トレーニングをする前に飲むプレワークアウトサプリの市場は大きい。トレーニング効果の向上をうたった粉末やドリンク、シェイクなどは、もはやジム通いをする男性のためだけならず、女性にも人気で、市場は着実に成長を遂げている。ただ、こういった栄養補助食品は本当にトレーニングをレベルアップするのに効果的?   

今回はプレワークアウトサプリの効果やルーティンに取り入れるべきかについて、栄養学やフィットネスの専門家に見解を尋ねてみた。最適なプレワークアウトサプリに関する一般的な見解には驚きがあるかも! イギリス版ウィメンズヘルスより詳しく見ていこう。

プレワークアウトサプリって何?

まず最初にプレワークアウトサプリには粉末や錠剤、あるいは加工されたスナック状(汗をかくセッションの前に摂るプロテインシェイクやバーなども含まれる)のものがあり、エクササイズの約30-45分前に摂取する。「ネガティブな副作用がなく、パフォーマンスを改善するのに十分な刺激を与えてくれることが理想的です」と話すのは3度のオリンピック出場を果たした、栄養士でRoar Fitnessのトレーナー、サラ・リンジー。

「プレワークアウトサプリを摂るメリットは、エネルギーを高め、疲労を遅らせることにより、パフォーマンスを改善させ、より容易に自己ベストを達成できることです」とスポーツ栄養ブランドMyProteinの公認栄養士のジェニファー・ブロー氏は説明する。「ウエイトリフティングなどの無酸素運動と、ランニングやHIIT、サイクリングのような有酸素運動のどちらにも効果的です」

でも、公認栄養士のキャサリン・キンバー氏によると注意点があるそう。

「十分にトレーニングをしているアスリートにはパフォーマンス向上の効果があるかもしれませんが、大抵の人にとっては、バランスのよい食事、特に適切な食事リズムを守ることで十分でしょう。結局のところ、不十分な食事パターンではトレーニングやサプリメントの効果は発揮されません」

プレワークアウトサプリは使うべき?

キンバー氏のような栄養専門家の多くは、プレワークアウトサプリに懐疑的。「大抵の人やハイパフォーマンスのアスリートにでさえ、決してプレワークアウトサプリは推奨しません」と説明するのは、スポーツと摂食障害のスペシャリスト栄養士で、『Orthorexia, Training Food and Fast Fuel』の著者、レネー・マクレガー氏。「その代わり、トレーニング前に摂取するカフェインやタンパク質、炭水化物のタイミングに目を向けています」

プレワークアウトサプリの多くは基本的にタンパク質と炭水化物の組み合わせに、エネルギーを増大させるためのカフェインが少々プラスされてできている。「カフェインは午後4-5時以降に摂取すると、睡眠の妨げになる可能性があります」とブロー氏。

もし正しい食生活を送れていないなら、プレワークアウトサプリにお金を費やしても、すぐに解決しなさそう。「プレワークアウトサプリは既に日々の栄養摂取がきちんとできている人に適しています」と話すのは、ハイパフォーマンス栄養士のレベッカ・デント氏。

プレワークアウトサプリにはどんな役割があるの?

もしトレーニングで自分を追い込みたい、またはさらなる努力が必要なクラスに入ろうとするのであれば、さらに拍車をかけるためにプレワークアウトサプリを試してみてもいい。

いくつかの研究ではプレワークアウトサプリの特定成分、とりわけカフェインは有酸素運動と無酸素運動のどちらにもパワーを増強するのに効果的。またアミノ酸やビタミンなど、筋肉の成長や代謝機能、エネルギーを支持する成分も含まれている。

ただ、注意してほしい。サプリは効果的なトレーニングに必須条件ではなく、体力や筋力を築くのに必要なわけでもない。

「必要なビタミンやミネラル、主要栄養素のほとんどは食事から得ることができます」とブロー氏。「栄養補助食品は代替ではなく、それを補助する役割を果たします」

パフォーマンス栄養士でOptimum Nutritionで科学・教育のヘッドを務めるアラン・ケニー氏も同意する。

「Optimum Nutritionでは常にフード・ファースト・ポリシーを推進しています。どんな身体組成やトレーニングゴールも出発点は全体的な栄養、エクササイズ、ライフスタイル様式を評価することです」

「プレワークアウトサプリよりも、こういった要素の方が大きな役割を果たします」

プレワークアウトサプリは安全?

『The Journal of the International Society of Sports Nutirion』に掲載された調査では、“エクササイズに伴ってプレワークアウトサプリメントを長期間使用することは、安全で筋力や身体組成に効果的な変化をもたらす”ことがわかっている。

ただ、他のさまざまなサプリ同様、副反応が出る場合もある。成分表をしっかりと確認する方がいい。そしてもし何か懸念がある場合、栄養士に相談しよう。

プレワークアウトサプリを取れば、ファステッド・カーディオしてもいい?

空腹状態で有酸素運動を行うファステッド・カーディオをするときにプレワークアウトサプリを取れば、よりエネルギーが湧くと思うかもしれない。ただ、マクレガー氏はこれを推奨しない。

「燃料を得る前にまずトレーニングをすれば、より脂肪を減らせると言う人もいるかもしれませんが、実際には引き締まった筋肉を増やすのに必要なホルモンの流れを阻害してしまうことになります。ファステッドセッションを行い過ぎると、体にストレスがかかり、かえって脂肪をためてしまうことが多くあります」

毎日走ったりジムに行く人にマクレガー氏が推奨するのは、炭水化物とタンパク質、カフェインの組み合わせで、トーストに卵を乗せたものやナッツ入りのおかゆなどが十分だが、それも“個人の選択”だと言う。

もしプレワークアウトサプリを摂取するなら「人工甘味料は避けてください。常に健康を第一に考えましょう」とリンジー氏は付け加える。

プレワークアウトサプリには何が入ってる?

プレワークアウトサプリは特殊な成分が調合されていることがよくあるそう。「ナイアシンやビタミンB12のようなビタミンB群はエネルギー生成中に体内で使われ、プレワークアウトサプリによく含まれています」とブロー氏。「また、プレワークアウトサプリのブレンドの中には、持久運動中にエネルギー向上が見られるβアラニンやL-カルニチンも含むものもあります」代表的な成分をいくつか詳しく見てみよう。

BCAAs

「BCAA(分岐鎖アミノ酸)は疲労を予防し、パフォーマンスを向上させる可能性があります」とブロー氏。「筋肉組織を作るとき、BCAAが筋肉のダメージや分解を妨げる可能性があると調査では示されています」

EAAs

これまでのスポーツ栄養学でBCAAサプリは、筋タンパク質合成(筋肉増強)促進を目的としていた、とブロー氏は言う。でもEAA ( 必須アミノ酸)は、それ以上の働きがあるという。「EAAは筋肉を形成し、修復するのに必要なさらなるアミノ酸を供給します」

「BCAAとEAAの最大の違いは、BCAAは4:1:1の割合で3つの必須アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)が含まれるのに対し、EAAは体内では合成できない必須アミノ酸9つ(ロイシン、リジン、イソロイシン、バリン、トレオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジン)をすべてブレンドしている点です」

BCCAとEAAをサプリで補給することは、ジムでの重量上げや持久性のスポーツをやるにはその価値があるというが、マクレガー氏が自身のアスリートクライアントに、「もし彼らがケガをして、体の強化段階に必要なトレーニングができない場合」にはBCAAの補給を推奨するという。「BCAAはトレーニングを減らす必要があっても、筋肉量を維持することができます」

糖質

これは当然。糖質はベストなパフォーマンスを発揮できるようエネルギーを与えてくれる。「トレーニング中は、燃料を体内に貯蔵された糖質(グリコーゲン)に依存します。規則正しい食事や、バランスよい食生活と共にトレーニング前に糖質を摂取することは、エネルギーレベルを維持するのに最適です」

彼女は、トレーニングの最低30分前に15gの糖質を摂取することを推奨している。

カフェイン

すぐに元気がみなぎるものが必要? ならばこれがその答え。「カフェインは疲労感を押さえ、20-60分の高強度の運動を維持することができる刺激剤。体重1kgにつき1.5mg程度(約85-100mgのカップ1杯分)で効果があることが調査にてわかっています」

効果をアップするにはエクササイズを始める15-60分前、夕方4-5時前までにカフェインを摂るのが好ましい。(一日の終盤にカフェインを摂ると、睡眠に影響があることは覚えてほしい)

クレアチン

クレアチンは体内で生成できる物質で、赤身の肉や魚などの食物にも見られるとケニー氏。

「クレアチンは、高強度で爆発的な運動を行う際のエネルギー源であるATPの生成を促すことにより、エネルギー生成をサポートします。」

クレアチンはしばしば“ステロイド”だとか、“ボディービルダー専用”だとかといった、悪評がささやかれるけれど(どちらも間違い)、プレワークアウトサプリにはよく使われる成分。実際クレアチンを詳しく調査した分析において、国際スポーツ栄養学会は「クレアチン一水和物は、アスリートがトレーニング中に高強度の運動能力向上と、引き締まった体を作り上げる目的で利用できる、現在もっとも効果的な成果向上栄養サプリです」と公式見解を発表している。

これは大きな可能性を秘めている。ただデント氏いわく、効果を得るためには「1回切りではなく」定期的に摂取しなければならないそう。彼女はクレアチンは別で補給する方がよいと主張する。「(クレアチンやBCAAのような)サプリメントが、エクササイズパフォーマンスにポジティブな影響を及ぼすかどうか見極めるために、個別で栄養プランに組み込んでみてください」

錠剤や粉末などのプレワークアウトサプリ同様、クレアチンやBCAAもこれらの形態で個別に購入できる。

避けるべき3つの成分

「これらに注目する研究は限られているので、専門家の指導下のみ服用するようにしましょう」とキンバー氏。

βアラニン

βアラニンは非必須アミノ酸のうちの1つで、カルノシンと呼ばれる化学物質に変換される。どちらが重要? 「カルノシンは細胞のpHを維持するのに重要な役割を果たしています」とキンバー氏。「筋肉に酸が蓄積し過ぎることは、疲労につながると考えられています。しかしながら、プレワークアウトサプリとしてのカルノシンのメリットに対する臨床試験の結果は相反するものです。しびれを感じるトリガーになる場合もあります」

グルタミン

グルタミンは“準必須アミノ酸”で、基本的にはストレスや病気の場合を除き、体内で合成される。「グルタミンは筋肉を作るのに必要です」とキンバー氏。「ゆえに、パフォーマンスを向上させると信じられています(ただ、決定的な証拠はありません)」

LシトルリンとLアルギニン

これらのプレワークアウトサプリは、トレーニング中に体や筋肉において、血流及びエネルギーや酸素の流れを最大化するために用いられている。「人間を対照とする研究はほとんどされていません」とキンバー氏は言う。「現状では、パフォーマンス向上効果を裏付ける証拠は確認できていません」

自分に合ったプレワークアウトサプリの選び方

ここまで読んで、自分やトレーニングにプレワークアウトサプリがどのような効果をもたらすのか確認したいと思うならば、ショッピングカートにたくさん入れ込む前に以下のアドバイスを頭に入れておいてほしい。

1.シンプルに

自分にとってベストなプレワークアウトサプリは、成分が豊富であればあるほどいいとは限らない。むしろ、代わりに単体成分でできた商品を探した方がいいかもしれない。

「プレワークアウトサプリの多くはさまざまな成分が配合されていますが、中にはその効果を証明する証拠がなく、有害でさえあるものもあります」とキンバー氏。

「プレワークアウトサプリは安全規制がなされていないことを覚えておきましょう」その魅力的な成分ブレンドは、あなたが求めうるものが含まれているのと同時に、喜ばしくないものも含まれている可能性がある。人工甘味料などがその例。

2.ラベルを読もう

品質と安全性がテストされているか常に表示を確認するか(NSFインターナショナルと書いてあれば幸先がいいと、キンバー氏は推奨している)、インフォームド・チョイスロゴを有している商品なのか確認しよう。

「または協会などのウェブサイトで認定サプリメントのリストを確認してもいいでしょう」とキンバー氏。

3.まとめ買いの前に小分けされたものをトライ

「味もチェックしましょう」

4.専門家のアドバイスを得よう

「トレーニングやスポーツのパフォーマンス向上として使用される健康補助食品の中には、副作用があるものもあり、市販薬や処方薬と相互作用を起こすものもあります」とキンバー氏。

もし心配なら、ヘルスケアの専門家に相談しよう。

5.合法的なものかどうか確認

すべてのプレワークアウトサプリが、スポーツ団体から承認を受けているわけではない。ゆえにもし特定の競技大会に向けてトレーニングするなら、きちんと調べた方がいいとキンバー氏は言及する。“栄養は容器に詰め込まれているものではない”ということは覚えておこう。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text:Wome’s Health and extra word by Kiristi Buick and Emma Pritchard Translation: Asami Akiyama