冷えやストレスによる自律神経のバランスの乱れは、日頃から環境の変化に対する自律神経のスイッチ力を鍛えておくことで軽減できます。気軽に毎日取り組めるおすすめの方法は、入浴です。日中の緊張をほどくには、ぬるめの湯船にゆったり浸かればよく、温浴効果と浮力で筋肉や血管が弛緩、副交感神経優位なリラックスモードになります。しかし、自律神経のスイッチ力を鍛えるには、そこで終わらずにもう1ステップ踏んでください。仕上げにさっと、手先と足先に冷水シャワーをかけるのです。温冷刺激によって末端まで意識を届かせ、副交感神経優位から交感神経優位に切り替える練習です。ポイントは、湯船には15分以上浸かってしっかり芯から体を温めておくこと、冷水をかける時間は30秒前後にして手足が冷え切ってしまわない快適な刺激に留めることです。自律神経のスイッチ力を鍛えて血管の壁の強さやしなやかさが増せば、むくみや冷え、疲れやすさなどの改善にも繋がると思いますよ」

⑤好きな香りの精油を10本程度つねに手元に

「日々の暮らしの中に精油があるというのは、なかなか心強いものです。皆さんも、つねに10本くらいの精油を手元に置くことをぜひはじめてみてください。ただ、まとめて10本買うのではなく、何本かずつ集めていくのが重要なポイントです。女性の場合、ホルモンバランスによって香りの好みが繊細に変わります。そのため、自分の本能に従った香り選びを大切にして欲しいのです。一度に買うのは2~3本くらいにして、自分の生理周期と相談しながら時期をずらして次の2~3本を買いに行きましょう。肌や気分が上向きな卵胞期と、PMSが出やすい黄体期では、きっとピンとくる香りが違ってくると思います。また、気分が落ち込み気味の時や、高揚する時期など、メンタルの変化を感じた時にも選んでみる良いです。そうした選び方で10本ほど精油が揃っていれば、その時々で「今の気分に合うのは......」と、フィットする香りが見つかりやすくなります。また、選んだ香りの効果を知ることで、自分の体がどんな状態にあるのかを知ることもできます。芳香浴の楽しみ方も、ポットで焚く、電気式ディフューザーを使う、ウッドやストーンに染み込ませる、エタノールで希釈してルームスプレーやピロースプレーを作るなど、かなりのバリエーションがあるので、自分に合ったものを見つけ、小まめに香りによるチューニングを楽しんでみてください」

■著者

茂田正和(しげた・まさかず)
1978年生まれ。化粧品開発者/「OSAJI」ディレクター。音楽業界での技術職を経て、2002年より化粧品開発の歩みをスタート。皮膚科学の学びについては東北大学病院の皮膚科で教授を務めた叔父に師事し、自身で化粧品企画会社を創業。後に父親が代表を務める日東電化工業と統合し、多数のスキンケアブランドを手がける。現在も日本皮膚科学会、 日本皮膚免疫アレルギー学会、日本化粧品技術者会、日本香粧品学会に所属。つねに最新の研究や臨床データをキャッチし、商品開発へのフィードバック、美容関係者に向けてのスキンケアや化粧品に関する講師活動に活かす姿勢が信頼を得ている。近年は肌を健やかに導く栄養学や五感にフォーカスした食からのアプローチに力を入れている。

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Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。