目の高さ、口角の位置など、顔が左右非対称であることに悩んでいる人はいるはず。ではそもそも、なぜ顔は歪むのだろうか。骨が歪んでいるから? 骨の歪みを取れば、左右対称の顔が手に入る? 「実は、顔の歪みは骨が原因ではないんです」と、パーソナルフェイストレーナーの木村祐介さんは話す。そこで今回は、「顔が歪む」原因と改善点などを、木村さんが教えてくれた。
<目次>
『顔が歪む』とは?
「顔が歪んでいて、左右差が気になっているんです」と、僕のところにいらっしゃる方はとても多いです。「左右差って、みんなの悩みのタネなんだなぁ」と、いつも考えさせられます。
しかし、多くの人が「顔が左右対称な人間なんていない。左右対称の顔は人形みたいで不自然」とおっしゃいます。これって矛盾しているなぁ、と思うのは、僕だけでしょうか。
「どのようにあなたの顔が歪んでいるんですか?」とお客様に問いてみると、半数以上の方が自分の顔が“どのように歪んでいるか”のイメージがついていない。それが僕が長年、人の顔に携わり、施術を行っている身としての肌感覚です。
では、そもそも「顔が歪む」というのは、どのような意味なのか。これにについて考えてみることで、「歪みの直し方」が見えてくるはずです。
「頭蓋骨」は歪む?
「頭蓋骨は歪むのか否か」という問いに対し、長年我々の業界ではドクターやカイロプラクター、整体師などの立場から、さまざまな意見が出ています。「頭蓋骨は動く」という意見の人もいれば、「頭蓋骨は動かない」という人もいらっしゃいます。それぞれ信じている学問が違うので、なかなか相入れられないところもあります。
ここでは、木村の個人的意見を述べさせていただくと、
『頭蓋骨は歪まない。歪むのは頭蓋骨に対して顔の表情筋といわれる筋膜だ』
頭蓋骨はたくさんの骨の集合体。それぞれの骨は骨膜(骨の皮膚)に覆われています。骨と骨の連結部分を「縫合(ほうごう)」と呼ぶのですが、実はこの縫合部分は「斜端構造」になっていて、呼吸に合わせて「膨張」と「弛緩」を繰り返しているといわれています。つまり、呼吸を行って生きている間は、微細なテンションを頭から感じる、と。たしかに手で頭に触れると、呼吸に合わせて微細なテンションを頭から感じますので、多少の『膨張』と『弛緩』は行われるのではないでしょうか。しかし、「年々顔が歪んでくるほどか?」と聞かれると、そこまででもないような気もします。
今から10年ほど前、“小顔矯正”というものが大流行しました。そして僕も、小顔矯正の有名店で3年ほど働き、月に200〜300名の方へ施術を行なっていました。
しかし、理論的に腑に落ちないところがいくつもあり、小顔矯正から離れ、今のフェイストレーナーへと移行していきます。そのころの僕の記事で、「骨のつなぎ目が歪んで……」的なことが書いてあるものが残っていると思いますが、今は「頭蓋骨は歪まない、歪むのは頭蓋骨に対して顔の表情筋筋膜だ!」と考えています。さらにいえば、僕は先天的や事故以外で頭蓋骨が歪んでしまっている写真を見たことがありません。みなさんはありますか?
なお、ご存知かとは思いますが、生まれたばかりの赤ちゃんの頭蓋骨は縫合に弾力が残っています。「寝かす方法が悪いと頭が歪む」といわれていますよね。あくまでここで僕が話しているのは、ある程度大人になってからの「歪み」について触れていますので、ご了承ください。
歳を取ると「大顔」になっていくのはなぜ?
「年々顔が大きくなった気がする」という悩みをよく聞きますよね。 「骨がズレて横に広がってくるのが原因」とおっしゃる人がいますが、僕はそうとは思いません。「骨が歪んで広がってきた」のではなく、「表情筋の筋膜(皮膚)が骨から剥がれ浮いてきたことが原因」と考えます。顔の筋膜は表情を作るために可動性が広いわけですが、その分、顔にヨレが出来やすいデメリットな部分もあります。これがいわゆる「たるみ」や「シワ」です。歳を重ね、姿勢を維持する筋肉たちも衰えてくると、顔の筋膜も縦のテンションがなくなってきてしまい、上下の皮膚が寄ります。すると、頬まわりや目の周りの皮膚が“ぼてっ”としたるみやシワとなります。これが大顔になっていくストーリーだと、木村は考えます。「提灯の上下に閉じると横に広がる」と同じイメージでしょうか。
では、“歪みの左右差”はどんなことが原因なのか。
それは、「首に対しての頭の軸位置」でほとんど決まっています。たとえば、だらっと「休め」の姿勢をとっていると、頭を左肩側へ傾ける習慣があるとします。すると、「頭の軸は右の頭」となります。このときの顔の表情を鏡で見てみると、
・右の眉毛が高い
・右の目尻が高い
・鼻筋が右に曲がる
・左の口角位置が下がるので、口角を水平にするために左の口角を力を入れて頑張ってしまう(結果、左のほうれい線が深くなる)
・頭の軸と下アゴの軸がズレて、アゴがガクガクいう
・左右の噛み合わせが合ってない
などの症状が現れます。これはある種当たり前で、顔の筋膜は頭についているので、顔に高低差が現れます。しかも、頭が傾いても眼は世界を平行に見ようとピント合わせるので、眼は慣れてしまいます。眼が慣れてしまうということは、頭の軸がズレていようが、顔の高低差が出ようが、お構いなしに生活できてしまうのです。これら一連の流れが原因で、顔に左右差の歪みがあっても生活できてしまうわけですね。
逆を返せば、頭の軸のズレに顔の筋膜たちが「福笑い的に順応してくれている」と考える方が建設的です。ちなみに下アゴはブランコのような存在なので、常に重力の方向へ開きます。
下アゴは、頭の位置に対して歪みます。アゴ関節部分の軟骨が腫れ上がり、口を大きく開けるたび軟骨を乗り上げて“クリック音”が出るようになってしまうことに注意が必要です。歯科医さん曰く、「腫れ上がった軟骨を削る治療は非常に危険」とのこと。アゴのズレはとても厄介なのでなるべく早く治療することをおすすめしています。
歪んだ表情筋・筋膜はどのように改善する?
では、頭蓋骨に対して“福笑い的”に歪んだ表情筋・筋膜は、どうすれば改善できるのでしょうか? その答えはとっても簡単です。
右の頭をセンターにして軸をとっているのなら、左の頭を軸にすればいいのです。
頭上部の左前(左軸の方は右前)に手を当ててみてください。そして、その手を頭で押し返してみてください。するとどうでしょうか。顔の左右差はなくなり、噛み合わせもバッチリになっていませんか?
「ちょっとわかりにくい」という方は、食いしばった状態で左頭で押し返し、一番噛み合わせが合っているところまで引き上げます。その状態で鏡を再度見てみてください。
左右差のあった眉毛や目尻のバランスが整い、より均等になった。また曲がっていた鼻も真っ直ぐ。開けにくかった顎関節も、なんだかスムーズ。噛み合わせもバッチリ。目もパッチリ。しかもお腹の中まで引き上がって立ちやすい。気になっていたところが、一掃される感じが得られるのではないでしょうか。
これが頭蓋骨に福笑い的な表情筋筋膜が正しくフィットした瞬間です。おめでとうございます!
ただし、初めてやった方は「こんなに斜めに傾けるの?」と思われる方もいらっしゃるはずです。でも、鏡を見ると左右差改善されバランスが良くなっている。それはなぜかというと、「今はまだ視野が歪んでいるから」です。頭を傾け顔が歪んでいる人は、その状態で世の中が平行に見えているからこれまでそれで普通に生きてきたと思います。それは傾いた頭や顔に「眼」が順応してくれていたからです。だから、頭や顔が元に戻されてしまうと世界が斜めに見えてしまうんです。でも大丈夫。眼はちゃんと慣れます。まずは1週間、左右差のない顔の位置に眼が慣れる努力をしてみましょう。その努力はきっとあなたの顔の左右差改善に貢献してくれるはずです。
セルフケア
顔の歪みなくしたり、小顔の効果を得たいなら日常的なトレーニングやマッサージ、姿勢を意識することを心がけよう。
①小顔トレーニング
小顔になるには、胸の筋肉を使えているかが大切。下記トレーニングを行ってみて。
1.胸の前で手のひらを合わせ、目一杯プッシュして胸に力を入れる
下記のリストのように、胸に力を入れているつもりが、別のところに力が入ってしまった人は、バストアップトレーニングをしていても、しっかりバストに効かせられていない可能性も。
・首に力が入った
・肩に力が入った
・腕の力こぶに力が入った
・手首が痛い
・歯を食いしばってしまった
・眉間や顔に力が入った
・どこに力が入っているかよくわからない
胸の上あたりに指を軽くおき、その指を押し返すような気持ちで胸に力を入れる練習し、胸上部の収縮を感じられるようにしよう。10回くらい練習すると、なんとなくわかるようになる。
2.左右の胸の上あたりに力が込められていることを感じられたら、その力を抜かずに手のひらを合わせる
いつもよりもずっと力が入る感じがあれば、OK。
3.次は、胸から顔を目一杯上に離す
後ろではなく、斜め上に離すイメージ。顔やノド周りに縦のテンションを感じられたら◎。
参考記事:「【木村祐介の小顔塾 Vol.4】「胸筋」に力が入らない人は口元がたるみやすい⁉」
②マッサージ法
首・顔の横をリリースして筋肉や神経に刺激を入れてみよう。夜眠る前に、左右交互に2、3回行うだけで、顔がすでに引き上がったような感覚を得られるはず!
1.右手を右肩に置き、左手は開いて右の側頭部におく
2.胸を膨らまして姿勢を上げたら『お』の顔で顔全体を縦に伸ばす
3.左手の重さで頭を左に側屈し、右の顔、首の横、肩を伸ばす。反動をつけず丁寧に行うこと。
横に倒すことを頑張るよりも、伸びている右の顔から肩を天井方向に引き上げることを意識すると上手に伸びる
4.戻るときほど丁寧に
せっかくアイロンかけた皮膚をシワだらけにしないようにしよう。この一連の流れを10〜15秒くらいかけてゆっくり行って
5.逆も行う
参考記事:「【木村祐介の小顔塾 Vol.24】翌朝むくまない! 短時間でできる“美顔ナイトルーティン”」
③つま先重心を意識する
顔のたるみを解消するには、重心も重要。木村さんいわく、“つま先重心”でいると、表情筋は縦方向へ引っ張られ、おでこを介して表情筋を引き上げてくれるそう。
つま先を意識して、イスに座り直してみよう。背骨が立ち、猫背になりにくくなるはず。
①イスに座り、つま先だけを床につける(体より少し遠くにつま先を着くのがコツ)
②つま先で床をこする様に手前に引く(ヒザが90度になる程度)
③かかと浮かせたままイスにお尻を置き直す
参考記事:「【木村祐介の小顔塾 Vol.2】あなたの顔が大きいのは、“正しくない重心”のせいかも?」
整体に行くタイミングは?
忙しくてマッサージなどが習慣化できない人やプロの人にすぐ見てもらいたいという人は、整体に行くのもおすすめ。小顔矯正やコルギなど、お店やコースによって施術内容や料金も異なるから自分に合うものを調べてから行こう。小顔矯正だけではなく、顔の歪みは体の歪みと関係があるという考え方から全身矯正をすすめられることもあるそう。自分に合うかどうかを知るために、体験に行ってみるのも◎。
まとめ
顔の歪みを改善するためには、毎日ケアし続けることが大切。自分にできることから始めていこう!
『ファンクショナル・ビューティ』(機能的な美しさ)を永遠に追求することをテーマに、均等がとれ機能的にも優れた美しい顔をクライアントと一緒に創り上げている。美の最前線にいるトップモデルや、表現の最前線にいる役者とのセッションを通じ、体が本来持っている運動力学や機能解剖学を基とした、『美顔ワークアウト』を独自に考案。パーソナルフェイストレーナーとして都内を中心に活動している。 美の追求者の方より常に高い評価を得ており、芸能界のリピーターも多く、撮影前の顔のコンディショニングには欠かせない存在となっている。